京の山には鬼がいた。頭領の酒呑童子とその臣下の茨木童子。二人の鬼は都の若者達を攫っては、悪事の限りを尽くしていたという――。

 時は平安。故郷の村から逃げ出した茨木は、途中で力つき倒れてしまう。気づくと見知らぬ場所にいた茨木は、自分を助けた朱点という鬼の少年からその村が平野山にある鬼の村である…


~物語全体のあらすじ~


京の山には鬼がいた。頭領の酒呑童子とその臣下の茨木童子。二人の鬼は都の若者達を攫っては、悪事の限りを尽くしていたという――。


時代は平安。一人の少年が深い森の中を駆けていた。生まれた時から両親や周りの人間に鬼と呼ばれて疎まれて、十際になった時に故郷の村を逃げ出したその少年は、名を茨木と言った。村からくすねてきた食料と、川の水を手に、行く当てもなく数日間逃げ続けた茨木だったが、ついに体力が底をつき、森の中で意識を失う。


目を覚ますと、茨木は見知らぬ場所にいた。側には頭に布を巻いている少年がおり、彼が森で倒れていた茨木を助けたのだという。彼の頭に巻かれている布が普段巻いているものではないと思った茨木が、布を取るよう少年に告げる。彼が恐る恐るその布を取ると、その下からは二本の角が現れた。彼は人間ではなく、鬼だったのだ。


 朱点と名乗った鬼の少年から、茨木はそこが人間ではなく鬼達の村である事を知る。朱点のすすめでそのまま村で生活する事になった茨木だったが、過去の経緯からなかなか村人たちに心を開こうとせず、家に籠もりきりになっていた。そんな茨木を心配し、朱点は度々彼を外へと連れ出した。何故朱点が自分を構うのか分からなかった茨木だったが、彼の「茨木と一緒に居たいから」という言葉を聞いて、自分の居場所を見つけたと感じ、朱点と共にいたいと願うようになる。


そして月日は経ち、朱点は村の村長となり、茨木も彼の補佐として仕事を手伝っていた。そんなある日、村の子供達を謎の病が襲う。その原因は村の近くに人間が建てた寺院だった。茨木と朱点は寺院の僧侶達と話し合うも、鬼だからと取り合ってくれない。ついにはお前達がこの地を出て行くしかないと告げられ、朱点は争いを避ける為に村人たちを引き連れて平野山を離れて行くのだった。


彼らが住処を移した先は、京の都にほど近い大枝山。人間に興味を抱いている朱点は、都を見に行きたいと言い始め、茨木は仕方なく彼と共に都へ行く事になった。そこで二人は、両親から勝手に結婚を取り決められてしまい、悲しんでいた一人の少女に出会う。もうこんなところには居たくないと言う彼女に、朱点は自分たちの村に来るかと提案する。その提案に乗った少女を連れて、二人は大枝山へと帰ったのだった。


 その出来事をきっかけに、朱点は少女と同じく「都に居たくない」と願う若者達を、次々鬼の村へと迎え入れた。一方京の都では、大枝山に住む鬼が度々人を攫うという噂が流れ始め……。