「保谷くんは、歌わないんですか?」同窓会の日、はじめて会った彼女は手のひらから砂が落ちるような声で話した。「田辺さんは、保谷のファンなんだよ」「早瀬くんは、すてきな人ですね」全部捨てたくて手放したのに、また摑んでいる。
星を流しこんだような黒目が、下手な演奏をうれしそうに眺めていた。