森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 11

いつものようにシャツを着ていつものように皮パンはいてひかりの弁当を持ち
いつものように家を出た弓弦。
そして弁当を渡すためにひかりの会社の入り口にバイクを停めひかりにメールを入れる。
すると、ひかりが出てこない。ひかりの代わりに、山本社長が走って出てきた。

「弓弦君!弓弦君!ちょっといいかね。」
「どうしたんですか?社長」
「ひかり君の弁当は受付にあずけたらいいさ。」
「どうしたんですか?社長。あたし急がないといけないんですけど。」
「いや、すぐに終わるからさ。持っていてもらわなければいけないんでね。」
「何をですか?」
「そう用心しないでも大丈夫さ、とにかく中に入って。」
「社長・・・・。」

そういって弓弦を社屋に連れて行った。

「江藤!江藤君、契約書はどこだ?(笑)」
「ちょっと待ってください、それって????」
「弓弦君のマネージメントはうちがすることとなった(笑)」
「うっそ。あたし女ですよ?無理ですって。絶対無理っ!」
「取締役会で決めた。本人の意思も尊重するが
 西村君の所に行かれると非常に悲しいものがあるからな(笑)」
「まじでですか?だってあたしタレントにはなりたくないです!
 その意思は尊重されないんですか?」
「冗談だよ(笑)そんなことしたら西村君から苦情が入る。」
「いや、社長。真面目にどうかしたんですか?」
「とりあえず、私の部屋に。」

そういって、社長室に弓弦は連れて行かれた。
すると、ひかりもそこにいた。

「とりあえずな。びっくりするぞ?」

というと、別のドアから入ってきた人がいる。

「あー。藤沢北警察署の所長の水沢さんだ。」
「あ。今朝はどうも、電話では失礼しました。」
「いや、朝からすまなかったな。」
「感謝状の件は、おおっぴらにならないように、お願いしたいのですけど。」
「いや、それはそれだ。多分にTVとかが入るからそれが嫌なのかと。
 で、山本君と私は幼馴染でな相談したってわけだ。
 そしたら君のことを知っているよというんで、どうしたらいいか相談したんだよ。」
「弓弦君の昨日のは私も君の店で聞いたんだが、偉かったなぁ。
 自分の危険も顧みずに飛び込むとは。」
「山本社長?それは違います。弓弦は長崎の高校にいるときに
 高校の全国大会で三本の指に入る成績をのこした水泳の経験者ですよ?」
「そうなのか?」
「普通ですよ。体力を維持するためには鍛えるしかないですからね。
 たまたま水泳部から呼ばれて出たら、全国大会に出てくれないかって。
 人数足りないからって出ただけですよ。
 まぁ、今もちゃんと体を維持するためにやっていますが。」
「そうだったのか。でも素晴らしい、人柄といい努力することはよいことだ。
 ますます、感謝状は渡したいな。」
「恐れ多いですよ。そんな大した人間ではありません。」
「しかし私はここに感謝状を持ってきたよ。受け取ってほしくてな。」
「弓弦君。ここでならいいだろう。ここでなら知っている人間しかいない、
 恥ずかしがることはないだろう?」
「でも」
「いいから、さぁ。」

そういわれると、警察署長からの感謝状と金一封を渡された。
挨拶が終わり少しだけ話をしてから弓弦とひかりは社長室を出た。
するとその階の廊下を曲がると秋山さんらがいた。

「やぁ!弓弦さん。今日は社長室で何があったのさ。」
「いや、ちょっとね。」
「知ってるよ。弓弦さん!昨日映ってたもんなぁ。」
「いえ。あれは・・・・・・恥ずかしい。」
「恥ずかしがることないじゃない。弓弦さんなんだし。」
「意味深だなぁその言い方、にやにやしているし(笑)」
「あれじゃぁ、西村さんも手元に置きたいわけだ。
 あんなの見ると、不安になってしまうよ。」
「どういう意味ですか?(笑)」
「危なくて。危なくて。怪我したり事故に巻き込まれたり。」
「そっちの方での心配ですね?それは大丈夫。いつも鍛えてますから。」
「そっちもだけど、誰かにさらわれてしまう心配もさ。」
「あぁ。それはあり得ない、絶対にありえないですよ。」
「弓弦さんがその気がなくても、周りは大ありですよ?
 いろいろと聞きましたもん。昨日。えっと、誠さんって人から。」
「けっ。おしゃべり(怒)」
「弓弦さんは本当に女らしくないから話しがしやすくて好きなんだよなぁ。」
「それ褒めてるんですよね?女らしくないんじゃなくって、
 男らしいと言ってくださいよ。それが一番くすぐったいし嬉しい。」
「どこまで我が通ってるんだよ。」
「んじゃ、秋山さん。これで、また今度。」
「あぁ、急いているけど事故には気を付けてな」
「ありがとうございます。」

そういって、秋山と一緒に囲んでいた人たちをすり抜けその場を後にした。
お店に着くと、ほかの人たちも出社していた。
裏口から入って行ったのだが、表の方も忙しいらしく先に来ていた人たちがバタバタとしている。

「どうかした?」
「弓弦さんおはようございます。これ弓弦さんへの花とpresentですよ?」
「まじでっ?(汗)」
「で、どうします?これ。」
「いや、どうするって・・・・・・オーナーどうします?」
「どうするって、弓弦。どうにかしてくれよ。」
「とりあえず、物は事務所の控室に。
 花は、壁際においてもらって・・・・。花束は、どうしよう。」
「次はどうする?」
「次は、花屋が来たらあたしの家の住所を教えてそっちに回してもらおう。」
「そうだな。とりあえず、誰からの花かチェック入れてからまわそう。」

そう話しながら運ばれる花。店内はその送られてきた花で埋まろうとしていた。
弓弦にみんなが話しかける、昨日の救助を。
別に人として当たり前のことだし、自分が一番その近くにいたから
そうしなければと思って、飛び込んで一生懸命に泳いたんだと。
それよりも驚いているのは、弓弦のその時の姿だ。
やっぱり男じゃないんだと。女なんだから、少しは・・・とみんなが笑いながら話す。
人命救助した男らしい弓弦とニュースに映っていた女の弓弦と
あまりにもギャップが激しすぎでついていけないよなと。
お店にいるみんなが一応弓弦は女んだとは認識はしているが
仕事しているときの弓弦はそういうことも感じさせない。
それがいいんだと。男と女としてではなく素直に働く仲間としての
意識がここでのチームワークを作るんだと。
ざわめく開店前の店内では、花に囲まれて話が盛り上がっていたが
それにもまして、ドアの外ではここを贔屓にしている人たちが
集まりはじめていた。今日の夜のゆっくりとした時間を楽しみに。
そして、自分の贔屓にしているバーテンダーと昨日のヒーローの弓弦に会いたくて
集まり始めた。今日の一日が始まる。

「開店しますっ!」

そういって、いつもは一人の黒服を今日は見習いまで足して三人で入口に立つ。

「ようこそ、我が城`mask´へ」

そういう言葉が続く。昨日よりもいつもよりも少し多いご贔屓さんたち。
そんな中に山村男爵が夫人と一緒に来店される。

「原田君を。」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ。」

そういうと弓弦に取り次がれ、呼び出される。

「ようこそ、我が城`mask´へ。山村様」
「今日は記念日でな、家内と来たよ。で、弓弦君。君にこれを。」
「ようこそ奥様。男爵にはいつもお世話になりっぱなしで。」
「いえ、主人がよくあなたのことを話すのよ。次はあなたが主人公だって。」
「そうなんですか?」
「そうみたいよ?そしてこれはあたしたちから。」
「そんなことをされては困ります。」
「弓弦。お前は私たち夫婦の子供みたいなものだ。
 お前の好みがいまいちわからんが、家内が選んだスパークリングワインだ。
 受け取ってくれ。弓弦の活躍に私たちは、鼻が高い。」
「そんな。ありがとうございます。
 でも次はこういうことしてはいけませんよ?」
「わたくしたちの気持ちですよ。持ち帰ってあとでゆっくりとね。」
「どうぞ、あちらの席へ。夫妻の記念日に私もご一緒したいので、さぁ。」
「ありがとう。」
「えぇ。ありがとう。」

そういって、席へ連れて行く。
山村夫妻をもてなしていると、次々とメールや電話が入り
他の席の人までが弓弦と話がしたいと呼ぶ始末。
弓弦のフォローに貴志と真志がついてくれてたために
ある程度の挨拶はできていたが、あちこちで人気である本当に。

「弓弦さん。花屋が来ています。」
「はい。」
「てかびっくりしますよ?」
「なんでさ。」

びっくりもびっくり、花屋が3人で抱えているバラの花。
 
「特注での配達です。お受け取りのサインを。」
「誰から?」
「こちらの白い大きなバラの花束はM`scompany 槙村様です。」
「それと、こちらの赤いバラの花束は、西村様とだけ。」
「もう一つのカラフルなバラの花束はunionMartinの皆様からです。」
「目立つなぁ。とりあえずサインはする。でもこれどうしようか。」
「花屋さん。聞いていい?」
「なんでしょう。」
「花言葉は?」
「白いバラは《あなたと私はお似合いだ》で
 赤いバラは《俺の愛と受け取ってほしい、
 または俺の情熱を受け取ってほいしい》。
 バラの花ことばは一般的には《無邪気なあなた。美しいあなた。》とかですね。」
「どんな顔して彼らに会えばいいんだ?」
「どうしますか?弓弦さん。」
「人の困っているのがそんなに楽しい?」
「そういうわけではないですが、
 そういう状況を作ってしまっている弓弦さんが困ってると
 本当に笑いが止まらないですよ。」
「んもぅ。」
「この花どうしよう。て言うか、事務所の花も。」
「弓弦さんはどうしたい?」
「貴志ぃ。」
「なんですか?弓弦さん。」
「貴志ならどうする?」
「俺なら・・・・・。流れる人並みにどうぞと言って配る!
 俺ら`mask´の人間だし、それこそお店に立ち寄っていただけるなら
 ナイトな雰囲気を醸し出して、配るな。」
「おぉ、それグッドアイディア。やる?」
「いいねぇ。やる!」
「真志、ほかの手の空いている人も呼んで手伝わせろ!」
「yessir!」

そう決めると、弓弦は手の空いているみんなを表に集め
自分がもらった花をすべて持ってこさせた。

「これから、この花たちを行きかう花に配れ!
 配った先は、お前たちの贔屓となるかもしれない。
 自分のこの人と思った人に一輪づつ手配りだ!」
「yessir!」

そういうと、みんな片腕に花束を抱えあちこちに散り配り始めた。
自分をアピールする練習にもなるし、顧客を作るきっかけにもなる。
そんなきっかけを自分事で作れるとはと
弓弦はドアのそばでうれしい顔をして見つめていた。
見る見る間に花は片付いて行った。

「弓弦君、いいのかね?君のための花だぞ?」
「あたしのために贈られたきれいな花たちだけど
 自分のために生かせることができたのであれば花も本望。
 そう思いませんか?オーナー。」
「まぁ、お前が決めたんだ。花を送った人たちも
 粋な使い方をしたと反対はしないだろうが
 きちんとお礼のメールや電話は入れておくように。」
「yessir。オーナー。」

店内に入ると、また静かな時間が戻る。

「弓弦さん、指名入りました。」
「はい、ただいま。」









そうその日は忙しい日となった。そんな`mask´も23時を過ぎると
人が減り少し余裕が出てきたところでその日は閉店した。
その閉店した中で、突然誠がみんなを集め話をすると言いだした。

「今日は早めの閉店となった。それで、この間の話し合いで決まったことを
 改めて話すこととする。次の者、前へ。貴志」
「はい。」
「真志。」
「はい。」
「弓弦。」
「はい。」
「俊哉。」
「はい。」
「このメンバーで恒例の銀座のチャリコンに出ることとなった。
 でだ。来週M`scompanyの社長の山本さんのご厚意で
 この5人は沖縄に行くこととなった。10日間だ。
 帰ってきた二日後本番となるが、きっちりと練習をしてくる。
 単に沖縄旅行ではないので悲しいことだけど
 代表で上がるのでそれだけのことは恥ずかしくないように詰めてくる。
 この10日間、弓弦をはじめ顧客が多いのを連れて行くので
 お店の方が大変になると思うが、その辺のフォローを頼んでいく。
 頑張って切り盛りしてくれ。
 それでだ。
 各自が考えている自分の顧客の氏名を任せたい人を指名してくれないか?」
「大変だ、任される人間は(笑)」
「弓弦。弓弦はお前の顧客は誰に任せる?」
「そうだなぁ。健と峻に願おうかな?お前たちなら大丈夫?」
「大丈夫です。弓弦さんの名を汚さないように頑張ります!」
「健と一緒なら、俺も大丈夫。頑張ります!」
「貴志。お前は?」
「なんだか弓弦さんにいいとこ持ってかれたなぁ。賢一と和希に頼もうかな。OK?」
「貴志さんのいない間努めます!」
「和希と一緒かぁ。頑張んなきゃなぁ。」
「真志は?」
「俺は、航と浩平で。」
「こいつとですか?」
「お前たち仲が悪いが仕事は二人綺麗だもんな。
 俺の客にきれいな仕事を見せてくれよ?」
「俊哉は。」
「俺の客は少ないですが、出来れば・・・・・広夢と雅隆に。」
「全然少なくないじゃないですか。でも広夢とならOKです。」
「誠さん?誠さんの代わりは?」
「弓弦。俺の客は、一ひねりある人ばかりだから
 オーナーが直接相手をするそうだ。(笑)」
「そうなんだ。なら大丈夫だな。」
「ということで、俺ら5人来週からいないので後をよろしく頼むな。
 連絡事項はこれだけだ。顧客に対しての引き継ぎはそれぞれ頼む。
 では、お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした!」

そういってその日は閉店後の話で決定的に秋山さんらとの沖縄行きが
義務付けられたように報告された。

「ねぇ、誠さん。」
「なに?」
「あのさ、なんで?なんであたし?」
「話し合いサボったし(笑)単純にお前は翔太に似てるから(笑)」
「それだけ?」
「なんでだ?」
「でもさ、もしかして大勢の男の中に一人だけ?」
「ん?お前は男でもないが女でもない(笑)弓弦だ。そうだろ?」
「もう。でも一応女なんだから部屋は別なんでしょ?
 話を決めた誠さんだ、きちんとしてくれるんでしょ?」
「仕方ないなぁ。とりあえず、あとでスケジュールのプリントを作って
 明日でも渡すよ。明日朝から山本社長に呼ばれてるのさ。」
「それあたしも一緒じゃだめ?」
「起きれるか?」
「多分大丈夫、どっちにしてもひかりに弁当届けるから行くし。」
「そっか。なら明日13時に。」
「OK。んじゃ、また明日。誠兄さん、good night。」
「あぁ。good night弓弦。そういわれると手が出せないな(笑)」

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