身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~

作者蝶野ともえ

文月は不審な死を遂げた祖母について調べているうちに桜門という男、不思議な死者に会う。桜門の身代わり依頼の仕事内容を知り、祖母が彼に依頼した事を知る。

桜門と出会い、身代わり代行依頼を共に見守る中で文月は彼が妙に気になり始め……。
そして、桜門自身の願いがなにかを知りたくなる。

そして、桜門の過…






   プロローグ





 12月始めの満月の夜。


 月明かりに照らされた桜並木。

 それがこんなにも幻想的だとは知らなかった。この古城の門という場所がそうさせているのか、それとも満月が神秘的に見せているのか、冬の冷たい空気のせいか、理由はわからない。

 けれど、文月(ふみつき)は見惚れて、動けなくなるほどだった。



 「新しい、依頼主か?」



 その声はとても澄んでいて、耳に入ると体がが温かくなる。



 白い肌に銀髪、白い着物を見事に着こなしているの桜門という男。

 耳や首、腕などにつけている金銀や色とりどり宝石は、着物には不向きなはずだが妙に合っており、とても綺麗で美しく感じられた。


 けれど、文月はそれよりも彼の真っ黒な瞳から目が離せなかった。




 何故か、切なく悲しい気持ちになってしまったのだ。




 それが何故なのか桜門に会ったばかりの文月は、まだ知る由もなかった。