愚図

ささめきこと.


サティスファクションの工場、という言葉にクエスチョンをいっぱいにしながらぼやけた信号機を眺める。
向上だと気づいて微笑む。
簡単に私の世界からいなくなってしまうこのひとは、このひとなりに満足させたいと願っているのだ、と知る。
私の心配ばかりしているこのひとがどうか安らかでいてくれたらいいのに。

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あいつらに邪魔されないうちに、とキスをしてくれる見知らぬ川縁で、私がどうしようもなく孤独になってしまうことをもしかしたら分かっているのかもしれない、と思った。
もしかしたら分かっていないのかもしれない、とも。

それでも朝の工場で顔を合わせるなり大丈夫?と聞いてくれることは紛うことなく優しさや思いやりで、助手席から伸びた手が頭を撫でる仕草に少なからず慈しみがあるのだと思った。

愛されないと強情なのは私だけで、君にとってのこの一年は順調に歩幅を合わせているように感じているだろうか。
意地悪く私の首を絞める君の白い指に胸が震える。
セックスばかりしたがる私を一体いつまで捨てないでいてくれるのか、いつかいなくなる君が(いなくならなくてはならないのは愚図で鈍間な私だ、)いずれ誰かと番うのだと思うと、悲しくてとてもやりきれない。



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