森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 38

発砲され怪我をし意識が無くなっていく西村と、
大量の血を肩から流しながら弓弦を連れていくなと離せと叫ぶ翔太。
まだ公園に残っていたマスコミのカメラは二人と弓弦の姿犯人の姿を追い続ける。
中継がまだつながっていたTV局のカメラはとにかく追い続ける。
その様子が映し出されその公園も事務所もTV局でも大騒ぎになってしまっていた。
しぶとくカメラは移しまくる。そうしているうちに救急車が数台公園に横付けされ
怪我した人間を手当てしはじめ、重症の二人も乗せられてその場を離れようとしている。
救急車で運ばれた西村と翔太それに付き添う誠。
病院の前には大勢のマスコミやTV局の社員が詰めかけていた。
重体の西村は、運ばれてきた時点ではまだ意識がない。
翔太の方も重傷だが弾が貫通している部分を止血をしていた。
翔太はまだ看護師や先生の呼びかけに返事はしている様子だが、興奮状態のままだ。
誠は二人に付き添って一緒に居るのだが、いろんな取材陣からの質問が
かなりうるさかったのか、邪魔くさくてイライラしてた。
翔太は緊急処置室の方で検査やレントゲンや止血の処置をされている。
その間、誠は翔太のそばにいた。
西村の方がすぐにまっすぐ手術室に運ばれそこで検査して即手術が始まった。

「誠さん、弓弦さんが・・・・ごめんなさい。守れなかった。」
「大丈夫だ。親父がどうにかしてくれると信じている。弓弦は大丈夫だ。
 それよりも、弓弦が帰ってきたとき君が笑顔でいないと心配する。」
「弓弦さんが・・・・。」
「大丈夫。大丈夫だって、君こそ弾は貫通しているんだ。
 止血して、輸血が必要と言われているだろう。お前の血液型は何だ?」
「俺O型です。RH+。」
「俺と一緒じゃん。俺がお前に血をやるから、お前は生きれる。
 お前は大丈夫だ。早く元気にならなきゃ。」
「西村さんは?西村さん!」
「今、手術室だ。弾が腹に残っているらしい。
 それを出さないと次に進まないって今手術中だ。」
「西村さん・・・・・。あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・。」
「泣くな翔太!お前が泣いたらみんな心配する。」




「橋本さん、麻酔かけます。いいですかぁ?」
「ほれ、お前も頑張ってこい。傷をふさげばあとは早い。」
「翔太!翔太!」
「お母さん。なんで?」
「すぐ連絡がきたんだよ、大丈夫か?翔太。」
「僕は大丈夫。大丈夫。大丈夫だから。母さん、行ってくる。」
「頑張るんだよ、翔太。」
「行ってくる、すぐ帰ってくる。大丈夫、大丈夫だかあさん。」

看護師たちと共に手術室に入る。
そのドアの向こうに消えていく姿を母は見ていた。
母の不安そうな様子の横に誠は黙って立っている。
母の口からひと言がんばるんだと母の目からはひとすじの涙が見えた。
すると誠が口を開く。


「自分のお母さんの前では俺とは違うな(笑)」
「あの。翔太に付き添ってここまで?」
「あの場では俺しかいなかったので。
 それに今も西村と原田のことを心配して泣いてた。
 お母さんの顔を見て心配かけまいと。」
「そうなんですか・・・・・。」


遠くで別の看護師が翔太の母に向かって声をかけた。


「あの、橋本さん。手術に関しての承諾書類にサインを。
 とりあえず、目を通してお願いします。」
「はい。翔太の手術は?」
「弾は貫通しているので、それをふさぐだけです。
 幸い骨や肺を傷つけているわけではなく、大きな血管も
 神経なども傷ついてはいないみたいです。
 ただ、肩の筋肉には断裂があり裂傷となっている部分を
 きれいにする手術をします。」
「良かった、本当にそれだけなんですね。」
「えぇ、本当にこれだけで済んで良かったですね。では。」


「良かったですね。」
「えっと・・・・・・あなたは?」
「相原と言います。翔太君が一緒に居た西村と原田を介して
 知り合いになった相原と言います。」
「その場におられたのですか?」
「公園に駆けつけ、話をしていた3人を見つけ駆け寄ろうとしたとき
 発砲され西村さんと翔太君が怪我を。弓弦がさらわれて。」
「大変でしたね。でもここまでそばにいてくれてありがとうございます。
 先ほど山本社長からも連絡があり
 そんなしないうちにこちらに到着するということでした。」
「そうですか。でも貫通してて良かった。
 西村さんは先に手術室に入ったけどどうなるんだろう。」
「無事に手術が終わるといいですねぇ。」
「えぇ、彼は幸せをつかんだばっかりでして。」
「大丈夫です。きっとつかんだ幸せが彼の根性をつかんで引っ張り上げるでしょうから。」



「おい!おい!maskの!」
「あ、川上社長。西村さんはこっちの手術室です。
 看護婦さん!西村さんの所の社長だ。話をお願いする。」
「はい、こちらへ。今手術していますがその説明を。」

「橋本さん。私たちは翔太君のための血を採取されに行きましょう。
 たくさんいるでしょうから、きっと二人分必要ですよ。」
「相原さん、ありがとう。息子のために本当にありがとう。」


川上社長は山本社長と一緒に手術室の横の部屋に案内された。
誠は翔太の母と一緒に、輸血する血液の採取をするための検査の部屋に連れて行かれた。

「まず、西村さんの状態ですが一応今、開腹手術をしておられます。
 まだ腹部中央の横になっている大腸の左側をを突き抜け脾臓と膵臓の間に弾が残っており
 出血がある大腸の穴をふさぎ止血をして、傷ついた脾臓の一部を
 取り出したところです。膵臓で弾が止まっているのでそれを取り出します。
 ただ、横隔膜を突き破っているのですが横隔膜の筋肉に傷がついている感じなんですね。
 弾を取り出した後、傷のついているところを確認し、止血をしたらあとは終わります。
 だた、出血があまりにも多かったため輸血がすごくて。
 もしかしたらうちの病院では足りなくなるかもと今手配しています。」
「命には、命には???」
「大丈夫です。ただあまりの出血で気を失っておられた時間があり
 意識が戻るのに時間がかかるかもと。」
「彼は歌い手だ。後遺症は?それに結婚を控えている。彼の確実な安全を。」
「彼を信じるしかないですが、大量の出血による欠血での意識混濁はなかったし、
 意識を失っていたのですが一時間二時間と長い時間ではないので
 大丈夫でしょう。ここが近かったのが幸いだ。全力を尽くして彼を助けます。
 結婚を控えてというと、奥さまは?ご連絡は?」
「彼女は今、犯人に連れ去られてどこにいるかわからないんです。」
「では連れ去られたのは???」
「無事に帰ってくることを祈らなければ。西村が意識を取り戻したら、
 なんと説明したらいいのかがわからない。」
「そうですか。そのままお伝えしたほうがいいのではないでしょうか?
 とにかく早く戻られるとよいのですが。」
「誠君。とりあえず君は原田の家に行かせるか?」
「自宅で待機ったってどうしようもないだろうし、
 ひかりさんやそのご両親と話しをしてもらわなければ。」
「そうだな。採血が終わったら私を連れてきた運転手に送らせよう。
 おい、菊池。菊池君。」
「はい、なんでしょう川上社長。」
「採血が終わって出てきた相原君を家に責任もって送ってくれないか。
 そしてそのあとは会社に帰ってもいい。
 私は、西村につく。原田君の連絡も待たなければならない。」
「承知いたしました、では相原様わたくしが責任を持って。」

しばらくすると、動きが鈍いが誠が採血が終わり出てきた。
すこしふらふらと真っ直ぐ歩けていない様子。
看護師に脇から支えられて歩いてきた。

「大丈夫か?誠君。」
「えぇ、大丈夫です。いくら母親とはいえ女性からたくさん採血するのは
 無理でしょう。元気な俺の血をとってもらった方が翔太君が元気になるのが早い。
 俺だって健康な体です、少しぐらい無理して採血してもすぐ元通りになる。」
「あまり君も無理はするな。うちの菊池が吉祥の山本さんのうちに
 送り届ける。弓弦の伯父さん伯母さんひかり君に話をしないといけない。
 代わりに君が話をしてくれるか。ひかり君には、落ち着くまで休んでいいと伝えてくれ。」
「川上社長、すみません。きちんと俺が話をします。
 そしてこれが私個人の携帯です。何か気になることがあったり、
 少しでも役に立てることがあったらすぐに電話をください。」
「ありがとう、君は原田君の連絡も待たなければならない。
 西村のためにもよろしく頼む。」

誠は川上社長の運転手の後を付いて行き、ひかりのうちに行くことにした。
弓弦のことを説明しなければならない。そう思い話さなければいけないことを考えていた。

一方M’companyでは、マスコミ関係が押し寄せていた。
強盗があったとまでは速報で知っていたが橋本が巻き添えになっていたとは
秋山たちが厳重に送られてきたことと、TV局の方からの連絡で詳細を知り
山本社長が出かけたことで、事の重大さを社員たちは知ったのだった。
会社の正面の受付にはたくさんの記者たちが駆けつけ
受付嬢たちも慌てふためいてしまったので、警備員たちが外にだし
関係者以外の立ち入りを禁止した。
ひかりは驚きのあまり泣き崩れてしまって。
大川や送られてきたmartinの4人は奥の部屋に行ったが
一緒に居た秋山と槙村はひかりの上司に声をかけ詳細を伝え
ひかりを事務室に呼び戻した。その事件を聞き弓弦がさらわれたことで
泣き崩れるひかりを社の運転手にお願いし家に帰した。
ゆかりたちも黙ったままひかりを見送った。

翔太の手術が終わり、治療室に移された。
麻酔が効いているのかまだ意識は戻ってはいないが、怪我自体は
大丈夫だということでM'companyの会見室での記者会見をすることとなり
社長が戻ってきた。そして開かれた記者会見で
今回のチャリティーコンサートの件の話と、公園で撃たれたときの状況と
西村正弘との交友や原田のことも聞かれたが、プライベートでの交友関係は
知らないと記者会見ではそう話をした。
ただ、連れ去られた原田さんは西村正弘さんが所属する事務所と
マネージメント契約をしているタレントで
今回のunionMartinの今回発売する新しいアルバムを手伝ってもらっているのだと。
我々にもこれは痛いことなのだが、無事に彼女を返してほしいと
マスコミを通して犯人に話しかけた。

マスコミはただの被害者ではないことに少し疑問を覚えたが
翔太の怪我が大丈夫だったこと重体でまだ意識が戻らない西村の事
連れ去られた原田という人物のことを調べなければと戻っていった。
また、西村の所の事務所にも記者たちは集まっていた。
もちろん、連絡があった直後に正面玄関を閉鎖したので騒がしいやからが
社内に侵入されることはなかった。
ただ、秘書らは社長からの連絡で西村がまだ手術中だということ
意識がまだ戻っていないこと、さらわれた原田はうちの会社の人間だということ、
それだけが聞かれたら話していいが西村の結婚の事、
その相手が原田だということそういう関連の話をしてはいけないと厳重に伝えた。
原田とのマネージメント契約はみんな知っていたし
それによってM'companyとの契約もあるのを知っていた。
でもこの緊急事態の中、詳しい話をする余裕もない。
マネージャーの山田も、座ってうつむきただただ祈っているだけだった。




夕方になって西村の手術が終わる。
意識はまだ戻らないが、もう大丈夫だということだった。
川上社長は安心したのかその場で倒れたが、自分でタクシーを呼び
事務所に戻った。まだ、正面玄関には記者たちがつめている。




「夜も遅いがこれから話せることだけ話す。会見場を設置してくれ。」


そういうと、残っていた社員たちで記者会見場を作り正面玄関にいた
記者たちを中に入れた。


「夜遅くまで皆様ご心配いただきそして私の帰りをまっていただき恐縮です。」
「西村正弘さんは大丈夫ですか?」
「命には別状は?」
「大丈夫です。体内に残っていた弾は摘出しましたし
 出血も大量ですごかったのですが何とか持ちました。
 まだ麻酔で眠ってはおりますが、大量出血による
 意識不明での後遺症や怪我の後遺症は残ることはないそうです。」
「無事なんですね?助かったんですね?」
「えぇ、彼は強い。」
「一方連れ去られた原田さんとは?」
「西村の高校の後輩でここ5年ほどシークレットメンバーという形で
 西村のアルバムとかを手伝っていた彼女なんですが
 M'companyさんとの仕事のこともありまして今月彼女と  
 マネージメント契約をしたところだったんです。」
「ということは西村さんと同じタレントさんということですね?」
「えぇ、本業を持っておられるのですが西村を手伝ってくれている縁があり
 今月からわが社のタレントとして契約をしたのですが
 早々にこんなことになってしまって。
 早く彼女を返してほしい。みんな心配している。
 犯人がこれを聞いたり見たりしているのであれば
 原田を早く返してほしい。M'companyさんも心配されているし
 原田の婚約者も心配をしている。」
「あの!」
「なんだね?」
「原田さんって。原田弓弦さんですか?」
「そうだが、なんで知っておられる?」
「先日湘南で人命救助した彼女でしょう?違いますか?」
「そうだ、よく覚えてられましたね。」
「原田さんは学部は違いますが同じ大学だったんで。」
「ほほぉ。あなたは原田君を知っているのか?」
「彼女は高校のとき水泳の全国大会での優勝者だし。
 あたしも水泳をしてたので知っています。えぇ、覚えてます。」
「覚えてくれているのか、原田が聞くと喜ぶな。
 なんにしても、彼女が無事に戻ってきたら何もかもそれからだ。」
「明日の朝の記事でこの強盗誘拐事件が一面を賑やかせますが
 西村正弘さんの無事は大々的に言わせていただきます。」
「あぁ頼む、ファンも気が気じゃないだろうからな。
 もう遅い、私も明日に備えたい。これで終わりにしてくれないか」




そういって会見室を出て行った。
会見室は解散され片づけられていく。朝を迎えるために。

一方、家に帰されたひかり。家に帰りついたすぐに母に泣きついた。

「ひかりどうしたんだい?ひかりっ!」
「弓弦が」
「弓弦がどうかしたのかい?」
「連れ去られちゃった!」
「何がどうしたんだい、ひかり。ちゃんとお話し!」
「今日銀座でチャリティーコンサートがあったでしょう?
 UFJ銀座で強盗があってその強盗犯グループがチャリコンの
 開催されていた公園を襲撃して西村さんを撃ちmartinの
 翔太さんも撃たれたの。そこにいた弓弦が。弓弦が・・・。」
「弓弦がどうしたんだいっ!」
「西村さんの返り血を浴びて泣き叫んでいるところを
 犯人たちが連れ去っちゃったんだって。」
「弓弦が・・・・連れ去られた???」
「お母さん、弓弦が・・・・(泣)」
「大丈夫、やすやすと死んでしまうたまじゃないさ。弓弦はちゃんと帰ってくるよ。
 警察が動いているんだろう?大丈夫。そう思ってないとね。」
「うん、だけど・・・・・。」
「身内が信じないと誰が信じるんだい!」


ひかりはあまりにも興奮して泣きじゃくり話すものだから
そっちの方が気になって母は自分がしっかりしないとと。
すぐに父さん父さんと呼びつけ、弓弦の爺さんに連絡をと。

「お前さん、電話しなきゃ。おんじぃには連絡入れないと。」
「もう小林が入れてるだろう、俺らはただ、弓弦が帰ってくるのを
 待つしかないんだよ。」
「でも、これだけ騒がれているんだ心配してるさ。
 連絡だけは入れようよ。帰ってきたときにも弓弦が電話できるようにさ。」
「そうだなぁ。」

 `kon kon´

「おじさんおばさん!」
「あぁ、誠さん。」
「すまない、目の前でやられた。俺が悪いんだ。」
「誠さん、誠。お前じゃない悪いのはお前じゃない。
 誰もお前を責めない。あれは仕方ないんんだ。」
「すまない、俺の目の前で。」
「これ、落ち着かんかい。」
「まず西村さんは?」
「意識がまだ戻ってないが、手術は終わった。大丈夫だということだ。」
「弓弦がかわいがってた橋本って男ん子は?」
「あいつは弾が貫通しただけだから。」
「ならいい。弓弦が帰ってきたときに心配させられないからさ。」
「俺どうしたらいいんだ?」
「誠さん、ここにいな。ここで弓弦を待ってておくれよ。」
「いいのか?俺が。」
「あたしたちしかいないんだよ、弓弦の家族は。一緒に待とう。」

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