- 最終更新日
- 2010/06/13
- 作品公開日
- 2010/04/19
- ページ数
- 完結 63ページ
- 文字数
- 28,830文字
- セルフレイティング
- 性描写
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作品コメント
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- まさーき
もうすぐ消える。それをプレゼントとして受け入れた姉と弟は、今はもう汚れた風の中。 人が消えていく怪現象。 自分も消えてしまうと知った弟が最期に望んだことは、禁じられた行為で、でも抑えがたい好意で。 (なんで消えんねん!)とツッコミたいのはやまやまですが、そんなことよりも、登場人物の魅力にとりつかれました。 深みのある本格的な小説です。 ガツンと手応えのある作品を読みたい人にオススメです。
- 繭結理央
風のジレンマ 工業先進都市から拡がっていく不可思議な神隠し。そして、一対の姉弟の身にも風は静かに訪れる。 この作品は“心という風”の物語。 人の心はいつだって掴み所がなく、容易く掌をすり抜けていく。自分の心も同じで、読みにくい。故に悩む、傷つく、苦しむ。心とは、まさに風のようなものといえる。 姉・陽子にとって行動の読めない弟・愁はまるで風。ワケありの姉弟が故に芽生えていた陽子の“罪の意識”もまた、当人には気づかぬ胸の内に漂った風。 では、どう心を掴もう? 現実世界では極めて難儀なこの問題、解く契機を与えたものもまた、風だった。現実世界では極めて難儀とされる、環境破壊のもたらした風である。 風が風を……環境が心を、紐解いていく。 作者様のこのアイディアに驚いた。そしてすぐ、あるジレンマに陥った。 当作品のようにならないと、我々は心を掴みあえないのだろうか? ならば壊そうか? だが壊せば喪う。 このジレンマもまたSFの醍醐味に思う。すっきりとしないかも知れないが、皆様も思い切って“風のようなジレンマ”を噛みしめてみては如何か。
- 雪風
多面的に奥深い、傑作 突然発生した、不可解な事件。 これは神が与えた罰であるのか、それとも人間の環境破壊によって作り出された、起こるべくして『起こりうる』出来事だったのか。 いずれにしても、これに翻弄された人間は不可思議な現象の中、究極の状況下で何を考え、どう行動し、思いを馳せるか。 『消えるものであるなら、愛すべきか、否か』 自らの意思とは無関係に芽生える感情は、どう制しようとも止められぬもの。 表現されている幾多の人間くさい思考が、なんとも読み手の心を絞り、釘付けにする。 作品を読み終えた余韻は、とても言葉では表しきれない。 幾つもの感情が混じり合い、風に溶ける。 張り巡らされた伏線が、実に丁寧にタイミングよく拾われていて。 的確な描写により非現実的な物語が、なんとも現実味を帯びたものに思えてきた。 環境問題を1つのテーマとしつつ、その中で人間の『生きる』もどかしさに主軸を置いた作品。 作者様ならではの、ある種ユーモアが効いている会心の一作。 嫉妬すら覚えるこの筆力に、魂が震えた。 読んで損はないと、胸を張ってお勧めしたい。