森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 29

空港を10時前に出たので道は案外すいていた。
駐車場まで槙村は弓弦の荷物を持ち歩いていく。
入口の自販機で缶コーヒーを買い二人車のある階まで階段を上がる。
車まで行くと弓弦を助手席に座らせ荷物をその後ろに置き乗り込んだ。
駐車場を出ての道のり、二人何も話さず静かな朝の時間、
何か口に出して話をという気分でもなかったんだろうがこのまま気まずいというのもと思い
槙村が話し始めた何気ない事を。
小さいころの話やお爺ちゃんの話。おばあちゃんが倒れて手が不自由になった時
自分はまだ小さかったけれど、ご飯の炊き方や煮物の作り方
魚のさばき方やいろんなことを教えてもらってできるようになったと。
そんな自分の話で時間が過ぎていく。
槙村が自分に対して気を遣いながら話をしているのが弓弦は何気に嬉しかった。

しかし、そんな槙村の気遣いがうれしい反面西村のことを気にしている弓弦がいる。
沖縄でも、話した電話の向こう側。静かな自分一人だけの部屋だったのか
西村の声だけしか耳に入ってこなかった。
いつものように話す西村だったがどこかさみしげに笑う声が気になってしょうがなかったのだ。
すぐ帰ってくるってわかっているのに毎日見ていた弓弦の顔を
たった数日みなかった、毎日のように聞いていた声を聞けなかった。
それだけであんなの西村の様子がそういう風に弓弦が思えるほど
西村の電話が何か違うように聞こえる。
どうしてだろうと気にする弓弦も、10日間顔を見なかっただけで
自分の中の西村が、なんとなく他の人とは違う位置にいるということを
しっかりと感じていた。
そして、槙村と居る時間と西村と一緒の時間とは別個の問題だということ。
長崎に行ってますます西村の存在が他の人と違う存在になりつつあった。
槙村と笑いながら話をしていても、西村さんなら・・・・とすぐそういう風に思うのだ。
また槙村も弓弦の横顔を見ながら自分の話を聞いているというよりも
何か違うことを考え始めた弓弦を薄々と感じ、それでも自分を向いてくれるよう話し続けている。
その道すがら槙村の車を見かけた圭一郎が電話を入れてきた。

「おい。」
「なんだ。」
「お前今帰ってきたのか?」
「あぁ。」
「お前の車今見えたからさ。」
「おぉ、よくわかったなぁ。」
「で、隣りは?」
「隣?お前誰か乗ってるのが見えたのか?」
「だって俺後ろにいるもん(笑)」
「なんだと!!!!!」

その会話に弓弦が後ろを向くと圭一郎が手を振っている。
それを見た弓弦は爆笑してしまった。
少し先に行ったところでコンビニを見つけたのでそこによる。

「よぉ。おかえりお二人さん。」
「ただいま、圭一郎さん。」
「弓弦さん、何笑ってたんですか?」
「いいタイミングだなぁって。ね、槙村さん。」
「お前さ、いい感じだったのにいっつも邪魔するんだな。」
「なんで?俺そう言うのわかんないし感じねぇし。」
「コーヒー飲む?ちょっとかってくるけど?」
「頼もうかな。俺エメラルドのブラック。」
「んじゃ俺はボスのブラックで。」
「二人ともブラックね?」

そういって車を離れコーヒーをかってくる弓弦。

「ありがとう、弓弦さん。」
「あぁ、ありがとう弓弦。」
「なんで呼び捨てなんだ?」
「周りからは弓弦って呼び捨てされてるから
 そう呼んでもらった方がさん付けよりも気が楽なんだってさ。」
「そうなの?」
「そうね。呼び捨てにされた方が呼ばれるあたしも気が楽。」
「俺もいい?弓弦って。」
「何いまさら言ってるんですか(笑)」
「圭一郎それより、お前どっかに行こうとしてたんじゃねぇのか?」
「そうだったそうだった。翔太の所に行こうとしてたんだ。」
「行ってこいさ。」
「お前は?弓弦さん隣りに乗せてるけど。」
「家まで送っていくだけさ。」
「そっか。ならあとで連絡するから弓弦さんちに俺たちも行っていい?」
「あたし圭一郎さんの携帯知らないけど。」
「槙村にしたらいいだろう?」
「俺お前からの電話取らないことにしようっと。(笑)」
「弓弦さんの携帯教えて(笑)」
「だめだめ。俺のにかけてよ。」
「なんで?なんで弓弦さん直通がだめなん?」
「お前が弓弦を獲物を見るように見てるから(笑)」
「誰がそう言ったのさっ!」
「お前が迎えに行こうとしている翔太だ!(笑)」
「なんだとぉ?ちょい行ってくるから、待っててよ?」
「あははははははは、急げ急げ。」

圭一郎はすぐに車に乗り込み電話をかける。もちろん翔太にだ。
その様子がおかしくて面白くて二人で笑いながらも車に乗り込み
自宅を目指す。

「そこ。その病院の左側の細い路地を入っていくと
 ガレージがあるからそこに入れて。あたしのBMWがあるでしょ。」
「わかった。」

槙村はこんなに狭いところを始めてきたはずなのにするりと入れた。
そのガレージは弓弦のバイクと車としか置いてなかった。

「ここは弓弦専用なの?」
「伯父ぃも伯母ぁも運転はしないし、ひかりも。免許は持ってるんだけどね。」
「そうなんだ。で、弓弦。お邪魔していいの?」
「いいけど。」

弓弦は荷物をおろし、鍵を開け家に入る。
槙村もその後ろをついていくと、古い家なんだろう。
いつ建てられたものだろうか時代を感じさせられるような古い建物。

「弓弦、この家はすごく古いんだな。」
「古いと思わされてるだけさ。」
「あはは。」
「あたしの部屋は、この建物の中から離れにうつったんだ。」
「離れがあるのか?」
「あぁ、使ってないからあそこにうつりたいって
 伯母ぁに話したらいいよって。で、引っ越したんだ。」
「広いな、ひかりちゃんって真面目にお嬢様だったんだ。」
「そうだな。伯父ぃたちの料亭もそこいらの料亭と違うしな。」
「へぇ。」
「ひかりと一緒になれば、玉の輿さ(笑)」
「たとえ冗談でも弓弦がいるのにひかりちゃんとなんて考えないぜ?俺は」
「あはははは。でもそのほうが幸せかもよ?」
「あり得ない。」

そう話しながら廊下を進むと小さい気の開き戸があって、開けると離れが見えた。
離れと言っても一軒家と等しいぐらいの大きさ。

「弓弦、お前のあの城に俺が入ってもいいのか?」
「いいんじゃない?」
「俺が初めて家に上がれるのか(照)」
「訪ねてこられたらみんなあそこでもてなされるさ。
 それも、もうちょっとして時間ができればガレージから直接玄関までを、
 きちんとするからわざわざ家の中を通らずに済むようになる。
 するとみんな集まるんだろうなぁ(笑)」

ドアを開ける。広い古い洋館っぽい建物。
つやつやと光る廊下に部屋から伸びている陽射しがまぶしい。
弓弦が出したスリッパをはきながら、部屋に案内される。
キッチンを通りその横のリビングのソファに座っててと言われ
そこに座ったまま、窓から外を見ている槙村。
窓の外には古風な庭が広がる。きれいに手入れがされているのだけれど。

「はい、ま。あ、えっと渉さん。冷たいもの。」
「ありがとう。ねぇ、この庭。」
「あぁ、伯父ぃがそういうのが好きでいつもいじってる。
 あたしはそういうのは苦手なんだ。」
「でもよく手入れしてある。専属の庭師がいるみたいだ。」
「荷物置いてくる。TVのリモコンそこにあるから。」
「あぁ。」

着替えに部屋に行く弓弦。
槙村はその部屋から見える庭をしばらくの間みていた。
眩しいぐらいの夏の陽射しに庭の緑がまぶしくて、そんな一つのシーンが印象的に見えた。

「お待たせ。で、話って?」
「長崎で話していた病院の話。」
「あぁ。でもいいよ。病院にはいかない。」
「なんでさ。」
「どうしても。」
「俺の同級生夫婦がやっている心療内科があるんだ。
 そこに連れて行きたいと思っているんだけど。」
「あたし行きたくない。」
「なぁ。俺が付いて行くから、ついていってあげるから
 一緒に行こう。俺のかかりつけでもあるのだからさ。」
「どうして?槙村さんがなんでかかりつけなの心療内科なのに。」
「ちょっといろいろあった時期もあるからな。」
「なぁ、弓弦。」
「何?」
「朝の続き・・・・・・。」

そういうと槙村は弓弦を引き寄せた。
引き寄せた力でそのまま床に押さえつけ弓弦の唇をふさいだ。
弓弦は部屋に入れた時からなんとなく。なんとなくだけど、そうなるのかもと。

「渉さん。シャワー浴びよう。」
「一人で?」
「そう一人で。」
「んじゃ弓弦さん先にいきなよ。」
「そうする。」

弓弦はなんとなくそうなるんだと、
一線を越えた後最後まで行くのは遅かれ早かれ来るものだとそう感じてた。
一方弓弦がシャワーを浴びに行く後姿を見ている槙村。
バスルームの場所を確認。
玄関のカギは弓弦がかけたのをきちんと見ていた。
二人しかいないのに、鍵まできちんとということは
成り行きを予感してとのことか?
シャワーも浴びているしと槙村は思っていた。
槙村は服を脱ぎ弓弦のいるバスルームへ。そして声をかける。

「弓弦。」
「何?」
「入っていい?」
「入って来たいの?」
「あぁ。弓弦と一緒に。ひと時も離れたくないから。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「入るよ。」

弓弦は、後ろ向きのままこっちを見ない。ボディシャンプーの泡が
弓弦の全身を隠していた。止めてあるシャワーの湯をだし、
槙村の手のひらで泡を流していく。弓弦は両手で胸を隠すように立っているが
槙村の右手が腰からおなかに回り、古傷を大切なサインのようになぞる。
左手は洗い流された泡の後の素肌を確かめるように弓弦の胸を撫でる。
弓弦はその手がくすぐったいというのと、大切に触ってくれている槙村に、
抵抗ないわけではないがその場に立ち尽くしていた。
少しがたがたと緊張して震え始めている。
すると手を止め槙村はボディーシャンプーを手に取り、弓弦の体を手で洗い始めた。
弓弦の手のひらにもその泡を乗せ、自分の体にその手を這わさせた。
弓弦の顔がすごく色っぽい。女の顔だ。
槙村は弓弦は俺をきちんと受け入れたと感じたのか、泡を流し優しく弓弦にkissをした。
唇をふさぎ、腰に手を回し素肌のままお互いを感じれるように。
槙村の口元が首筋をおちていく。胸元に落ちkissマークが一つ。
おなかの傷まで落ちて行き、その傷を慈しむかのように唇を付ける。

「弓弦?」
「あ、なに?」
「タオルは?」
「外にあるわ。」
「俺にやらせて、水気を取るよ。」
「でも。」
「きちんと。」

そういうと弓弦を立たせたまま水気を取る。自分の体の水気もとる。
鏡に映る二人の体。槙村の男らしい筋肉のついたがっしりとした男の背中。
筋肉と女性の体という均整の取れた弓弦の体。
その姿はやっぱり弓弦を女性として認識せざろうえないからだ。

「弓弦。お前はきれいだな。どうやったらそんなに均整のとれた体になるんだ?」

弓弦の恥ずかしがる顔を気にも留めずに抱きしめる。
さっきの緊張が少しなくなったのかと思うぐらいに震えが止まっている。

「弓弦を抱きしめたい。どうすればいい?」
「どうしたいの?」
「一つになりたい。弓弦と一つに。」
「部屋に行く?」
「あぁ。」

バスルームを出て、部屋は2階になるらしい。
一枚シャツだけを羽織り、弓弦と槙村は2階へ上がる。
明るい2階の部屋は涼しく風が入ってきている。
広い部屋の窓際に弓弦のベッドがあった。そこにもつれ込む二人。
ベッドに倒れ込む。向き合って長いkissをする。
長くとても長く愛しい感情が手に取るように感じれるぐらいに長いkiss。
そしてそのまま縺れ込むと、弓弦の両腕が槙村に絡むように槙村の後ろに回り絡む。
弓弦の胸に槙村の顔が埋まりくすぐったく感じる弓弦。
槙村は弓弦に愛しているとささやく。俺の物になってと、一生大切にすると。
嬉しくくすぐったい言葉をうわごとのように言う。
戸惑うけれど、本当にこれでいいのかを気にする。
自分には西村さんという気にしている人がいるのに
この人に自分を預けてもいいのかと戸惑う。
槙村が中に入ってきた。弓弦は少し緊張した、忘れていた女の部分が
ゆっくりと呼吸をするように息を吹き返す。
嫌な感じはないのだけれど、忘れていた感触を思い出すかのように
ゆっくりと時間が動き始めた。

「弓弦。このまま俺の物になれさ。」

そんな言葉をうつろう意識の中遠くから聞こえている。

「弓弦。愛している。弓弦。愛している。」

ずっとささやかれ、夢の中へいざなわれていく。
本当に愛されているのだろう。おなかが痛くない。
いつもだとひきつって痛くて拒絶するしかないぐらいの痛みが襲うのに
それがない。それがないのに、どうしてなんだろうと、そう思う弓弦。


一つになった弓弦との間に夢を見た。

「弓弦。お前震えてなかったな。」
「震えなかったね。」
「でも、弓弦は俺の弓弦じゃない。」
「体だけのつながりは嫌だけど、でも相性があることを
 槙村さんは教えてくれたのよね。」
「そうかな?」
「でもごめん。一つになっても体を許しても
 槙村さんと友達以上になることを考えられない。」
「そんなこと考えるものなの?
 それは自分の気持ちが感じることでしょう?」
「誰にも言わないで。誰にも。誠さんや西村さんやほかの人に
 一線を越えたことを知られたくない。
 あたしがあたしで居られなくなる。怖いのよ。」
「怖がることはないんじゃないか?
 たまたま、弓弦は俺と知り合い相棒となってくれた。
 他の人よりも、かけがえのない関係を持った、ただそれだけ。」
「ごめん、本当にごめん。それを知られたときの他の人の顔が
 目の前に浮かぶ。怖い。すごく怖い。
 ちゃんと自分自身がしっかりしないと相手にも失礼でしょう。」
「俺はきちんと振り向いてくれるまで何度でも会いに来る。
 何度でも弓弦を一人占めしにくる。俺の弓弦になってくれるまで。」
「答えれるかはわからない。だって・・・・・。」

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