森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 3

その夜もにぎやかにいろんな人が集まっていた。
秋山と西村と社長との3人はひときわ目立つ存在で
それも弓弦と一緒にいるため絵になる雰囲気だったのだ。

「そうすぐ閉店の時間25時になりますが、最後の一つはどうします?」
「いや、最後のは遠慮しておくよ。楽しい会話でかなり呑んでしまった。」
「次々と行きましたものね。」
「弓弦。」
「あぁ、誠さん、どうしました?」
「いや、自分の所は帰って行かれたので手が空いたんで。」
「あの、誠さんです。ここでの一番人気の。」
「相原誠と言います。よろしくお願いします。」
「一番人気かぁ、いい男だな。」
「誠さんはおいくつですか?」
「俺ですか?弓弦と10違います。」
「すると?」
「ん?あたしは1986年3月生まれなのよね。」
「今25だよな、弓弦。」
「えぇ、誠さんの言うとおり。」
「誠さんって35になるんだ。いい感じだ。」
「弓弦さんと一緒に立つとお似合いですよ。」
「いえいえ弓弦は西村さんでしょう。」
「そう?(笑)弓弦、俺たちお似合いだって。」
「先輩ったら真面目に受け止めたらだめですよ?まったく、言葉巧みなんですから。」
「俺はさ、それでもって口説くんだけどなかなか弓弦は落ちないんだよなぁ。」
「西村先輩の彼女になっちゃったらあたしファンの子に殺される、勘弁です(笑)」
「西村君も振られるのか。同じ男として安心を覚えたよ。」
「またまた、山本社長。」
「ところで誠さん弓弦さん。」
「なんでしょう。」
「ここってバーテンダーって何人いるんですか?」
「ここのお店は人数多いですね、誠先輩。」
「あぁ、メインが11名でサブ・見習いが8名ですね。」
「メイン11名ってすごくない?」
「その分お店も広くあるし、メインに合わせてカウンターも
 使い勝手のいいようにつくられてるし
 その人その人で使うベースもブースごとにおいてあるんですよ。
 だからお店の中でも自分のブースが設けてあるんです。」
「というと椅子の数でその人の人気度合いがわかるのか。」
「そうですね、なのでついているお客やその客質で
 バーテンダーの位置が変わるんです。」
「誠さんがやっぱり一番ですよ。」
「弓弦君。君は?」
「10本指をキープするのが精一杯ですよ。」
「弓弦は、女なのに急成長で注目株ですよ。」
「誠さんそう褒めないでくださいよ。」
「そういえばこれから閉店した後どうするの?」
「西村先輩は次に行かれるんでしょ?」
「良ければ秋山さん一緒にどうですか?」
「いいですねぇ。社長は?」
「あぁ、私は家に戻るよ。明日は飛ばないといけないからな。」
「福岡だったですね。気を付けて、お疲れ様です。」
 
お店が閉店すると、外で西村と秋山が弓弦が出てくるのを待った。
3人で次にと。

「お疲れ様でした、お先に失礼します。」

そういってドアを出て、振り返ると二人が待っていた。
秋山は全然気づかなかったが、西村はすぐに声をかけた。

「弓弦。本当に帰るのか?」
「この格好で呑みには行けないでしょ?」

弓弦は単に革ジャンと皮パンと頭から足の先まで真っ黒。
まるで走りに行くぞと言わんばかりの格好で。
それもフルフェイスのヘルメット。顔も見えないダブルブラックの。
呼び止める西村に、弓弦は振り向いて近寄ってくるが秋山は、ん?とした顔をする。
ヘルメットをとり、顔を見せると秋山は弓弦さん?とびっくりした。

「弓弦さん、その恰好じゃめっきり男にしか見えないじゃん。」
「秋山さん、弓弦の男っぷりはそこら辺の男よりも数段上でしょ?」
「あぁ、そんな恰好で、ひかりちゃんに弁当持ってきたら
 そりゃ彼にしか見えないでしょう。」
「だって女って面倒。きゃぁきゃぁうるさいし。」
「もしかして弓弦さん、キャピキャピした女は苦手なんだ。」
「ですね。面倒だし、自分がそんな人たちに絡まれたらって思うと
 すごく気持ちが悪い。」
「あはは。弓弦さんは本当に男っぽい性格なんだな。」
「面倒が嫌いなだけですよ。」
「どうする?弓弦さんも一緒に?」
「いえ、あたしは帰ります。西村先輩も秋山さんもゆっくりと。」
「んじゃ、行くか。」
「また今度お誘いください。失礼します。」
そういうと自分のバイクで帰って行った。
そのバイクで帰り弓弦の後姿を二人見送る。
秋山の目にはやっぱり男の後ろ姿にしか見えてはいないようだったが
西村はその後ろ姿を愛おしく見つめていた。
そして西村と秋山は次のお店に向かうため、タクシーを止めた。

「弓弦さ、あいつ女も嫌いだけど男も嫌いなのか?と
 そう思うときあるんだよね。」
「でも、彼女は男らしいですよね(笑)」
「高校卒業して大学に入った時すぐにさ、
 東京OG会っていうのがあって、一人で顔を出したんだ彼女。」
「一人で?同じ学年の友人がいただろうに。」
「でさ、面白いのがさ彼女その時も黒の革の上下にTシャツでさ
 一人壁に立ってたんだ。」
「へぇ、知り合いとかいないのにその会場ではどうしようもなかったんだろうに。」
「俺はさ、こういう仕事しているから顔われてるじゃ。
 周りにはたくさん人がいてさ、一人にさせてくれないのに
 彼女はさ、後から聞いた話なんだけどお世話になった先生を
 探していたらしくてキョロキョロして様子伺いしてたんだよ。」
「へぇ。」
「するとさ、会場のOGの人に話しかけて何か聞いてたんだけど
 話が終わると、そそくさと帰ろうとするから俺が声をかけたんだ。」
「もしかして弓弦さん、西村さんのこと知らなかったとか?」
「あぁ、知らなかったみたいだな。
 すっごくそういうのが新鮮でさ、俺、知らないの?って」
「それありますよねぇ。そして有名人扱いしないで
 率直に話ができる人。それある意味、貴重な人ですよね。」
「だろ?思いっきりさ、長崎弁で話しかけてさ呼び止めてさ
 その時俺、誰かさがしてんの?ってしゃべりかけてさ」
「で?」
「そしたらさ、山口先生探してたけど今日は来られてないって言われたから
 帰るんですって。肩すかし食らっちゃってさ。」
「まじで、顔を見てもなんとも?」
「それよりさ、俺の方がびっくりしてさ。」
「そりゃそうでしょうよ、翔太だもん(笑)」
「振り返った顔がさ、男顔の翔太だろ?で、声が低いし
 仏頂面でさ女には見えなかったんだよね。」
「俺だって言われるまで女って思わなかったもんなぁ。」
「でさ、名前は?とかいつ卒業したの?とかいろいろ話したんだけど
 その時に名前を聞いて珍しい名前だなって言って
 皮ジャンの前を開けるからふと目をやるとボンッて膨らんでるだろ?」
「あはは、西村さんも男だ(笑)」
「ねぇ、もしかしてって聞いたら笑われて。
 でも笑った顔は翔太じゃなくって美人の弓弦だった。
 それからさ、部活はぁ?とか話してたら
 俺も吹奏楽部だったんだけどさそれが同じで意気投合。
 何やってた?とかの話で盛り上がっちゃって
 それからの付き合いだよ。もう6年たつのかなぁ。」
「西村さんは何をしてたんですか?」
「俺はトランペット。」
「へぇ、弓弦さんは?パーカッション。」
「それって?」
「打楽器だよ、お前ん所の槙村がやってるドラムとかの打楽器の総称。」
「ということは、彼女ある程度の楽器はできるということですかね?」
「そうともいうなぁ、たまにさ俺の曲に参加してもらってる。」
「そうなんですか?手伝ってくれるのはうれしいですねぇ。」
「ベースとかギターはそこら辺のプロに負けないぜ?」
「ひかりのいとこは結構使えるんだ。」
「きちんと丁寧に手伝ってほしいと言えば、彼女は断らずに手伝うよきっと。
 この前のアルバムにも弓弦手伝ってくれたよ?」
「そうなんだ。でもアルバムのthanks nameの所、名前入ってなかったような気が?」
「入れてないかな。多分、本人の希望でさ。」
「へぇ、そういうところがあるんだ。」
「弓弦はさ、名前が名前だから目立つのが嫌なんだって。
 それにあっさりとした人間関係が好きなんだってさ。」
「人と絡むのは好きじゃないのかなぁ。」
「何かあったらしいが、彼氏もいたんだぞあいつ。」
「なのに今は弓弦さん自身が男らしい態度だ。」
「西村さんは弓弦さんのことは?」
「大好きだよ。どんな女優たちがそばにいても
 弓弦が見えたらそっちに行くだろうな。俺の女だって言って。」
「そこまで好きなんだ。西村さんに好かれるって自慢じゃん。」
「でもさ、弓弦は何にも感情はないらしいよ。いつも冗談でしょ?って言ってさ。
 だから、呼び出しても疑わずに来るんじゃ?」
「それは西村さんの信用とか信頼でしょ。」
「いや、いつもさ隙あらばとさ口説くんだけど
 なかなか靡かなくて、しつこいと嫌われそうで。」
「難しいですねぇ。でも、嫌われているのならば
 来ないでしょうしあの性格だもん喋ってもくれないでしょ?」
「そうだよなぁ。まだまだ望みはあるのかなぁ。」
「でも思い切って口説かないと西村さんの手からは逃げていきますよ?」
「あはは、そうだな。秋山さんはいいところついてくる(笑)」
「夜が明けますね。」
「あぁ、君とはウマが合いそうだ。こんな時間まで話ができて。」
「こんなにとは自分も思いませんでした。」
「これからも仲良くしてもらおうかな。」
「俺からもです。よろしくお願いしたいですよ。」
「TV局でもよくあってるのに、今までも話ししなかったもんなぁ。」
「これからは違いますよ(笑)」
「そうだなぁ。また近々会うかもな。」
「んじゃ、またその時でも。」
「あぁ。いい夢を。」
「今日はありがとうございました。お休みなさい。」
「あぁ、また。お休み。」

朝の陽射しが差し込んできたところで、二人はお開きとして家に帰って行った。

翌日、弓弦が起きると珍しく早くからメールが入っていることに気づく。
というか弓弦が起きたのはすでに10時。早くひかりの弁当を作らなければと
シャワーを浴び、とりかかる。メールは気になったけれど弁当のほうが先だと。
起きてすぐの一服もせず、早くと思って。
今日は弁当を届けた後、仕事が休みのために少し遠くまでと考えていたのだ。
久しぶりに湘南まで。
そう思い時間に余裕がほしかったため、少し急いでいた。
出来上がると、おばさんに声をかける。

「伯母ぁ!伯母ぁ!」
「なんだい?弓弦。どうかしたのかい?」
「今日さ、珍しく晴れてるでしょ?
 たまには車も運転しないとさ。今日は夜遅くなると思うから。」
「まったく、部屋は片づけたのかい?」
「あぁ、大丈夫。それとさ伯母ぁ。」
「なんだい?」
「母屋の少し離れたところにある離れさ。あそこは使ってないよね?」
「一軒家に改築したけど、誰も今はいないねぇ。
 住み込みもいないし、使ってはいないけど。」
「伯母ぁ。あそこあたしが使ってもいい?」
「なんでまた。まぁ使ってないからいいけど。」
「使わないと痛むでしょ(笑)」
「んじゃ、家賃は?」
「出世払いで(照)
 あのさ、今の部屋じゃ西村さんの手伝いする練習ができないでしょ?」
「あぁ、そうだねぇ。あの部屋で鳴らされると困るしね。
 いいよ、好きなように使って。」
「ありがとう、伯母ぁ。んじゃ、ひかりの弁当届けてくる。」
「ありがとうね、ひかりのこと頼むよ。それが家賃だ。」
「ん。伯母ぁ任せて。」
「あぁ、早くいっといで。今日離れの家は片づけておくよ。」
「やったー。」

そういって弓弦は珍しく母の乗っていたBMWに乗っていった。
格好はいつもと変わらないのだけれど。
いつものTシャツにジーンズ。髪が邪魔にならないように
三つ編みしてキャップの中に。そしてサングラス。
気持ちよく晴れ渡っているのを確認したらオープンにして出て行った。

そしてひかりの会社に着くとひかりにメールを入れた。

 `今ついた。少し早かった?入り口前にいるよ´

メールに気づいたひかり。まだあと15分あるんだけどなぁと
時計を見てるとゆかりが気が付いた。

「何?お昼届いたの?」
「えぇ、前にいるって。弓弦からのメール。」
「行ってきなよ。今会議中でマネージャーさんたちも
 タレントさんたちも、みんな会議室だし今のうちよ?」
「そうだね、ちょっと席外すね。」

そういって`すみません、届け物取りに行ってきます´と言って席を外した。

「弓弦、ごめんね。て言うか弓弦。珍しいねおばさんの車で。」
「そう?たまには動かさないとね。」
「どっかいくの?」
「ちょっとな。今日は迎えに来てあげれないけどいい?」
「大丈夫、大丈夫だけど弓弦は?」
「今日は遅くなる。ちょっとね、湘南のおじさんの店まで。」
「へぇ、弓弦。用事?」
「ちょっとね。そうそう、ちかいうちに離れに引っ越すから。」
「そうなの?」
「あぁ、て言うかひかり?」
「なぁに?」
「う・し・ろっ!」
「えぇ?なんで?部長びっくりするじゃないですか(笑)」
「こんにちわぁ、ひかりの彼氏さん。」
「あはははははは。」
「弓弦が今日もそんな恰好で来るから彼って言われるんじゃん。」
「まぁそう思ってくれてていいかもね、ひかりに虫がつかないように」
「んじゃ、また。」
「翔太は今会議室だよな???」
「あれは翔太さんではなくってあたしのいとこの弓弦です(笑)」
「ほんとわかりづらいなぁ。君たちは(笑)」

その場を離れた弓弦と入れ違いに槙村たちが帰ってきた。
車を降りると、リーダーが言った。

「ん?今会議中じゃないのか?」
「なんでだ?」
「おい、あきら。今会議中だってさっき事務所と連絡してたよな?」
「あぁ、Martinの5人もいるんだよな?」
「俺さぁ、翔太に借りてるものがあって返さないといけないんだけど
 今、翔太が車運転していったように見えたからさ。」
「翔太が?翔太免許持ってたっけ???」
「そうだよなぁ。だと人違いか。でも翔太に似てたなぁ。」
「それって???」
「あぁ、ひかりちゃん!もしかして弁当か?」
「あ、お疲れさまです。皆さんお帰りなさい。」
「今届けてもらったの。弓弦に。」
「今日はバイクじゃなかったんだ、弓弦さん。」
「弓弦?誰それ。」
「ひかりさんのいとこだよな。」
「ああはははははははは。」
「なんだ二人して。」
「翔太君も弓弦の正体知っていますよ。聞いてくださいな。」
「なんだ????」
「びっくりするぜ?俺も知ってる。」
「お前ら・・・・」


事務所に入っていった。
受付を過ぎ、部屋に入りいつものように帰ってきてからの報告をし
会議室へ行った。帰ってきたら会議室に来るように連絡が入っていたのだ。
まぁ月に一度の会議だし、次の方向性やいろんな詰めをする会議なのだが
少し遅れた感じでの入室となった。

「申し送りも終わったところで、お疲れ様。」
「ただいま帰りました。」
「お疲れだったな、申し送りは終わったがお前たちに連絡は
 あとで言う。」
「何事もなかったってことですね?」
「いつものようにだ。」
「新しくドラマが入った分とかがあるので
 きちんと説明しますね、慎太郎さんとえっと一哉さんだわ」
「俺もですか?ドラマかぁ、相手役によるなぁ。」
「いいな、お前ら。」

そう話をしながらも槙村だけは違うことを考えていた。

「なぁ、圭一郎。今日暇?」
「なんでだ?」
「呑みに行かねぇか?」
「どこ?」

そういうと部屋を出て受付の部署へ行った。

「ひかりちゃん居る?」
「ひかりは今、表にいる時間ですよ?」
「渉、あの子が好みなのか?(笑)」
「違うんだ、ひかりちゃんにちょっと聞きたいことがあってさ。」
「15時に交代だから、その時にでも。」
「15時かぁ、間に合わねぇな。ちょっと受付に行ってくる。」 
「そのほうが早いか。」
「圭一郎、ちょい。」

会社の受付の場所は外の人に向けての部署なので、社内の人間との
おしゃべりは禁止されているのだけれど、槙村はそばまで行き
仕事の話をするかのようにひかりに話しかけた。

「山本さん、ちょっと聞きたいことがあるのだけれど」
「今でしかだめですか?」
「えぇ、ちょっと。」
「ゆかりさん、ちょっと席を外します。すぐ戻りますから。」

そういって、ひかりは席を外し入り口そばの客用待合の所に連れて行かれた。
本をだし、仕事の話をしているふりをしてひかりに聞く。

「今日は弓弦さんは仕事ですか?」
「今日は休みだそうですよ?帰りは迎えに来れないから
 一人で帰ってねって。で、車で出かけた見たいです。」
「残念、圭一郎。今日はお流れだ。」
「なんだよぉ、お前女目当てか。」
「違う違う、この間飛行機に遅れずに乗れたのはな
 ひかりさんのいとこの弓弦さんにバイクで送ってもらったから
 大丈夫だったんだ。お礼言わなきゃさ。」
「そうだったんだ。そりゃちゃんと面と向かってお礼言わなきゃな。」
「明日はお店開いてるんではないですか?」
「今日もお店はあいてるみたいですけど、弓弦本人は休んだみたいですね。」
「今日はなんで遅くなるって?」
「湘南まで行くって。用事があるからって。」
「そっかぁ、とりあえずメールでも入れてみるか。」
「そうしたほうがいいかもですよ?んじゃ、あたしは戻ります。」
「ありがとうな。」

そういってひかりは受け付けに戻っていった。
渉と圭一郎は奥に戻っていった。渉は弓弦にメールを入れるために。

 `弓弦さん、こんにちわ。今大丈夫ですか?
  ひかりさんに聞いてメールを入れています。
  今日はお休みみたいですね、夜にお会いしたかったのですが。
  またメールを入れます。´

そうメールを入れると5分もしないうちにメールが返ってきた。

 `お帰りなさい槙村さん。この間は間に合ってよかったですね。
  今日はお店は休みしていますけど、明日は大丈夫です。
  入口の黒服には伝えておきますので、〈原田〉と名前を出して呼んで下さい。
  明日お待ちしております。
  また詳しくお越しの時間をメールいただけると確実に表にいるようにしますので。´

今なら大丈夫かもともう一度メールを入れる槙村。

 `ねぇ弓弦さん、お昼車で来てなかった?
  ひかりさんがさ、弓弦は湘南のほうまで出かけたって言うから
  もしかして、誰かと一緒かなって。だめかなって思ったけど、
  違ってたらって。よかったら、今日会えませんか?´

ストレートに伝えた。メールを見たら引かれるかもしれないと思いつつも
素直に会いたいことを伝えたのだ。
少ししてからメールが来た。

 `今湘南まであと10分のところまで来ています。
  誰にも理由は言ってないのですが、母の昔付き合ってた人の所へ
  お邪魔する予定なんです。多分、遅くなると思いますけど。´

用事で出かけたのか。無理にはなぁと思いつつも
押してみてから考えようと思いまた、メールを返す。

 `かなり遅くなるということはないでしょう?
  僕の家は横浜の山下公園から車で5分なんです。
  よかったら会えませんか?
  近くまで来たらメールをくれるとうれしいですけど。´

すると、またしばらくしてからメールが返ってきた。

 `多分21時ぐらいには横浜を通る予定ですけど。´

結構素直に正直に話す人だなぁと思い、槙村も。

 `弓弦さんにお礼を言いたいのと、お礼にお土産を買っちゃったことと、
  正直、弓弦さんと話がしたいんだ。
  弓弦さんと仲良くなりたいから少し話がしたいだけなんだけど´

びっくりする弓弦もこんなにストtレートに言う人なんて珍しいなと
笑いながら、母の元彼にこういう人がねメールしてきているんだけどと
話をしていた。
その母の元彼はバーテンダーで、もともと弓弦の師匠でもある。
少し悩むことがあるとここへきて話をしながら新しいカクテルなどを
研究し勉強しそしてここで作り帰るのだ。
しかし今日は槙村がメールをしつこく素直にしてくるのが
弓弦には面白く感じていた。

「おじさん、どうしよう。この人ちょっとしつこくない?(笑)」
「弓弦に興味があるんだろ?
 悪い人でなければ友人としていいんじゃないか?」
「ひかりの会社のタレントなんだけどさ。」
「なおさらひかりちゃんの顔をつぶすようなまねはしないようにな。」
「それもあるんだよなぁ。」
「今日はもういいじゃないか。また新しいものを入れておくから
 次にでも考えたら。余裕も必要なんだよ。」
「そうですね、おじさん。また次にでも。」
「じゃ、今日はここまで。お疲れ様。」
「おじさんありがとう。今何時?」
「今か?17時まわったところだよ。」
「これからだと横浜まで19時かな?」
「そうだな。そういう風に連絡を入れたらどうかね。」
「でもなぁ。」

そういうって困った顔をすると笑って早くメール返さんかと怒られた。

 `これから帰るのですが、大丈夫ですか?多分横浜には
  19時ごろにはつけるとおもいますが。´

するとすぐに返信が。

 `あの、メールだと気付かないと困るので直接電話をいただけますか?
  僕の番号は090-****-****です。
  もう家に帰ってきているので、夕飯食べずに待ってますから。´

夕飯一緒にってあんに伝えているのか?
弓弦はちょっと引けたが、横浜までの道のりゆっくりと安全運転で帰って行った。

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