森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 4

横浜に入った。もうすぐ近くまで来ていると思い槙村に電話を入れた。
ここからどれぐらいで着くのかがいまいちわからずに。
夜だから自動車道に乗らずともゆっくり向かっていけると思い
普通に走り山下公園を目指していた。
山下公園からすぐと言ってたからそこまで行けば会えると思って。

「こんばんわ、遅くにすみません原田です。」
「こんばんわ。今どこ?どこまで来てるのさ。」
「山下公園を目指していたんだけど手前になるのかな?
 大きな駐車場があるコンビニまで来てるんだけど。」
「それどこ?そのコンビニってどこのコンビニ?」
「セブンのXX店って、買い物したレシートに書いてあるよ。」
「わかった、セブンね。近くだからそこにいて。」
「わかりました。でもあたし車ですよ?」
「そこまで歩いても30分かからないから。」
「わかりました。」

そういって電話を切ると、そのコンビニの駐車場に停め
中で買ってきた缶コーヒー2本とガムとそして車の中で
好きなマドンナを聞きながら待っている弓弦。
すると20分ぐらいだろうか槙村が到着した。
どうも走ってきたらしい、息が上がっている。

「こんばんわ、弓弦さん。」
「こんばんわ、一人なんですか?」
「あぁ、一人だけど。だめ?」
「いえ。あまり誰かと二人っきりってないから。」
「この間は本当に助かった。これはみんなからのお土産。」
「ありがとうございます。でも困ったときはお互い様なんですよ?」
「でもさ、これだけじゃさ。」
「いえ、これだけでも十分。」
「俺個人からは夕飯をご馳走したくて、家で準備してたんだ。」
「家ですか?ご自宅?」
「俺はちゃんとしたおもてなしは自分の腕でと思ってる方だから
 弓弦さんにもちゃんとって思って。」
「なんだか、そこまでしてもらったら悪い気が。」
「でも準備済んでるし、弓弦さんが食べてくれないと俺一人じゃなぁ(笑)」
「あたし、大食いですよ?」
「ひかりちゃんから聞きました(笑)」
「車を停めるところはあります?」
「大丈夫だよ、案内するから隣に乗っていい?」
 
そういって弓弦の車に乗り込むと槙村は次の信号を右と
次々っと指示をだし家までの道のりを楽しそうに走った。

「なかなか、笑わなかったのに今だと笑ってくれるんですね。」
「あたしそんなに無愛想?」
「そうだなぁ、笑った顔は今日初めて見た気がする。
 お昼も事務所の前まで来てただろ?そんときのさぁ運転している顔
 怖い顔だった。」
「そっかなぁ?」
「あぁ、そうだったよ。(笑)」
「そう。」
「さ、着いた。そこのガレージに入れて。」

そういわれて槙村の家のガレージに入れた。

「弓弦さん、いらっしゃいませ。」

そういわれて、部屋に誘われたがブーツのため玄関で時間がかかる。
肩を貸してと言われ槙村が横に立つ。
弓弦は素直に肩を借りてブーツを脱ごうとするがバランスを崩し
槙村に抱きついてしまった。

「あ。ごめん。」
「いえいえ、僕は嬉しい限りですけど。」
「本当にすみません。」
「さぁさぁ、こっちに。」
「お邪魔します。というか、一人暮らしなんですか?」
「そうなんですよ、その一人暮らしの男の部屋へようこそ。」
「危ない言い方だなぁ。」
「いえいえ。ちゃんとしたおもてなしをするためだけに
 弓弦さんを呼んだんだ。」(笑)。」
「槙村さんも背が高いんですね。」
「181ある。弓弦さんは?」
「今176ですかね。この間の健康診断でそういわれて。
 我ながら、まだ成長する?って思いましたよ(笑)。」
「女性にしたらすごく背が高いんだよね。ご両親も背が高かったの?」
「そうみたいですね、母も170あったし
 早くに亡くなった父も180かあったって聞きました。」
「ご両親は?」
「父は早くに亡くなってましたが、母は5年前に亡くなりました。」
「今日はさ、弓弦さんを少しでもほかの人より知りたくて
 呼んだんだ。誰よりも弓弦さんを知りたくて。」
「あたしを?」
「友人としてもこれから先に進展することとなっても
 弓弦さんのことを知らないままだと嫌だからさ。」
「槙村さん、気持ちはうれしいけど
 あたしは誰ともおつきあいする気持ちはないです。」
「それはこれから先、未来はわからないじゃない?」
「槙村さんとあたしの未来は単純に友人としての関係だけだと。」
「そう言い切れる?」
「あたし、男性恐怖症なんですよ。それを克服するために
 男ばっかりのバーに勤めて、男っぽく見えるように努力して
 そしたら女でいることにすごく違和感が出てきて。」
「でも弓弦さんは女性だ。きれいでさ。やさしくてさ。」
「そうかなぁ。」
「そして翔太に似てるけど、すごく人間らしい女性だ。
とりあえず食べてよ、僕が作ったんだ。」
「そういってもらえると少し安心するかも。でも友人からでお願いしますよ?」
「こちらこそ。」
「でも、なんであたし?」
「弓弦さんに興味がわいた。ただそれだけ。
 男性恐怖症なら克服すればいいさ。弓弦さんの克服方法は少し違っていると思うし。」
「それでも、あたしは誰とも。」
「あのさ、人間ってさ一人じゃ生きていけないんだって。
 弓弦さんだっていつか誰かとだよ。」
「でもそれまではあたしは自分一人を楽しみたいし
 信じているのはひかりと叔母と叔父と西村先輩や仕事仲間だけ。」
「その信じられる仲間がどんどん増える努力をしなきゃ。」
「今は、誰も。」
「それほどのことが弓弦さんに起きたんだね。」
「もう思い出すと大変(笑)。」
「でもさ、それは思い出さなくてもいいし、忘れてしまったほうがいい。
 ここはその出来事が起きたところじゃない。」
「ねぇ。初対面に近いあなたはあたしの何を知りたい?」
「すべてさ。でも、冷えちゃう前に食べない?
 食べながら話せることだけ聞きたいな。」
「おいしいけどなんか緊張するなぁ。」

そう話しながら、食べていたのだがまっすぐに弓弦を見つめる槙村の視線が
弓弦には、まっすぐすぎて戸惑いが隠せない。
手作りの夕食を食べながら聞かれることに少しづつ口を開いていた。
なぜ槙村の聞くことに自分が答えているのかが不思議だと自分でも感じながら。

「あのさ、槙村さん。」
「何?どうした?」
「あたしね、槙村さんとは仲のいい友人で居たいとは思うよ?
 だけど、それ以上は多分無理。」
「なんでさ。」
「わからない、けどそう思う。今のあたしは男の人を
 友人以上に感じることができないし。」
「まぁ、それはそれだ。
 さっきさ、弓弦さんと携帯で話してコンビニで会ったろ?」
「あぁ。」
「でさ、俺んちまで話しながら来た時にさ隣に座ってて
 こんなにやさしい笑い方をするのにってそう思った。」
「でも、あたしは今誰かを好きとか嫌いとかそれを考えきれない。」
「ちょっと麦酒飲んでもいい?」
「いいですよ。」
「呑まない?って聞きたいけど車だしな。誘えないなぁ(笑)」
「無理ですね。あたし、お酒飲まないんです。」
「なんで?」
「お酒は味覚を鈍くするから。」
「職業がら?」
「えぇ。味見程度はしますが、提供するときとかは口にもつけません。」
「根性だなぁ。」
「それに、たまに西村先輩のレコーディング手伝っているんですよ。」
「西村って?西村正弘の?」
「高校の先輩でさ、頼ってくれるんだ。
 だからお酒での体調のトラブルや、現実でのトラブルも嫌だから。」
「弓弦さんは何を?」
「あたしはその時に言われる分をやるだけ。先輩が恥かかないように。」
「すごいなぁ。そういうのって俺聞いたことある?」
「西村先輩のCDって聞いたことありますか?」
「あぁ、好きだもん。そこにそろってるだろ?」
「へぇ、男の人なのに珍しいですね。」
「いや、男でもファンは多いはずだよ?」
「そういえばMartinの悠太さんもそういってたな。」
「なぁ、弓弦さん。君の知り合いはどんだけなんだぁ?(笑)」
「Martinの5人だって、山本社長だって槙村さんだって
 まだ同じぐらい一週間ってところ?」
「んじゃなくてさ、西村さんとか。」
「6年ぐらいの付き合いかな。」
「へぇ、付き合ってるの?」
「大先輩なのに、彼女になっちゃったら
 あたしファンの人に殺されちゃうって。ありえない。」
「あはは、そんなの本人が公言したらそれまでじゃん。」
「西村先輩はっファンの方々のものであって、一個人のものになるには
 大きすぎます。槙村さんだって同じですよ?」
「そっかなぁ。でも俺は好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌いだし。」
「そこはあたしと似てるかも。でもなぁ。あ。もう23時だ。帰らないと。」
「もう帰るんだ、帰ること考えてるんだ。」
「ここに泊まると無事では済まないでしょう?」
「あはは、とりあえず男と女だもんな。」
「だから失礼しますよ。(笑)」 
「なぁ、夜は長い。話しするだけならいいだろう?」
「一線を越えようとしなければいいですよ?」
「用心深いやつだなぁ。(笑)」
 
そういって弓弦を引き留める槙村。
本当に弓弦に気があるのか、小さいときからの話を聞き始め夜は更けていった。
なかなか返してくれない槙村に弓弦はほとほと呆れ果てていた。
あんなに呑んでいるのに、なかなか意識が落ちていかない。
少し不思議だったが、ソファで横に座られているのに
自分が嫌がるような絡みをしないし、話も面白くてずっと笑っていたような気がすると。
しかし、28時を回るころ二人はそのままソファで寝てしまった。
それでも槙村は6時半には起きた。
横ですやすやと寝ている弓弦を見て、ふと笑うとブランケットを取出しかけてあげた。
弓弦は、何も気づかずに寝ている。

 `きっと帰ってこない弓弦さんをひかりちゃんは心配しているだろうなぁ´

そういう風に弓弦の寝顔を見ながら笑っていた。
そして槙村はいつものようにシャワーを浴び、朝飯を作る。
弓弦は、その朝ごはんのにおいで飛び起きた。

「あぁぁぁぁ!すみません。あたし寝ちゃった。」
「おはよう。ぐっすりだったんで、起こさなかったんだけど?」
「やべぇ、ひかりの弁当。」
「メール入れたら?これから帰っても作れる時間はないぜ?」
「どうしよう。」
「どんなでも言い訳はできるさ、いっぱしの大人なんだし。
 別にここに泊まったとか言わなきゃいいことだし。」

そう話をしている所、携帯を取り出しひかりにメールを入れた。

 `おはようひかり。ごめん、今日は叔父貴の所で夜が明けちゃったから
  弁当作って持っていけない。お昼はどうにかして?
  お願い。本当にごめん。´

するとメールを送ってすぐに電話がかかってきた。

「おはよー!弓弦どこにいるのよぉ。」
「ごめんごめん、叔父貴の所手伝っててさ。」
「そうなの?てかさぁ、どうして弓弦は男の所って嘘でも言わないのかしら。」
「あはは。そんな嘘つけないさ。」
「今日はお昼はどこかで済ませるわ。」
「ごめんね、ひかり。今日の夜の仕事は出るから
 この間のゆかりさんって人、連れてきたらいいよ。」
「ほんとに?喜ぶわ。んじゃ、またあとでね。」

そういって電話を切ったが、横で笑う槙村。
上手だなぁと感心したと言いながら、笑っている。

「こうなってしまった以上、見つからないようにしなきゃ。
 槙村さんと何かあったって勘ぐられたらあたし困りますもん。」
「えぇ、俺とじゃだめなんだ。」

そういうと、弓弦を引き寄せた。
弓弦の腕の力もすごいものがあるがやっぱり女、槙村の力には到底及ばず
引き寄せられ、抱きしめらてた。
弓弦はびっくりして顔を伏せたが、おでこにkiss。

「俺はさ、弓弦さんが自分自身を男として扱っているし
 周りも少し女性としては扱っていない気がする。
 だから、そんな風になってしまう。俺は女性として友人からでいいから
 心から女性として弓弦さんに接していきたいと思っているから。」
「槙村さん。女性として扱ってくれるのはうれしいですけど
 これからこういうことはしないで。」
「なんで?」
「ごめん、あたしは男の人にも女の人にも恋愛感情を持てないから。」
「まだまだ時間はあるさ。急がない。」
「ごめん。本当にごめん。」
「唇にkissしたら何か変わるかなぁ?」
「そういうことしたら多分、次顔合わせても口もきかないかも(笑)」
「でも笑っているということは、友人としては合格なんだろ?」
「どうでしょうかね。」
「めし食ったら、どっかいく?」
「家に帰ります。伯母ぁが心配するし。」
「そっか残念だ。」

弓弦は槙村の作った朝ごんんをいただき、少し話をしてから家路についた。
槙村さんは大胆だと、弓弦は次から用心しようと。
本当に大胆だった。しかし襲うのならば襲えたんだろうけど
それをあえて襲いもせずに、ただ弓弦の寝顔を見ていたのかもしれないが
それでも、何にもなかったということが不思議な感じに思えた。

「ただいまぁ。」
「あら、弓弦。珍しいわね朝帰りなんて。」
「あぁ、ちょっとね。」
「たまには男の所からだって言ってみなよ。どれだけおばさんが安心するか。」
「もしそれが本当だったら、おばさんどう反応するのかよ。」
「どうするかねぇ。姉さんに弓弦がやっと女になりましたって
 仏壇の前に座って報告するかねぇ(笑)」
「やめてよそれ。なんだか恥ずかしいなぁ。」
「まじでかい?」
「いや、男は男でも母さんの元彼の所でバーテンダーの修業しつつも、お店に出てた。
 眠たかったから、そのまま店に泊まったんだ。」
「なぁんだ、それだけかい。」
「おばさんも余計な心配しないで、仕事仕事。」
「はいはい。離れはそれなりに急いで片づけるから待ってておくれよ。」
「わかったぁ。」

弓弦は少しまだ眠たかったので自分の部屋でぎりぎりまで寝ようと
もぐりこんだ、自分の寝床に。
なんだか、槙村さんのことろで寝てた時も安心して寝れたんだなぁと
少しうとうとしながら考えていた。
メールがぼちぼち入りはじめ、そう寝れないかもと思ったが
やっぱり寝る時間が少なかったのか気持ちよく寝着いてしまった。
起きると14時である。なんだかなぁと複雑な感情が残ったけど
シャワーの前の一服。上がった一服と。
落ち着いたら、着替えて仕事の準備をして出かけていた。

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