――深い深い森の中。
「セレス。そろそろ僕を受け入れてくれませんか」
サクサクと草花を踏み分ける軽い音。
「無理。無理無理無理。そんなことを許したら最後、わたしは一発で犯罪者じゃないか」
慌てて逃げるような足音。
「ふふ、やだなぁ。当人同士の合意の上なら、文句を言う者はいませんよ。……いたら僕が消します」
「ひっ」
くすくすと可笑しそうな笑い声に混じる低い声と、小動物の鳴き声のような悲鳴。
「セレスティーナ。ほら、こっちに来て?」
「いやだってば!こっち来ないで!」
――静かな静かな森の中。
今日もそこで騒いでいるのは、二つの人影。
小柄な少女と、それよりもさらに小さな少年一人。
これは、そんな二人が紡ぐ、呪いみたいな愛のお話。