森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 42

警官たちが西村を囲む。大丈夫ですか?と弓弦を抱きしめる西村を
支えるようにして警官たちが囲んだ。
すぐにその場所に誠たちが駆けつける。
誠や貴志、俊哉や健。寝ていたところをみんな電話で起こされた。
それぞれがそれぞれ駆けつけ、河川敷のあちこちに姿を見せ、
誠は西村がタクシーを降りたところから車で移動。
少し離れたところにあった駐車場に車を停め西村の姿を追っていた。
すると、西村の公園から土手の階段を下りていくのが見える。
その先に人影も。弓弦と思われる人影が西村の姿のその向こうに見えた。
警察の早くから出て回ってたのか誠たちよりも早くに西村を見つけ
警察の車が集まるのを遠くから見ていた彼らもそれが見えたのか駆け出し集まってきていた。
西村も誠が駆け寄ってくる姿がわかりここだと声を張り上げる。
ちょうど朝陽を後ろに、駆けつける誠たちを西村は見上げて返事をしようとするが
先に何人もの警官が駆けつけていて警官の陰になって見えなくなってしまった。
弓弦を抱きしめている西村に警官は

 `西村さん。その人は原田弓弦さんですか?´

と、質問をされる。

 `そう、弓弦です。原田です。原田弓弦です。´

そう答えると西村も倒れかかる。弓弦を抱えているせいもあって
西村の体力にも限界があり左脇腹には血がにじんでいる。
倒れる西村が見えた誠は警官たちを押しのけその場から散らし西村と弓弦を離す。

「西村さん、もう大丈夫です。救急車が到着しました。
 乗りましょう。付き添います。俺が付き添います。
 貴志が弓弦に付き添うので大丈夫です。」
「そうか・・・・・・わかった。」

そういうと西村も無理をしていたのか気を失ってしまった。
誠に支えられているところを救急隊員が救急車に運んだ。


「貴志、いいか?同じ病院に運んでもらう手はずだが
 いいな。あっちで会おう。弓弦を頼んだぞ。」
「任せとけよ、兄貴。」

そして西村が気を失った時に、抱きかかえていた弓弦を受け止めた貴志が
もう一台の救急車に弓弦を乗せそれに同乗する。
それぞれに走り出した救急車の行先は西村が入院している病院に向かった。
病院では救急車からの連絡で西村の処置をする治療室と
弓弦の治療の処置室と二つ緊急で用意された。
事件が起こり一週間。車の爆発事故が起きてそれから4日間。
どういう状態でいたのかわからない中、どんな風な処置をするのかを
救急の医師らが話をしていた。
弓弦の乗りこんでいる車の中では、隊員が弓弦の外傷の度合いを
一つ一つ細かく報告をしている。
貴志はその傍らで弓弦の手を握り、必死に声をかけ続けていった。

「まず、先生。頭部外傷から伝えます。見える範囲だけです。」
「あぁ、頼む。」
「右頭頂部、擦過傷。地肌が少しめくれているように見えます。
 左耳の後ろの方に擦過傷。ここは打ち付けているみたいですが
 骨には異常がないみたいです。
 左肩少し腫れあがっていますね。骨折の疑いがあります。
 右鎖骨腫れあがっています。血腫のようなものを確認できます。
 本人の腕で押さえられててわかりませんが呼吸をしているとき
 左側の方が呼吸によるふくらみが足りないみたいです。
 何か骨折か打ち付けての痛みがあるのかわかりませんが
 左胸の部分は要チェックです。
 ジーンズが破けている右大腿骨外側は大量に出血が見えますが
 足自体はまっすぐになっているので骨折はしていないかも。
 左ひざのあたりも出血の確認。
 靴が脱げています。裸足ではありませんが、
 誰かが何か手当をしてくれたのか添え木がしてあります。
 右足です。右足首に添え木をしてあり固定してあります。
 左足の方は大丈夫みたいですよ。
 ただ、今現在原田さんの意識がありません。
 呼吸はしておられるのですが、同乗しておられる友人の呼びかけにも
 意識がなく答えていません。
 脈拍は・・・・えっと・・・・・・上が79下が50。もうすぐ着きますが。」
「とにかく呼吸だけは持たせてくれ。
 こちらの準備も整っている。そのほかにその人の気になるところはないか?」
「意識がないだけで何も。混濁も見られません。」
「よし、そのままだ。」



そうしているうちに救急入口に到着、横付けして弓弦を運びだし
貴志は弓弦の手術の手続きで受付に連れて行かれた。
弓弦は、そのままストレッチャーで手術室につながる処置室に入れられる。


 《では、始める。衣類を取り外傷部分を消毒し綺麗にして。
  そしてその外傷部分で陥没したり柔らかかったり血腫が見られる部分は
  チェック入れておけ。》

 《頭部の方が外傷は多いですが陥没は見当たりません。》
 
 《左眼球の下に青くなっているあざがありますが打ち付けたみたいな感じです》

 《左肩、肩甲骨が割れています。》

 《右側鎖骨のほうですが血腫みたいですね。鎖骨は単純骨折です。》 
 《このままレントゲン撮影に入るぞ。》

 《レントゲンを撮り終えたらすぐ麻酔をかける。麻酔科大丈夫か?》

 《大丈夫だ。いつでも!》

確認できた怪我を一つ一つ確かめ、担当医がそれぞれチェックし始めた。

 《おいこのほとんどの外傷は何かどこからか落とされたのか?》

 《そうみたいだなぁ。骨折箇所をつなぎ合わせて考えると、
  突き落され転がっていき、どこかにぶつかったってところか?》

 《でもこの肋骨はおかしいぞ?転がって折れたしては。
  蹴り上げられたのか?出ないとこっち側には折れないぜ?》

 《そうだなぁ。左眼球下のも殴られないとこうはならない》

 《他は?》

 《左肺は骨が刺さってるんじゃないのか?。》

 《左大腿骨は筋肉が裂傷しているだけだな。つなげる手術になるのか。》

 《ほとんどの外傷は擦過傷だな。まず緊急を要する内臓あたりの骨折や傷から行く。》

 《その手術の間、頭部の擦過傷の手当てをお願いする。》

 《それが終わったら整形の方に移るがいいか?》

 《大丈夫だ。準備は整っている。》

 《どれぐらいの時間で次に行けるか?》

 《一次開腹手術で3時間で終わらせないとまずいだろう。》

 《そのあとでの肩や鎖骨の方はすぐ終わる。ずれて刺さっている訳じゃないから。》

 《そうだな。呼吸はしっかりとしているし、数日この状態で
  生きていたんだろうから脳に異常はないと思われる。
  とりあえず骨折や出血に対しての手術を行う。
  終わってから脳のCTスキャンをかけてみよう。》

そう医師たちの話が終わるとそれぞれの部署につきすぐに手術が始まった。
これから何時間かかるのだろう。弓弦の体力は持つのだろうか。
そして西村は気を失っていたが脇腹の止血を済ませ部屋に連れて行かれると
しばらくして意識が戻った。そばには川上社長が付き添っていた。

「お前、びっくりさせるな。」
「すみません。弓弦からの着信があってびっくりして。」
「お前な、自分の状態を忘れてただろう?無茶して。」
「自分の事よりも弓弦の声が耳に入った時、何もかも忘れてしまいましたからね。」
「これでお前も安心しただろう。少し眠らんか。弓弦さんにはみんながいる。」
「大丈夫ですかね、手術。」
「お前もここの医師に助けられただろう?
 それだけの腕のある医師がそろっている病院だ。信じることだな。」
「そうですね。ただ、俺が見つけた時に気を失ってそのまま・・・。」
「先ほどの話だと、意識はまだないし呼吸が弱い。
 血圧も低いが安定はしていると。心臓がちゃんと動いているから
 あとは外因性ショックと出血がかなりあって血が足りていないだけだろうと
 そういうことを言ってた。
 内臓の方への傷も、肺に肋骨が刺さっているだけで
 あとは殴られたか蹴られての怪我だろうからそれは
 これから様子を見る部分だと。」
「弓弦はいったいあれからどんな目にあったんだ。」
「とりあえず、脳には異常がないらしい。手術が終わって、
 体の方が落ち着いたら改めて頭の先から足の先まで検査するということだそうだ。」
「そうですか・・・・・。」
「早く気が付くといいな。」
「社長。手術が終わったら、俺をその先生たちの所へ連れてってください。
 詳しく聞きたい。弓弦の家族として。弓弦の夫として。」
「大丈夫か?ちと急ぎ過ぎではないか?」
「そうですか?」
「さぁ終わるまでは時間がある。少し寝ろ。」
「すみません、少しだけ。弓弦の手術が終わったら教えてください。」
「あぁちゃんと起こすよ。」





弓弦の手術が始まったころ、ひかりも伯父も伯母もみんな手術室の前に集まってきた。
貴志が付き添ってきていて、手術室の前にいたのですぐにその場所がわかった。
病院の入り口にはマスコミが押し寄せ始めた。
身内だけを病院施設内に入れる確認をするのが大変で
そこ病院に通院する患者も、受付をするための出入りも制限されてしまって
不便な状況になっていた、
警察も、手術室の前にいて家族の話や仕事仲間の話で原田を確認し
そして西村の部屋にも行き、原田弓弦が見つかった経緯をと
寝ていた西村を起こし、騒ぎ立てる。

別に起きていたしと、社長や看護師たちが静かにしてと警察を追い出そうとするのをとめ
周りがあるから静かにしてくれさえすれば、見つかった経緯を話すと
言う西村だった。

誠を呼び、こういうことがあったのだと説明。
知っている範囲での協力しかできないがと、自分の携帯と
貴志があずかっている弓弦の携帯とを警察に渡した。




弓弦の携帯にはいくつもの指紋が残されていた。
それの検証をするそうで西村の携帯はすぐに返してくれたが
弓弦の携帯はそのまま持って行かれた。




しばらくして、TVでは川上社長が映っている。
いろんなことでのインタビュー。大変なことになったがと。
でも無事に帰ってきたと喜んでいる様子がありありと出ている。
手術のことも隠さずにしゃべる社長。そんなことまで喋るのかと
西村は見ててハラハラしていた。

そして誠や貴志や健たちは、まだ弓弦の終わらない手術に立ち会っている。
ひかりは仕事があると、一度その場を離れて仕事へ行ったが
ひかりの両親は、そのまま残っていた。
一度目の手術が終わったのはお昼過ぎ。手術室の前にいた
伯父と伯母、誠、貴志。終わったとの連絡を受け病室を出てきた西村。
終わった後の話をと呼ばれたのだ。





「一応報告を。」
「弓弦は?命には?後遺症とかは?」
「そうあわてないで。大丈夫です。
 まず、怪我の方ですが裂傷や擦過傷・打撲・骨折。
 血腫があって神経を圧迫したりしてましたがそれぞれにきちんと
 手術で取り除いたりしてできることはしました。
 大きかったのは蹴られたか殴られたかで肋骨が折れていて
 それが左肺に突き刺さっていたために呼吸が苦しかったんだと
 思われますが突き刺さった骨をどけて肺の破れていたところをきちんとしました。
 あと左の肩甲骨が割れていまして、これはどこかに打ち付けたのでしょう。
 きちんとした場所に戻しプレートでつなぎました。
 右鎖骨に骨折箇所があり、それが血腫を形成して負ったために
 腕の神経を圧迫しておりましたのでそれも排除。
 右足首の一部がに粉々に砕けて折れてました。
 残念ですが、これには時間がかかります。細かく砕けた骨は取り除きました。
 そして人工骨を入れるために今回の手術で固定するだけの物を入れました。
 ここは歩けなくなる可能性があるので、体調を見計らって早めに
 人工骨を取り付ける手術をします。
 しかしどなたが助けたのでしょう、添え木がしてありました。
 で、その骨折箇所にたまっていた血が普通は圧迫していたいはずなのですが
 出血してたまった血を抜いてあり、傷もきちんと消毒してありました。
 そして骨折具合から見ての固定をきちんとしてあったために
 これだけの事で終わったんだと思われます。
 まだ麻酔をしているせいでもありますがご本人の意識が戻ってきておりません。
 これから少し時間をおいて、CTスキャンかかります。
 呼吸と心臓の動きからすると、脳への損傷は考えられません。
 ただ、体調や怪我の具合からすると
 この2,3日での出血はかなりあったものと思われます。
 そして血液検査をし、破けていた肺や内臓の様子からすると
 10日間食べていない様子ですね。
 明日以降でも、胃の中を検査しますが体力の消耗が激しかったのでしょう。
 肝臓などの機能が冬眠状態なのかというぐらいに動きがよくありません。
 まるでいわゆるすべての機能が低下しているんです。
 悪い意味での機能低下ではないと信じていますが。
 今日はスキャンまで終わったら集中治療室に移ります。
 詳しいことがわかれば その都度ご報告いたしますから
 ご家族の方はあまり心配して詰めておかれなくても大丈夫です。」
「本当ですか?弓弦は・・・・弓弦は・・・・・」
「えぇ、大丈夫です。きっと助かりますよ。」
「良かったなぁ、母さん。」
「えぇ、えぇ。この子は運がいいわ。」
「あとは戻っていいですよ。で、この原田さん自身のご家族は?」
「私たち夫婦と誠と西村さんと。」
「俺の妻になる女性です。
 伯母さんたちは疲れているでしょうから帰られても大丈夫です。
 俺が大丈夫なんですから先生、何かわかれば俺に行ってください。」
「あぁ、そうだな。そうしたらいいかも。
 皆さんも原田さんが見つかるまでの間いろいろとあったでしょう。
 原田さんが気が付いた時に笑顔でお帰りと言ってあげれるように
 一度帰宅して元気になって会いに来てください。」
「ありがとうございます。本当に。」



一度目の手術が終わり、次の検査までの間で話をされたのだけれど
検査はその話の後すぐに始まった。
CTスキャンでの検査結果では、運が良かったのか脳の損傷は見られなかった。
内臓内部の方でも出血した部分が映し出されているが
大きく破裂しての出血たまりとかは見当たらず、手術するまでもない
小さい出血の跡だけが写っていた。
その時に一人の医師が気づいたのだが、原田の子宮疾患を指摘した。

「この人は前に何か手術をしていますね。
 ほら、ここ。左の卵巣がないことと、正面から見て左側。
 子宮の形が少しへこぼってませんか?」
「そうだなぁ。明らかに手術後だな。気が付いたら聞いてみるか。」
「でもこの手術はきれいですね。この人のことを思って手術したと
 ありありとわかる。癌あるいは腫瘍だったんでしょうね。」
「だなぁ。でも子宮の壁をとり内壁ぎりぎりまでをとり、
 妊娠した時に無事にそこにきちんととまり妊娠できるような
 そんな未来を考えて手術してある。きれいな手さばきだ。
 いったい誰がそんな手術をしたんだろうな。」
「そういえばこの原田さんのおなかには15cmほどの傷がありましたね。」
「その傷から考えると、かなり若いときに何かあったのでしょう。
 だから丁寧に未来を考えてのこの手術跡なんでしょうね。
 すごいその一言ですよ。医者としてその人は素晴らしい人だ。」
「まぁ、本人が話してくれるようだったら少し話をしてみたいねぇ。」

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