「もう、終わりにしよう…」
散らかった部屋の、枯れた花の花瓶が置いてある
テーブルに乱雑に鍵を置く夫。
「待って、私の……」
続きの言葉を聞こうともせず、背中を向けたまま
颯爽とトランクを持って、部屋を出て行った。
「待って、私のお腹の中にはあなたの子がいるの
に……」
蚊の鳴くような小さな声で呟いたが、もちろん彼には
届かない。
そう、始めからわかっていた。
彼には付き合っている女性がいる。
私は、妊娠していたがそれを彼に伝えられなかった。
理由、もう、愛されていないのに、子供ができたって
堕ろせって言われるに決まっている。
望まれない妊娠。
それでも、私が父親の役割りも果たして、2倍愛して
育ててみせるからいいんだ。
名前は、決めてる。
今日のこの決意から『優姫』ユウキ。
この話の主人公になる子の名前。
私は、女手ひとつで優姫を育てた。
……そして、この子の未来が明るく輝やかしいもの
になるように願いを込めたーー。