愚図

Seq.14.


14年前の君が死んだ夏の日は確かきっととても暑くて、私はひとり孤独な真夜中にいた。
君に会いたいと思ったし、君が私の運命で特別なのだと思ったのだ。

あの時、たとえ死んでもかまわないから君をひとりどこかに旅をさせたりなんかせずに食ってしまえば良かったと、今でも確かに思っているのだと、けれど君に伝うことはない。

せめて君の傍らで生活をと誰に言うわけでもなく生きているけれど、あの時のあの痛みや苦しみや絶望を私はもう忘れてしまっただろうか。
君がここに居てくれたらいいのに。
こうしてここで生きて呼吸をする私の鼻腔に君の溶け出した海の潮が空気がきちんと正しく入り込んで、私を生かしてくれたらいいのに。
愛している。
本当だよ。


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