森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 37

チャリティーコンサートが始まった。
アナウンスが流れ、会場は次第に人が集まりにぎやかになってきた。
ステージの前の方にはTVカメラがあり、撮影する人数も異様に多いと気付く人もいたが
パンフレットを見ただけでは一番最初が誰なのかはシークレットとなっていた。
ステージ上での進行する人がいろいろと喋っている。
公園の外を歩く人たちも日曜で多いのか立ち止まる人も出てきた。
公園の椅子は満席状態で初めは誰だとざわざわし始めた。
ピアノが奥から真ん中に移動されて、マイクスタンドが二つ用意。
ステージ横から出てきた西村と弓弦。
もちろんシークレットとなってた始めが西村だとは会場でもびっくりで
公園の外を歩いていた人までが集まった。座ってた人たちも立ち上がり
西村が上がるステージに寄って来たために収拾がつかない。

「えっと。朝早くからありがとう。
 チャリティーなのだけれど、それに賛同した会社の方針で
 俺、西村正弘がトップバッターです。よろしくっ!
 で、2曲だけど心をこめてうたわさせたいただく!
 今日の2曲とも相棒は原田弓弦さんだ。」

そう言って弓弦を紹介し、一つ目を歌う。
そして歌い終えた後、ステージから来た人を見回すと、槙村や
martinのやつらがステージ端にいるのがわかった。

「今日はみんなで集まってくれてありがとう。
 俺の事務所のテントでも販売しているものがあるが
 売り上げは全部チャリティーのため赤十字に寄付となる。
 またこの周りにあるテントでの販売の売り上げもそうです。
 皆さん、このチャリティーへの賛同ありがとうございます。

 そして、一つ目の曲は俺とこの原田さんのためにSDRの
 寛司さんが曲を選んでくれました。

 SDRリーダー落合寛司さんの提供曲《ハナサナイデ》

     夜のしじまに吐息が漏れる
     あなたと会えた喜びを
     あなたに触れられる切なさと
     これが夢でなければいいのに
     これが終わりのない物語だといいのに

     たまにしか会えなくて
     でも
     その時間がとても幸せで
     だから
     もっともっと、この部屋に居たくて
     いろんな事考える
     そして、たくさん話して
     そしてたくさん触れ合う・・・・

     あなたの髪は細くて綺麗
     オレンジブラウンのひかり
     あなたの瞳は
     大きくて吸い込まれてしまいそう
     あなたの唇はちょっと薄い形だけど
     私に優しいkissをくれるの
     細い指の間から
     時間の砂が零れ落ちる・・・


     ハナサナイデ・・・私はここにいるの
     ハナサナイデ・・・ひとりになりたくないの
     この世に限りが来ようとしても
     私の手だけは、ハナサナイデ・・・・

     あなたがそこにいる限り
     私もそのこいたいと思うの
     あなたが私を愛してる限り
     私もそう・・答えるのよ
     限りのないあなたの愛に・・・
     答えたいの・・・・

     ハナサナイデ・・・私はここにいるの
     ハナサナイデ・・・陽が差し込んでも
     また朝が来て夢から覚めても
     私の手だけは、ハナサナイデ・・・・
     ハナサナイデ・・・




 ありがとう!一緒に歌った原田弓弦にも拍手を!
 この原田さん、美人だろ?それもmartinの橋本に似てるしスタイルいいし
 俺のチームの中の紅一点自慢のチームメイト。
 この原田さんだが、今まで俺のアルバムを聞いたことがある人いる?
 そのアルバムには5年前からすべて参加している
 俺のシークレットメンバー。今日今回初めて皆さんの前に顔を出しました。
 アルバムすべて参加はしてたが、名前は出してなかった。
 だけど大切な仲間だ、これを機にと顔出し名前出しで
 俺と一緒のステージに立つこととなった。
 まぁ、彼女は本業があるのでツアーにも特別な時しか参加はできないが
 俺の所でないと彼女は見れないし、歌もすごくうまいダンスも見れない。
 俺ともども彼女をよろしくな!
 で、次は俺の歌。`squallのなかで・・・・・´。」

西村の話が終わると、一呼吸おいて一音一音西村の後ろから響いてきた。
ピアノを引く弓弦。その横で西村が弓弦の方を見て歌い始めた。
それを誠も見ていた。
その歌の歌詞は聞いての通り男が女に対するプロポーズの歌。
それを弓弦に向かって歌っている西村。公開プロポーズのつもりか。
でも会場は、その歌声に喜んで聞いていた。



  `squallのなかで・・・・・´


     バス停で待つ君の傘をさす後ろ姿が
     いつもよりもグラマラスに見えるのは僕だけだろうか
     車を停めて後ろから声をかけようとしたけど
     その後ろ姿に見とれてすっかり声をかけるのを忘れてしまった。
     バスが来て乗るのか乗らないのかと中から見ているのに
     君は僕を待っているからにっこり笑って会釈だけ返す
     そしてまた僕をその場で待ってくれている君の後姿
     時計を見ながらバッグの中から携帯をだし
     なかなか来ない僕にかけるつもりなんだろうか

     ごめんね、いつも君に気を遣わせて
     いつしか、君に甘えてしまって困った僕だ
     なかなか、来ない僕のことを気にして
     ごめんね、後ろにいるのに


     僕の携帯が君の後ろで鳴り響いた
     ふと振り返る君の顔が少し不機嫌に見えて
     僕はその顔を見るのがすごく楽しみなんだよね
     不機嫌な顔そのまま近づいてくる君にふとkissをしてしまった

     驚いた君の顔がそのまま泣き顔になってしまった
     ごめんね驚かすつもりはなかったんだけど見とれてしまってた
     さみしく不安で君が待っているとも思わすに
     僕が泣かせてしまったんだね、本当にごめん

     ごめんね、君に心配させてしまって
     僕から、君に伝えたくて遅れてしまったんだ
     ごめんね、寄り道してて遅れたんだ
     右の手、出してほしいんだ

     泣かないでよ 君のために僕は選んだんだ
     その光る指輪は君のために僕が選んだんだ
     泣かないでよ 僕のすべてをかけて守るから
     僕が君を守るから、泣かないで笑顔を見せて
     これからもずっと君と一緒に歩んで行きたいから
     とびっきりの笑顔を僕に見せてほしいんだ
     
     黙って聞いて これからの時間を君と歩みたい
     優しい今日の雨もきっと祝福してくれている
     うなずく君 そんな君を愛しているんだから
     こんな僕でもいいのかな?ただうなづくだけの君
     僕と一緒に歩んでくれると返事をしてくれているの?
     これからの僕たちにきっと虹がかかるから

     愛しているよこれまでもこれからも
     きっと大切に君を守るから笑顔を見せて
     きっと僕たちの未来に虹がかかるから
     だから結婚しよう・・・・・幸せになろう






     
ステージの横に槙村や秋山、大川や翔太たちがいた。
あれ誰だ?おいおい、あれ弓弦さんじゃんと言いながら驚いた様子で。
ステージが大歓声の中終わると引き揚げてきた西村と弓弦にみんなで声をかける。

「すごい、やばい!惚れなおしたよ。」
「誠さん貴志。ありがとう、次はラストだ。」
「弓弦、お前西村さんとの2曲いい感じだったなぁ。まじに焼けるよ。」
「西村さんとあたしだからできた2曲と恥ずかしくない2曲だったでしょ?」
「おいおい秋山。やっぱり契約は直接はできないのか?」
「できないらしい(笑)
 弓弦さんは今月西村さんの所でマネージメント契約するそうだからな。」
「でも俺たちの所も会社同士で契約するんでしょ?」
「そうみたいだな。おおっぴらに弓弦さんと仕事できるぞ(喜)」
「あぁ、疲れた。まじ疲れた。早く着替えたいっ!」
「着替えんの?もうちょっとそのままいようよ。
 みんなで写真撮ろうよ。めずらしい恰好なんだしさ。」
「おい、貴志!」
「なんだよ、まさか殴りかかるのか?」
「いや、惚れるなよ?あたしに(笑)」
「ったく(笑)」
「ねぇ、恥ずかしいから店に戻ろうよ。超はずい。」
「見せびらかしながら移動しようぜ(笑)」
「西村さん助けてよ。」
「おーい、弓弦を頼むぞ(笑)」

西村は公園でテントを張っている自分の事務所の売店に立ち寄るといい
弓弦たちとはそこで一度離れた。

店に戻る間弓弦を取り巻く秋山や槙村たち。
貴志も俊哉もみんなでわいわい騒ぎながら店に戻っていく。
店に着くと圭一郎やあきらたち店のみんなが弓弦を待っていた。
弓弦が薫に声をかける着替えをしたいと。
すると圭一郎が声をかける。

「もったいない弓弦さん!そのままで記念撮影しようよ。」
「このままで?恥ずかしいから嫌だ!」
「だめだめこっちに来てよ。まず俺とツーショット!」

そういって弓弦の右腕を引っ張り、自分の携帯を渡してとってもらっている。
翔太のカメラが出てきた。するともう一枚と言って横に並ばせる。
ざわめきの中秋山が弓弦に声をかけた。

「弓弦さんもうあきらめな(笑)それこそ思い切ってkissしちゃえ!」

そういうと弓弦も吹っ切れたのか、圭一郎の両頬を両手で引き寄せ
綺麗なキスシーンを見せてくれた。
みんなのどよめきが大きく起こり注目されてしまったが
すごくいい写真となって翔太のカメラに残った。
恥ずかしそうな顔をして離れると、槙村が後ろで危ない視線。
カメラをテーブルに置く翔太の顔をすごく不機嫌。
仕方ないとこれはお祭りの延長戦だからと腹をくくったのか一言。

「槙村さん、やきもち焼かない。翔太君も。カメラ用意してもらって。
 まず槙村さんここ。次翔太君ね。」

そういうと、構えられたカメラの前で槙村とのツーショット。
そして圭一郎と同じように違うキスシーンで一枚。
終わるとすぐに翔太を横に。翔太とのツーショット。
のってきたのか弓弦が翔太を押し倒してのキスシーン。
店の中ではかなりな大騒ぎ。
貴志も圭一郎と同じようなものを2枚撮ってもらい、俊哉も翔太と同じように。
そんな大騒ぎの中オーナーたちはTVのニュースで流れるそれを食い入るように見ていた。
 
「オーナー、どうかしたんですか?」
「あぁ、お帰り弓弦ひと先ずお疲れさん。」
「ありがとうございます。おかげで大盛況でした。」
「一番初めから飛ばすと、あとのみんながきついな(笑)」
「あのぉ。」
「TVか?あの公園とは少し離れているんだが
 銀座のUFJ三菱で強盗があってな、警戒線がはられている。」
「まじですか?チャリコン大丈夫かな。」
「大丈夫だろうとは思うが人が多いしな。」
「西村さんもこっちに呼んだ方がいいかもですね。」
「秋山さん。」
「なんだ?翔太。」
「俺ちょっと西村さんの所に行ってきます。」
「あぁ。一人ではいくな。誰かと一緒に行け。」
「あたしも行く、ちょっと待ってて着替えるから。」
「弓弦さんはここにいたほうがいいんじゃね?」
「だって。」
「とりあえず待ってあげたら?俺も行く。」
「誠が行けば安心か。」
 
 `turururururururu´ 電話が鳴る。

「チャリティー事務局の、宇治原です。」
「あぁ、お疲れさん。」
「小林さんですか?」
「あぁ、宇治原どうしたんだ?」
「銀座の強盗。行方が分からないらしくて警察からチャリティーを
 中止してくれと言われたんですが。」
「もちろん人命優先だ。はっきりと物事が動くまで中止とした方がいいかもな。」
「そうですよね。皆さんそう言われているので中止を伝えます。」
「万が一、万が一だができるのであれば時間を見てまた始めたらいいさ。」
「そうですよね、では一時中断を。」


事務局の電話を切ると小林は、みんなを集めた。

ここから良いというまでここを離れてはいけないと。
もちろん従業員もだが、山本社長の所のタレントも一緒だ。
みんなここから出てはいけないと。
しかし電話をしている小林の後ろをこっそりと部屋を出て
西村の所へ行こうとしている二人がいた。
翔太が、行こうとしてドアに手をかけようとするところへ、
弓弦が一緒に居くと声をかけ、んじゃいっしょにと言いながら
こっそりと出ていくのを俊哉が見ていた。
俊哉が声をかけようとするのもつかの間、こっそりと二人出て行ってしまったのだ。
電話が終わり、みんなを集めると二人がいない。

「弓弦は?弓弦はどうした???」
「秋山君!翔太君はどうしたんだ?二人いないんじゃないか???」
「いませんね?誰か知らないのか?」
「ちょっと前に西村さん呼びに行きましたが?」
「なんだと?誠!呼び戻せ!お前が西村を迎えに行け!」
「はいっ!」

そう言って誠は呼びに店を出た。店の周りは警察官やパトカーが増え
緊急体制をとられている。もちろん、ステージのある公園はたくさんの人が
警察官により退去させられている。アナウンスが流れており、
緊急事態のために中止にするということだった。
テントも片付け始められ、ステージも。
沢山の人が集まっていたチャリコンの会場も、客足が散り散りになっていた。
やっぱりいた。公園の端で西村と弓弦と翔太が話している。
UFJ銀座で強盗が発生し、その犯人が逃げていると。
まだ捕まってないからお店に避難って言ってると伝えている。









その時弓弦たちがいた公園の端の所。
道路に停まっていたワゴンから数人とその周りにいたバイクの男たちが公園に入って来た。
弓弦と西村と翔太と三人でいるところに誠が近づいて行くときだった。




銃声がした。乾いた銃声がその一帯に響いた。

ちょっとした油断に不意を突かれ警察が弓弦たちを離れた瞬間西村が撃たれた。
翔太も流れ弾でけがをした。弓弦が泣き叫ぶ。西村の名前を呼びながら泣き叫ぶ。
男どもは弓弦を黙らせるために思いっきり弓弦の体を殴りつけた。
激しい痛みで声が出ないはずの弓弦がきつい顔をしてそれでも西村の名前を叫ぶ。
西村は大量の自分の血で動けない。
出血のため意識が遠のく中、弓弦と一生懸命叫ぶが届かない。
弓弦の泣き叫ぶ声がそのあたり一帯に響き渡り、その場を緊張状態にしてしまう。

「警官に告ぐ!この女の命を助けてほしければ
 追いかけるな!ついてくるな!一人でもついてきたら
 こいつの頭吹き飛ばして、走る車から落としていくぞ!
 いいな!ついてくるな!追跡したらこいつの命はない!」

そう言って車に弓弦をおしこめ車を発進し逃げた。
連れ去ったやつらは、その場から去っていったがパトカーなどが追いかけると弓弦の命が。
追跡できないパトカーや警官たちがその場で右往左往している。
誠が走って行ったのだけれど、本当に一瞬の出来事で。
スローモーションな場面が繰り広げられたみたいだった。
弓弦は西村の返り血を浴びたままその数人に殴られ連れ去られたのだ。
弓弦は抵抗しながらも、西村の名前を呼び続け泣き叫んでいたが
抵抗するもそのまま車に連れ込まれ誘拐されてしまった。
TV局のカメラもいたため、その一部が映っていて
逃走した車両はすぐに手配されたのだが
人質となった弓弦がどうなっているのかそれがわからない。
救急車が来て、西村と翔太が運ばれる。
誠が呼び続けるが声も届かないまま西村は気を失う。
呼び起こそうとしても西村は起きようともしない。
翔太はパニックになっていて誠に掴み掛り弓弦さんが弓弦さんがとそう叫ぶ。
誠はすぐに携帯でお店に電話を入れた。
もちろん、TV局のカメラマンとか警察の方からすぐに川上社長と
山本社長のもとに連絡が入る。

「西村正弘が強盗に襲われ重傷で運ばれた。
 翔太君も肩にけがをして病院に。同じ病院に行くようなので
 付き添いますから。双方の事務所に連絡を入れてください。
 そして。」
「そしてなんだ!」
「弓弦が。弓弦が連れて行かれた。」
「誠!泣くな!お前は付き添え!弓弦のことはどうにかする。」
 
TVでは速報で流れ始めた。公園と銀行は離れていたが車での逃走。
獲物を探していたのだ。少し離れた公園で物色。三人で話していたのを
良い獲物と思い弓弦を連れ去ったのだ。

「こちら中継は銀座です。銀座のX丁目にあるチャリティーコンサートがあってた
 WW公園です。ただいまUFJ銀座の強盗事件で手配していた強盗が
 この公園で片づけをしていた人たちに発砲。
 歌手でタレントの西村正弘さんが重体。unionMartinの橋本翔太さんが
 発砲された流れ弾で肩を貫通。同じく重傷です。
 一緒に居たと思われる女性が逃亡のために誘拐された模様です。
 警察は映りこんだ車種の特定をし、都内すべてに検問を置くそうです。
 皆さんも、今は気を付けてください。
 また車両を見つけた場合は、あわてず警察に連絡を入れてください。
 犯人を刺激しないようにお願いします。」

そう言ってTV各局は、この強盗誘拐事件をTVやラジオで流した。
店では貴志が俺が俺がと泣いている。
オーナーも、なんで止めなかったのかと悔やんで。

「警察です。先ほどこちらの従業員で・・・・。
 皆さんここに避難されてたんですか。ほかの方々は。
 でしたら、早い。誘拐されたのは誰ですか。」
「うちの従業員で西村正弘の仕事仲間である原田弓弦です。」
「女性ですか?身内は?」
「すぐに連絡を取ります。逃亡の誘拐だと騒げない。」
「そうです、騒いで刺激すると犯人たちはどういうことをしでかすかわからない。
 あくまでも静かに。」
 



「俊哉。泣くな。弓弦は大丈夫だ。」
「あぁ、大丈夫さ。」
「槙村。そう落ち込むな。大丈夫だ弓弦さんは。」
「俺が行っていたらこんな目にはあわずに済んだのに。」
「だからそういう風に思うな。弓弦さんは大丈夫と信じなければ。」
「今は刺激するな。」
「小林オーナー。」
「さぁ、お前たちは今日は仕事は休みだ。表に臨時休業の札だしておけ。」
「オーナー、どうするんですか?」
「お前たちは自宅待機だ。何かあったらすぐに連絡をするから
 きちんと自宅にいておくれ。
 そして秋山さん。その大切なタレントさんたちをきちんと事務所に返したい。
 橋本君が怪我したことは私たちの責任だ。あとで社長の所に顔を出すと伝えてくれ。」
「わかりました。でも小林オーナーどこに行かれるんですか?」
「ちょっとな。すべてを守らんといかんからな。」
「貴志。お前たち全員分のタクシーと、この秋山さんたちのタクシーを。
 私が準備したタクシーだけに乗り込め。秋山さん、本当に申し訳ない。
 君たちの安全を確保するため私が呼ぶタクシーだけに乗車し、事務所に帰ってくれ。」
「わかりました。でも何か普通の強盗とは違うんでしょうか?。」
「これ以上は聞かないでくれ。警察にも内緒で動かねばならないかもしれない。
 君らを巻き添えにするわけにはいかないんだ。」
「では。小林さん。行ってらっしゃい。」
「あぁ、ありがとう。」
「貴志。誠から連絡があったらよろしく頼む。
 お前たちを巻き添えにしたくはない。お前たちは俺の子供たちだからな。」
「わかりました。行ってらっしゃい、父さん。」





小林はこれは強盗なんじゃないと感づいていた。何かを隠すための行動だと。
弓弦を誘拐した車に乗っていたサングラスをかけた男を覚えていたのだ。



「久しぶりだな。片桐さん。」
「おぉ。久しぶりやなぁ。小林の親父。」
「お前ん所のガキ。うちの子を誘拐したな?」
「ありゃ、お前ん所の子か。すまんなぁ。」
「ちょっといたずらが過ぎる子たちでな。」
「返せ。」
「ん?」
「返せさ、片桐。」
「無事に返すさ、あの子は。」
「いや、いまだ。警察が本当のことを嗅ぎ付ける前に返せ。」
「俺も連絡を取ってるところだが、お前の所のには手ぇ出してはいないぜ?」
「いや、怪我させたからなぁ。」
「だったら?」
「お前はどっちが好きだ?」
「なにをだ。」
「警察と大泉の爺さんとどっちが好きだ?」
「小林さんよぉ。お前は親父とちっとも似てねぇなぁ。白と黒を上手に使いやがる。」
「あの女は大泉の爺さんのお気に入りだ。
 まぁいいさ。弓弦に手を出して傷ものにした日には
 白も黒もどっちもがお前を襲うだろうからな。」
「小林さんよ。とりあえずちとまたねぇか。
 あの子たちは女にはてはださねぇ。多分金もって逃げたいだけだ。」
「それだといいがうちの子も威勢がいいのでな。」
「ちょっと待て、入れてみる。」
「あぁ。」




「お前ら、一緒に居る女は?」
「親父、なんだ?」
「お前ら強盗だけじゃなく、誘拐したろ?」
「いや。その。」
「あまり大事にするんじゃねぇ、その女は大泉の女だ。すぐに返せ。
 お前ら金なんだろ?とんずらするなら女は無傷で返せ。
 出ないとお前ら・・・・・。」
「親父。無事に都内出たら返すさ。」
「今どこだ。」
「いわねぇ。親父にでも言わねぇ。」
「とにかくだ。お前ら金もって逃げたいだけなら女は無傷で返せ。」
「わかりやした。でもいつ返すかはわかんねぇ。どこで解放するかもわかんねぇ。」
「解放したら、解放したとだけ俺に電話しな。」
「わかった。わかったけどよぉ、親父。」
「けどでもなんでもねぇ。
 お前らも命欲しいだろ。金でいい思いするには命欲しいもんなぁ。」
「わかったよ。親父。無事に逃げるぜ。だがサツには売るな。
 売ったら女の命は親父の頼みでも聞けね。橋の上からでも落としてやる。」
「誰がサツに売ると言った。女を無事に返したらそれでいい。」







そう言った話をしている片桐の背後には小林が睨みつけるように
座っていた。いらいらした顔は普段見ない黒い感情の顔だった。


「小林さんよ。女は無事に返すそうだ。逃げ切る自信があるらしい。
 でも俺は、世間一般に迷惑かける子供は嫌いだ。
 女を解放したら、そいつらを連れてくるから。
 それからサツに売ってもいいだろう。」
「そうか、無事に帰ってきたらそういうことにしよう。
 ちなみに俺もここからきちんと帰れないと警察が動くこととなる。
 お前の子供たちだけじゃなく、お前自身もお世話になるだろうよ。」
「あははははは。それはいけねぇ。俺は自分が一番かわいいからな。」

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