我が復活したら世界が滅んでた。だから復活させる事にした。  By魔王

作者登龍乃月

 ある日、世界を混沌と恐怖に陥れた魔王の封印が破られた。
 自由になった魔王ケイオスだったが、迎えの部下も敵対する勇者も誰も来ない。
 それを不審に思ったケイオスはもっと注目してもらうために、世界各地を回る事にした。
 しかし――ケイオスを出迎えたのは緑も水も雲もない、枯れ果てた大地と崩壊した文明…

ストーリー概要および物語の設定


 永らく封印されていた魔王ケイオスが封印を破り、ついに復活を果たした。

 しかし封印が解けたにも関わらず、部下の出迎えもなく、打倒魔王! と言って襲いかかってくる勇者もいない。

 かつて古の魔王、原初の魔王、歩く魔物生産機、近付くだけで滅びる、絶望の混沌、などと多種多様な異名を冠し、世界の頂点に君臨し続けていたケイオス。

 周囲に何のアクションも無い事に少しだけ、ほんの少しだけ寂しさを覚えたケイオスはとりあえずお出かけをして、自分が復活した事を世界に知らしめることにした。

 自分の復活を知った世界は必ず絶望と恐怖に染まり、打倒魔王を掲げて様々な国や多くの勇者が動き、また戦いの日々が始まる。

 そう考えてウキウキしていたケイオスだったが、一番近くにあった対魔族の街【ミルガルド】は見るも無残に荒れ果てていて、地表は謎の毒物に汚染されていた。

 街の遺留品を片っ端から漁り集め一度城へと戻って遺留品を調べていると、その中から懐かしき四天王の一人【大地のタイタン】が復活を遂げた。

 タイタン曰く「魔王様の慈悲深き魔力を浴びて復活となりました」と説明し、魔王ケイオスの復活を心から祝福した。

 誰もいない魔王城の中で、ケイオスとタイタンの生活が始まった。

 ミルガルドが滅びた原因はタイタンも分からなかった為、ケイオスは再び外に出る事にした。

 タイタンの進言で魔王城に残っていた四天王の残留思念から従者【シエル】を創り出し、タイタンには城の隅々まで調べ原因を探れと指令をだして飛び立った。

 空の旅を満喫するケイオスだったが、行けども行けども生物も魔物も人間も微生物の反応すら見つけることが出来ない。

 見かける町や村、森や川、海すらも枯れている世界を目の当たりにしたケイオスは。

「あれ? もしかしなくても世界全体が滅んでる?」

 という事実に気付き愕然とする。

 いくら復活した所で、誰も構ってくれないのであれば魔王ではなくただのケイオスという名の生き物でしかない。

 そんなのは嫌だ! と本能的に拒否反応が出たケイオスは一つの妙案を思いつく。

「そうだ。この我が世界を復活させよう。そしてまたみんなに沢山怖がってもらおう」

 という何とも締まらない独りよがりな世界復興計画だった。