緑茶

人の欲と善と悪
恥ずかしながら13世紀のイタリアを知りませんが、そんな知識は必要ありませんでした。史実に基づきながら完全オリジナルな物語です。

宗教戦争の真っ只中に生まれたシチリア王。権力という魔物に憑かれた教会に翻弄されながらも己の信ずる道を行く王に涙を禁じ得ません。

彼を支えた女性も素晴らしい。彼の根を作った母。彼を理解した妻。彼に平和の道を説いた後妻。

彼女達が居たからこそ、彼は異なる宗教同士が手を繋ぐという偉業に辿り着けたのだと思います。

正直に申せば、もう少し膨らませても良かったのかなと思いました。展開が早く、主人公はあっという間に大人になってしまいます。

個性的なキャラクターを揃えながらエピソードが少なく次々話が進んでしまうのが勿体無い!

前妻との結婚生活、教皇になった先生はシチリア王に何を思っていたか、息子達は父をどう感じていたか等サイドストーリーが気になる所です。

“宗教戦争”という難しい題材ですが、王たる者皆シチリア王の様な思想を持てば彼が目指した世界が訪れるのに、と考えさせられる素晴らしい作品でした。色んな方に読んで欲しいです。