森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 5

いつもと違う顔の弓弦に気が付いたのは誠だった。
なんだか複雑な顔をしている弓弦に、誠は後ろから声をかけた。

「おはよう、今日もご機嫌かい?」
「誠さん、お疲れ様です。」
「どうしたのさ、浮かない顔をして。」
「ん、ちょっとね。」
「ちょっと何かがあったんだ(笑)」
「わかるんだ。誠さん昔っから感がいいから何でも見透かされる。」
「まぁ、今日は忙しくなりそうだから気合入れていこうな。」
「そうだな。」
「みんな、開店するぞ。いいかぁ。」
「はいっ!」

そうやって一日が始まった。もちろん弓弦の携帯にもメールが届いていた。

 `弓弦、夕飯食べてからだから多分20時頃になると思うけど
  そっちに行ってもいい?byひかり´

 `今日は大丈夫?遅くなるけど、そっちに行きたいがだめか?´

 `悠太が弓弦さんと話ししたいって言ってるけど
  うかがってもいいものかな?´

続々とメールが来る中、ひかりのメールと西村のメールだけは返信をした。

 `大丈夫だよ。ひかりとゆかりさんだっけ?20時だね。OKだよ。´

 `先輩?今日は仕事だったんですか?疲れているのならば無理をしないでください。
  でも、楽しみに来ていただけるのならば大歓迎です。´

あとMartinの誰だっけ。悠太って唯一バイク乗り回している人のツレか。
その悠太を連れてくるってメール、登録してないからと弓弦がわかっていない。
だから返信をしていないのだけれど、カウンターで接客中にも
mail

メールが入ってきているのがわかる。
カウンターの中では携帯がメールの受信で光っている。
ふと隣のブースから、貴志がそれを見ていた。

「弓弦さん、メール!メール!」
「わかってるよ。大丈夫。」
「そっか。気づいているのならそれでいいんだけどさ。」

そういわれて、目の前の人の注文を作り席を外す。
客人にそのメールのことをきちんと伝えた。

「モテモテだね、弓弦君も。」
「あ、これはもうちょっとしたら来る人たちの連絡ですよ。」
「で、誰だね?」
「これですか?一つはいとこのひかりです。友人と二人で。」
「二人で来るっていてるのかい?」 
「ですね。もうすぐ着くって。」
「こんなおじさんと一緒だと、まずいか?」
「自分でおじさんって言ったらだめじゃないですか(笑)
 まだ、男爵は50でしょ?」
「んじゃ、着いたらご一緒させていただくかな?」
「ひかりが一緒でも構わないんですか?」
「あぁ、弓弦君を一人占めしたらその子もかわいそうだろう。」

そういって笑って話す間にもまたメールが入ってきていた。

「さぁ、メールを確認して送り返さないと今日の客が逃げるぞ?」
「そうですね、男爵のお気持ちに甘えて返信します。ちょっと席を外しますね?」
「あぁ、ここでいいじゃないですか。カウンターの中だと
 ほかの人にも見えないし。私も一緒ということも一緒に。」
「男爵、ありがとうございます。」

そういうと弓弦はひかりのメールの返信をした。

 `ひかり、20時着だね。了解した。
  それとね、ひかりのメールの返信をしててさ
  目の前にいる、男爵様が興味を持たれている。
  ひかりもゆかりさんも名刺もってきた方がいいよ。´

そう返信した。そして20時までのあと少しを
その目の前にいる男爵:山村と話をしながらひかりたちを待っていた。
ちょうど20時、黒服が弓弦を呼んだ。

「原田さん、ご指名です。」
「ようこそ、我が城〝mask”へ。」
「やだ、弓弦ったら(笑)」
「あはは。さぁ、男爵様がお待ちです。ちゃんと名刺は持ってきた?」
「はい。」
「ゆかりさん、ようこそ我が城へ(笑)」
「弓弦さん、すごくかっこよくない?」
「惚れてもだめですよ?(笑)」

そういいながら店内の奥の自分のブースへお姫様二人を連れて行って
席に座らせ男爵を紹介した。

「山村男爵、おまちどうさまです。」
「初めまして山本ひかりです。」
「初めまして吉村ゆかりです。」
「初めまして、弓弦君のファンの山村です。」
「最初のご挨拶の一つは弓弦からのプレゼントです。」

そういって弓弦がそれぞれの顔を見ながらカクテルを作った。

「ひかり。ひかりにはpeachBellini。
 これはさ、そんなに度数強くないから大丈夫だよ。」
「ゆかりさん。ゆかりさんはお酒は大丈夫?ゆかりさんには、peachManhattan。
 始めの一日にしたらちょっと物足らないかもしれないけど。」
「山村男爵。今日はまだこれからでしょう?はい。peachbeer。」
「よくわかるな。」
「本当に呑みやすい。毎日でもここに通ってしまう。
 弓弦さん、本当にこれ美味しい。ありがとう。明日も来ようかな(笑)」
「邪魔でなければわたくしめがエスコートしてあげるよ。」
「本当に?男爵(笑)あぁ、あたしいつも男爵って呼ばせてもらえってるんだけど、
 山村さんっていうんだ。ね、男爵」
「弓弦君と私の中だもんな(笑)」
「ねぇ、山村さんって???」
「ひかり、気づいた?」
「ゆかりは?」
「あははは、私のことが気になるかね。」
「弓弦??」
「弓弦君のファンだよ。」
「ひかり、この山村さんは推理小説家の山村諒一さんだよ。」
「うっそ。弓弦さんの知り合いっていったいどういう構成なの?」
「えっとえっと。」
「ゆかりさんもひかりも自分たちの名刺を」
「しょうがないなぁ(笑)でも私は弓弦君のファンの一人だよ、ここでは。」
「あの、あたしがいとこのひかりです。ここM'companyで受付をしています。」
「あの、吉村ゆかりです。同じくM'scompanyで受付をしています。」
「ほぉほぉ、きれいどころだねぇ受付嬢。
 M'scompanyってことは山本社長の所の子たちか。」
「ご存知なんですか?」
「山本社長はあちこちにつながりがある人だよ。
 ここに出入りする人の半数は知り合いだと思うよ?」
「ご本人はこの間のご来店が初めてらしいのですけど。」
「そうだったのか、その時には誰が一緒だったのかい?
 スカウトの江藤さんかい?それとも?」
「あぁ、この間は秋山さんと来られましたよ。」
「んじゃ弓弦君を、真面目に引き込もうとしておられるんだな。」
「だってねぇ、ひかり。Martinの翔太なんだもん。」
「でも似ているだけでは、誘い込まんぞ?」
「さぁねぇ。でも弓弦本人は嫌なんでしょ?そういうの。」
「受け入れているのであれば、
 あたしはきっと西村さんの所でお世話になってるんだろうな。」
「そうだな、弓弦君はあいつがいたな。」
「西村さんって?」
「西村正弘。」
「弓弦と高校が一緒の有名人。」
「有名人通り越して・・・・・そんな人が?」
「弓弦さんって何者なの?ひかりぃ。」
「さぁ、あたしにもわからないわ(笑)」

そうやって、愉快に話が弾み4人で過ごす時間がすごく楽しかった。
そういう弓弦の携帯にはメールが続々と入っていた。
そんな中ひかりの携帯にもメールが入る。

 `ひかりさん。弓弦さんにメールを入れたのですが
  返事が返ってこないんですけど。元原´

「ねぇ、弓弦。メール他にも来ている中、元原さんからメール来てない?」
「ほんとに?でもあたしメールアドレス教えたことないけど。」
「あ(汗)」
「何?」
「あたしが教えて、弓弦に教えたよっていうの忘れてた。」
「おいおい(汗)どのメールなの?ひかり見てよ。」
「わかった。確認したらあたしの携帯で直接かけていい?」
「いいよ。携帯かけるならあっちのブースでかけて。」
「OK」

そういうと、ひかりはメールを元原に打った。

 `ごめんなさい、あたしが伝えるの忘れてて。
  今、どこにいますか?携帯にかけてもいいですか?
  よければ携帯の番号を教えてください´

するとすぐ返信が来た。

 `俺の携帯は 090-****-****です´

そうすぐに帰ってきたので、すぐにひかりは電話を掛けた。

「元原さんすみません。ひかりです。」
「ごめんじゃすまないよぉ?今ひかりさんはどこにいるの?」
「あたしは今ゆかりと弓弦と一緒よ。元原さん、今大丈夫ですか?」
「あぁ、今さ悠太の家にいるんだ。」
「あたし、今日弓弦から紹介された推理小説家の山村さんとも
 ご一緒しているんですよ。」
「へぇ、すごいじゃん。そしたら俺らが行くと邪魔だなぁ。」
「ごめんね。弓弦に元原さんにメールアドレス教えたの言うの忘れてて
 弓弦にも元原さんのメールアドレス教えておくの忘れてて
 弓弦の携帯の中で元原さんのが迷惑フォルダーに入ってた(笑)」
「おいおい、それって俺可哀想なんじゃない?」
「あはは。可哀想ですね、弓弦に変わりますか?」
「いやいいよ。それよりも、弓弦さんは今日は忙しそう?」
「今はあたしたち3人ですよ?あとの予定はわかりませんけど。」
「んじゃ、これから行ってもいいかなぁ?」
「聞いてみようか?」
「うん。」

そういってひかりがカウンターに戻って弓弦に聞いた。

「元原さんが弓弦の所に遊びに来てもいいかって。」
「一人で?」
「いや、多分数人かな?」
「大丈夫って伝えて。入口の黒服に《原田弓弦》って指名すると入れるよって」
「わかった。」

そういってまた場所を移動し、元原に話す。

「元原さん。大丈夫ですって。」
「やった。」
「来たら入口の黒服に《原田弓弦》って指名を入れてって。
 そしたら入れるように黒服に伝えておくからって。」
「わかったぁ。来るのはさ、俺と悠太と翔太だよ。そう伝えておいて。」
「これから来るの?」
「あぁこれから来ると21時ぐらいかな。」
「わかったそう伝えておく」
「じゃ。」

そういって電話を切ると、それを弓弦に伝えた。
そしてそれから少し時間が過ぎて、山村さんは呼び出しがかかり
しぶしぶと〝mask″を後にした。
ひかりとゆかりは隣の誠のブースでなにやら楽しい話をしているらしい。
なかなか弓弦のもとへは帰って来ないのだけれど
弓弦のブースも別の客人が来ておられ、それどころではなかった。
すると21時前になって黒服が弓弦を呼んだ。

「原田さん、ご使命です。」
「はい、今行きます。」
「ようこそ、我が城〝mask”へ」
「こんばんわ、弓弦さん。お言葉に甘えてきちゃいました。」
「て言うか、黒服が驚いているよ(笑)」
「あ。初めまして、弓弦さんの偽物の翔太です。」
「本当にそっくりですね。どうぞごゆるりと。」
「3人が入ってくると、店内がざわついた。」

 `原田の後ろを原田が歩いている´

そういってざわついているのがわかる。
元原も悠太も翔太もMartinの誰じゃなくってここでは弓弦に似ている人が来たと。
中には〝あぁ、Martinの″と気づいている人もいるのだけれど、手の空いている人は
弓弦さんについてとマネージャーが指示を出した。
もちろん、その弓弦さんのブースを手伝いたい奴はたくさん手を挙げたが
その日は、貴志が入った。

「ありがとう貴志。」
「今日の弓弦さんのブースを手伝えれることうれしいですよ。」
「そしてようこそ、我が城〝mask”へ。
 えっと元原さんと悠太さんと翔太さんでしたね。」
「はい、僕はMartinリーダーの元原達哉です。」
「で、僕が橋本翔太です。」
「そして僕が青井悠太です。」
「名前もかっこいいなぁ。」
「僕は弓弦さんとほぼ同期なんですが貴志って言います。
 弓弦さんがいないときはよろしくお願いしますね。」
「あたしよりも、貴志の方がいろいろと話面白いわよ。」
「そんなことないですって、弓弦さんは顔が広いから
 僕らよりも面白いことたくさん知ってるじゃないですか。」
「僕らもこの間びっくりしました。だって、西村さんでしょ?」
「それもさ、すごく仲が良くって。」
「あぁ、彼は弓弦さんとここでは公認ですよ(笑)」
「貴志?そんなこと言うとこの人たちが真に受けるじゃん。」
「本当に弓弦さんは西村さんとはおつきあいしてないんですか?」
「してないわよ(笑)」
「もったいないなぁ。」
「弓弦さんが誰かのものになってしまったら、ここの売り上げ落ちちゃいますよ。」
「さぁ、何がいいかしら?貴志が作るカクテルはすごいのよ?
 コンクールのスタンダード部門での優勝経験者なんだから。」
「弓弦さんだって、オリジナルフレッシュでは弓弦さんダントツ一位だったじないですか!」
「んじゃ、お任せで。」
「あ。でも俺ははじめは軽くアルコール弱めのもので。」
「翔太君はあたしが作ってあげるわ。」
「悠太は?」
「僕は本当にスタンダードで口当たりのいいやつを。」
「元原さんは?」
「あぁ。元原さんじゃなくって達哉でいいですよ?
 とりあえず、俺は貴志さんの優勝した時のやつで。」
「通ですねぇ。んじゃ。」

そういって二人は丁寧に材料を準備し作り始めた。

「翔太君のはあたしのおすすめ。
 ホワイトミモザっていうの。グレープフルーツのホワイトで作ってるのよ。
 普通はレモンでやるんだけど、少し爽やかなところを
 翔太君のイメージに重ねて。」
「俺からはまず悠太君に。その悠太君の人柄のイメージで作りました。
 Union・jackと言って、そんなにスタンダードとか
 考えなくつくたんですが、unionMartinの人だと思って。
 色が混ざらないように気を付けるのがポイントなんですが
 わかりやすく言えばイギリスの国旗です。
 悠太君、Beatles好きでしたよね?」
「よく僕がBeatles好きだって知ってましたね?」
「勉強は世の常ですから。」
「で、達哉君は。俺の優勝したやつは今季節的にないものがあるので
 達也君のイメージでこれかなって。
 sol・cubanoって言います。意味は「Cubaの太陽」って。
 もともとベースがラムなんですが原産国がCubaだということ
 で、弓弦さんのグレープフルーツを拝借して作りました。
 1980年のSuntoryの大会で、木村さんという人がこれで優勝したんですよね。」
「それぞれいろんな意味があるんですね。簡単に話されてるけど
 本当はすごく説明するとかなり長くなるんでしょ?」
「そうですねぇ。説明は弓弦さんの方がわかりやすいかもですね。」
「どうですか?」

三人は出されたそれぞれのに口を付けた。
三人とも顔を見合わせびっくりした様子で、笑顔がこぼれた。

「初めてこういうバーに来たんです。僕たち。いつもわいわい騒ぐだけで
 お酒がこんなに味わえるものだとは思いもしなかった。
 すごい、病み付きになりそう。」
「奥が深いんですよ。貴志もあたしもその奥深さにひかれて
 何度も厳しいところでやめようかと悩んだけれど頑張ったんだよね。
 また次に行ってもどうせ厳しい道だし
 ここで頑張れないとほかでもがんばれない。なぁ、貴志。」
「あぁ、弓弦さんの言うとおり。でも、僕はそれにここの人たちが大好きで、
 お客様も優しいしお酒を呑むのことを楽しんでいらっしゃる方。多いし」
「そうだね、お酒を呑むことに感謝しながらいただかれている人多いね。」

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