森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 6

そういって彼らが来てからお酒というものについての話が
そのブース内で盛り上がっていた。隣の誠のブースで楽しんでいた
ひかりとゆかりは23時になるということで帰ると弓弦に言いに来た。
ひかりは元原にごめんねと言って、あとは弓弦と楽しんでねと。
それでも次々といろんな話を聞きながらカクテルなどの話を長々と。
達哉と翔太は貴志とそんないろんな話を。横で弓弦と悠太がバイクの話を。
すると三人の後ろから声がかかる。

「やぁ、来てたのか。」
「あ、西村さん。」
「おかえりなさいませ、maskに。」
「ただいま、弓弦。」
「いいなぁ。常連だとおかえりなさいませか。」
「んだな。そのうち君らもそういわれるさ。」
「弓弦、いつものをお願い。」
「かしこまりました。」

そういうと、足元のチルドから果物が出てきた。

「今日のお勧めはこんなところですかね。」

弓弦の手に持つ籠の中にはみずみずしい果物があった。

「グレープフルーツのホワイト・イタリア産のブラッドオレンジとライム
 沖縄産のマンゴー・福島産の白桃。
 この時期には珍しい茂木ビワですかね。かなり早いですが。」
「んじゃグレープフルーツで。でもその懐かしい茂木ビワも口にしたいな」
「ソルティースタイルでアレンジしましょうか。」
「弓弦のお薦めなら何でも。」
「茂木ビワはきれいにむいてデザートでつけましょう。」
「ありがとう。本当に瑞々しいビワだなぁ、弓弦も懐かしいだろう?」
「えぇ、そう思ってあたしも手に入れてきました。」

そういって弓弦の手元を見ながら話をしていた。

「西村先輩には、ソルティドッグを。
 クラッシックアレンジだとピンクのグレープフルーツを使うんですが
 今日は酸味の利いたホワイトで。
 で、ソルティドッグってジンでやるんだけど
 強めでも大丈夫かなって思って、ウォッカで強めにしました。
 西村先輩の強気な発言に合わせましたよ?」
「へぇ、どう口説いても落ちませんよ?ってか?」
「あはは。どうにでも思っちゃってください(笑)」
「弓弦さん理想高すぎなんじゃない?」
「西村さんででもすごくハードルは高いって思うのにそれでもダメだって
 それって、理想は神様じゃん」
「弓弦さんは本当に何とも?」
「だって崇高な大先輩だもの恐れ多いわ。」
「同じ身の丈なのにさ、何とも。」
「んじゃ、逆に弓弦さんの理想は?」
「言うの?」
「えぇ。それは誰でも知りたいことですよ。」
「前に映画であったでしょ?〈Leon〉って。
 あの中に出ている俳優さんで《jann・reno》」
「うっへ。理想高すぎじゃん。それこそこの日本にはいないぜ。」
「でもjann・renoが理想だと、どこかで妥協しないと結婚できないしな。」
「チャンスは生まれますかね?」
「お前らも弓弦争奪戦参加するか?」
「やめてくださいよ?いくら体があっても追いつかない。」
「貴志君だっけ?ここの人たちの中でも争奪戦はすごいんだろ?」
「誠さんもそうだし、あっちのブースの健さんも。
 聡さんもそうだし多いですね、弓弦さんを狙っている人は。」
「こらっ。あたしは女だけど、誰のものでもないから?」
「あはははは。まず弓弦自身誰が理想なのかもっと理想を突き詰めないとな。」
「弓弦さんの理想にはまれるかなぁ。」
「最後の最後は俺が弓弦を引き取ることになるんだろうなぁ。」
「先輩?それは決めつけてはいけないでしょう?」
「そうなの?」
「そう決めつけて話すと本当にこの人たち勘違いしちゃいますから。」
「勘違いさせておけばいいじゃん。」
「まじで?まじで西村さん、弓弦さん好きなんだ。」
「でもこんなに愛してても弓弦は靡かない。だけど諦めきれないいい女だ。」
「そうほめても何にも出ませんよ?
 それにどうかしたんですか?おかしいですよ?西村先輩」
「どうかしてるのかな?」
「本当にずいぶん酔ってるみたいだな、弓弦さん。」
「そうだろ?貴志」
「Martinのみんなももう25時だ。閉店だから帰ろうか。」
「そうですね。でもどうしたんですかねぇ。西村さん」
「誰にも知られたくないことがあったんだろう?
 そぉっとしておこうよ。僕らは帰ろう。」
「そうだな。弓弦さん、今度の休み走りに行きましょうよ。連絡待ってます。」
「あぁ、いいコース考えておくよ。お休み、ナイトたち。」
「お休みなさい、honey(笑)」

そういって先に三人を返した。カウンターで黙っている西村。
片づける弓弦を見ながら、黙っていた。

「先輩、閉店の25時です。帰れますか?」
「あぁ。大丈夫だ。」

そういって立ち上がろうとするがふらふらしている。かなり酔いが回っていたのか。

「西村先輩、今日はバイク?」
「いや、知り合いと呑んでたから歩きだよ。」
「taxi止めますから、少し待ってて。着替えてきますね。」
「あぁ。」

そういって弓弦は着替えるためにそこを離れた。
離れている間、貴志が西村のことを見ていてくれたから
すごく助かったよと貴志に声をかけありがとう・お休みと。

「taxiつかまえても部屋まで一人では上がれますか?」
「あぁ。」
「先輩、しっかりしてくださいよ。」
「あぁ。」
「仕方ない。」

そういって弓弦は自分のバイクをお店の隅に寄せて
つかまえたtaxiに一緒に乗り込み、西村と西村の自宅に向かった。

「5890円です。」
「はい。釣りはいらないから。」

そういってtaxiを降りると西村の家だ。
弓弦は入り口に入る前に本当に男に見えるようなしぐさで西村を抱え
家へ入っていく。いつもここの入り口にはパパラッチがいることで有名で、
迷惑な写真とスッパ抜かれないように気を使わなければならないのだ。
こんな環境の悪いところ引越せばいいのにと弓弦は思っていたが
先輩の自由だと思い口には出していなかった。
西村の自宅の部屋の前まで行き、声をかけ鍵をもらう。
そして弓弦がドアを開け、西村を連れて入って行った。

「弓弦?ごめんな。玄関のドアはチェーンまでかけて。」
「あたし帰りますよ?」
「帰らないでくれよ。一人じゃいられない。」
「先輩らしくないどうしたんですか?」
「弓弦、なんで俺じゃだめなんだ?」
「だめとかじゃなくて、先輩は大きすぎます。人としても先輩としても。
 あたしにはすごくもったいないんです。」
「今日さ、しつこい女優とTVで一緒だったんだけどさ
 王様ゲームとかやりやがって、kissさせられた。具合悪かったよ。
 そのあともべたべたと引っ付きやがって。すっげぇ胸糞悪くてさ。」
「大変だったんですね。」
「それも、収録終わった後もさ控室までついてきやがってさ
 その上よ?その上、隣りにいた仲のいいやつがさ、バカなんだよな。
 俺がそいつが大っ嫌いなこと知ってるくせに俺のアドレス教えやがって、
 maskに着くまでメールのあらしでさ。思いっきり酔っぱらって、
 電話に出てくだまいたらイメージ悪っ!とか言って電話切りやがって。
 あぁぁぁぁぁぁ。思い出しただけでも気持ちわるい。」
「大変だったんですね。でも、そこまで吞まなくったって。」
「なぁ、弓弦。お前がさ隣にいてほしい。ずっと前から思ってた。
 弓弦しか俺の隣にはいてほしくない。なぁ、弓弦。俺たち15も違うけどだめか?」
「先輩?あたしいい女でもなんでもないですよ?
 勘違いしている。煙草も吸うし喧嘩もするし、汚い女ですよ?」
「俺には弓弦しかいない。
 一緒にこれから先を歩むのは弓弦しかいないんだ。」
「まず先輩が知らないことを教えてあげる。」
「なんだ?」

そういって、西村が座るソファの横に座る。
そして白いシャツをおなかを見せるように剥ぐ。
ブラの下、おへその下あたりをまっすぐに見せる。

「先輩、あたしのコレ。」
「なんだ?」
「これね、元彼に刺された傷。」
「かなり前に何か言ってたなぁ。」
「この15㎝にもわたる傷が、あの人を忘れられなくしてしまった。」
「何があったんだ?」
「それが理由で、あたしはその人以上に他の人を好きに離れなくなってしまったの。」
「そうなのか?」
「先輩。あたしね、2年の時にね先生と秘密の恋をしたの。」
「で?」
「誰かに知られたらきっとまずい状況になるとわかってて恋をしたの。
 だけど相手はそのスリリングを楽しんでいただけで
 好きだの感情とともに付き合っているんじゃなかった。
 そんな時2年の夏だったかな?コンクールが終わってから
 あたし体調崩したんです。その理由分かります?」
「もしかして妊娠したのか?」
「・・・・・・・・・。その人の子供を妊娠しました。」
「おいおい、学校には?」
「ばれていません。」
「相手には?」
「わかると態度が変わりました。あたしは大学に進学したくて
 放課後補習を受けてたのに、大学を受ける必要はないと。
 学校をやめてその子のために自分と結婚してくれと。
 男の人としたら、愛している人の事を考えて言うのは当たり前。
 それはわかっているの。だけどあたし決めたんです。
 あたしは学校をやめるだなんて全然考えてもいなかったし、
 だから母に相談して、おろすことを決めたの。
 相談した次の日、クリニックに行って検査したんだけど。」
「どうだったんだ?」
「やっぱりその時点で妊娠5週目だって言われた。」
「なんで気づいたんだ?」
「なんとなくね、なんとなく危ない日があったなぁと思ってた事と
 月の物がいつもきっちり来てたのに来なかった。
 そしてなんとなく貧血もひどいし、たとえをあげるときりがなくって。」
「で、お母さんに。」
「だってお母さんしかいないじゃん、誰も・・・・・。」
「悲しいな、なんでそんな恋愛したんだ?」
「なんでだろう、一目で引かれたってこともあるけどなんでなんだろう。
 クリニックに行って検査してその結果を聞いた時、先生が悲しい顔をして言うんだ。」
「・・・・・・・・・弓弦。」
「先生がね、悪い方を考えてはいないが一度きちんと検査をした方がいいと言ったんだ。
 赤ちゃんもいた、しっかりとした妊娠の確認ができた。
 それと同時に赤ちゃんのそばに腫瘍があると。どっちにしても
 きちんと検査をしないと赤ちゃんを下す判断だけではいけない気がするって
 そう先生が言ったの。で、先生の紹介する病院で精密検査。」
「弓弦・・・・・話すこと無理しないでいいぞ。」
「いいえ、きちんと知ったうえであたしと接してほしいから。
 でね、検査した結果はstage1の悪性腫瘍。つまり癌。
 どっちにしても赤ちゃんも無理だろうとそう先生が言ったわ。」
「その手術は?」
「えぇ、その病院から帰った夜に母が言うんだ。
 自分の家族は弓弦と二人だけなんだって、弓弦までいなくなったら
 どうしていいかわからなくなる。弓弦に死なれたらお母さんもって泣くんだ。」
「だろうなぁ。母一人子一人じゃ。」
「で、伊藤先生っていう人に福岡で執刀してもらって手術をしたんだ。
 もちろん、将来のことを考えて手術してくれる先生の中では腕はぴか一だって
 そう教えてもらってた先生にしてもらった。」
「ラッキーだったな、弓弦。」
「手術もうまくいって退院してしばらくしてからあの人が来たんだ。
 母の店を手伝ってる時にお店に来てあたしその人に刺された。
 弓弦にだけ話しをしたいって。だから少しの間こっちに来ないかって
 お店の外から呼ぶんだ。少し様子がおかしいとだれもが気づいて
 店に入れないようにしてあたしを隠すようにして警察を呼んだんだ。
 だけど警察が来る前に、裏口から入ってきてあたしのここを思いっきり。」
「大変な目にあったんだな。でも俺はそいつとは違う。」
「そのに人にもね産婦人科に行って妊娠が分かった時、
 癌が見つかって子供を産める状態ではなかったと伝えたんだ。
 ちゃんと伝えてこういう風だから子供をおろすことを決めたんだって
 ちゃんと伝えたんだ。なのにあの人はそれを理解してはくれなかった。
 て言うか、その母の店に来た時は何かが違ってた。
 あの人、少しおかしかったみたいなんだよね。何がどうしたっては
 わからないんだけど、少し様子がおかしかったんだ。」
「その人は?」
「もちろん、警察に。でも表ざたになると困るから
 訴えはしないと言い、その人のせいにもしなかった。
 悪いのはあたしだから。
 その人は学校をやめて実家の佐賀に帰られた後
 亡くなられたわ。自宅の裏で首をつって。」
「弓弦は悪くないじゃないか。」
「で、長崎を離れるように、こっちで大学を受け
 こっちに来たの。そうでないとあたしがあそこに居られなかった。」
「大変だったんだな。で、この傷なんだ。」
「これから先、これを素直に説明してみせれる人はいないと思います。
 先輩だから話をしたんです。あたしは好きな人の子供も産めません。」
「お前さ、もう忘れな。弓弦は弓弦だ。忘れなきゃ。」
「わかってるんだけど、無理だもの。」
「弓弦?弓弦。そういって泣く。ほら、胸を貸してやるから
 ちゃんと泣けよ。泣いたら忘れるんだ。」
「先輩、優しすぎですよ?」
 
すると西村は弓弦を引き寄せ、黙って抱いた。
弓弦はその引き寄せる手を振り払いもせずに、西村の胸で泣いた。
泣き顔を見られたくない弓弦はそのまま顔をうずめ声を押し殺すように泣いた。
西村はそれが哀れで、そして愛おしい弓弦の髪をなでしっかり編み込まれた三つ編みをほどく。
きれいに指で絡まってる髪をほどくと、黙って抱きしめた。
泣き疲れて眠る弓弦を、大きなブランケットに一緒にくるまり
弓弦の寝顔をじっと見つめる西村。そんなしないうちに、朝が来た。
朝の光がカーテンの隙間から差し込み、西村と弓弦をスポットライトのように照らす。
一緒に寝ていた西村もその光の眩しさに目が覚め、そして弓弦も。
眩しい光にどうすることもできず起きた。
目を開けるとまぶしい光と共に西村の顔が弓弦の目に映り込む。
西村の顔が弓弦に近づき、kissをした。すぐ離れると、お互いに顔を見つめる。
しかし西村はまたそのまま長いkissをした。弓弦は何の抵抗もせず、
西村のkissを受け入れ抱き寄せて脱がせる手を拒まず、そのまま重なっていった。
すると携帯が鳴った。驚いて離れた二人。西村の携帯が鳴ったのだ。
少し安心したのか脱がされたシャツをまた着て、座り直した弓弦。
西村はなった携帯に出て話をしている。
ぼーっとしている弓弦に朝飯どうすると聞いた西村は
その悲しそうな横顔をしている弓弦にまた言った。

「過去は忘れろ。これからのことを考えれ。お前には弓弦には俺がいる。」
「でも。」
「でもでもなんでもない。最後の最後は俺がいる。
 弓弦はこれから好きなことをして人生を楽しめ。そんな悲しい顔をするな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

弓弦は西村先輩が自分の知り合いでこんなにも思ってくれていることが
すごく幸せなのかもと思い始めた。
その西村の後ろに槙村の影があった。二人似ているのかもと。
でも、こんな話を槙村にもできるだろうか。

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