森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 44

「おいおい、ライバルはライバルらしくって、まだ槙村君と取り合わなきゃいけないのか?(笑)」
「今なら大丈夫っすか?西村さんから弓弦を取り上げても(笑)」
「駄目だろ?けが人の俺にとどめを刺すようなことしたらさ(笑)」
「西村さんの怪我は?もう大丈夫そうに見えるけど。」
「もう出血も見えないそうだからしばらくしたら退院だと思うけど。」
「でも西村さんの退院はすぐでも弓弦はしばらく入院だもんなぁ。」
「槙村君?」
「へへ(笑)」
「俺がいないときに部屋に泊まりこもうと思ってる?」
「西村さんはエスパーか(笑)」
「槙村君だって仕事だろ?」
「必ずしも西村さんと同じ日が仕事ってわけじゃないし(笑)」
「社長に行って槙村君の仕事だけ俺と一緒にって話して詰めようかな(笑)」
「えぇ?ライバルと一緒に仕事っすか?そりゃ勘弁だ(笑)」
「なぁ、それはそれとしてさ。」
「なんっすか?」
「一緒に弓弦の所へ行こうよ。」
「今からっすか?」
「少しだけだ、少しだけ。弓弦に槙村君の元気を少し分けてあげてよ。」
「俺のでいいんっすか?元気を分けるとともに洗脳するかもしれませよ?(笑)」
「できるならな(笑)んっと。車いす車いすっと。」
「西村さんだってまだ動けないんじゃないですか。無理しないようにしないと。」
「車いすに乗れば後は大丈夫さ。さぁ行こうか。」

そういって自室を二人で後にする。エレベーターで階を移動し弓弦のいる部屋に行く。
部屋の前まで来ると少し戸が開いていた。ちょうど看護師の見回りの時間だったようだ。

「あら、西村さん。お客様?」
「弓弦のお見舞いに来られたんだが弓弦はまだ意識ないからさ、俺が一緒に。」
「でも意識なくってもだいぶ会悪露は良くなってこられた気がしますよ?」
「そうだなぁ・・・・。」
「槙村君、弓弦。」
「なんだか・・・・・・涙が出るな、あの弓弦の姿。」
「包帯がぐるぐる巻かれて、白い肌が消えるように白い。
 それに返事もないし、ただただ周りの弓弦を監視する機材が
 数値だけを見せていてさ、生きているのか生かされているのかが
 意識がない以上何もわからない。」
「俺まだ弓弦に会わなかった方が良かったのか?」
「いや、きちんと弓弦を見てほしい。あれも弓弦さ。意識がないだけで
 生きようとしている姿さ。そう信じてる。」
「強いな。そこまでの関係に俺割り込めるのか?」
「割り込めないぐらいにしておくさ。さらえない様に。」
「でも、ほんと?かなり顔色は良くなってきた方なのか?」
「あぁ。かなりな。ここ数日は手を握ると握り返す。返事をするように
 握り返したりすることもあるんだ。無意識なんだろうけれどさ。」
「本当に?」
「あぁ、こっちの手は計測しているから無理だけど、
 点滴をしているこっちの手は大丈夫、握手してみ?」
「いいのか?力入れさせたり動かせたりするのいけないんじゃないのか?」
「大丈夫さ、ここ何日かは俺と誠さんで握手して握り返すのを確認してるし。」
「こっちの手を?」
「あぁ、握ってみてよ。」
「・・・・・・・・・・・!!」
「な?」
「本当だ、すがりつくみたいに握り返す。握り返してるじゃないですか!」
「だろ?だから大丈夫。意識が戻るのも時間の問題さ。弓弦は生き延びたんだ。」
「・・・・・・弓弦。早く気が付くといいな。西村さん、俺弓弦と握手できた。
 これからもずっとずっと仲のいい西村さんの次に頼れる俺でいれるように
 よろしくって願って握った。
 そしたら力は弱いけど返事するように握り返した。嬉しいな。
 こんなにうれしい返事はないさ。なんだか俺泣けてきた。」
「おいおい、ここで泣くなよ?」
「本当は弓弦、意識が戻ってるんじゃないのか?」
「それはないと思うぞ?」
「そんな気がしたんだけどなぁ。」
「まぁ、しばらくだ。」
「今日は来てよかった。西村さんありがとう。
 本当にありがとう。また仕事の休みの時にでも来るよ。
「あぁ、待ってるよ。いつでも来いよ。」
「今日はこれで帰る、次はお見舞いに甘いもの沢山持ってくるから。」
「どこかロケで飛んだらお土産もな(笑)」
「任せておけ(笑)んじゃ、また。」
「あぁ、またなぁ」

そうやって二人は弓弦の部屋から槙村は自宅に西村は病室に分かれて帰った。
槙村は弓弦のその温かい手に握り返された感触を忘れないように。
西村はゆずrの意識が戻るのが近いとそう感じながら。

槙村が帰っていったその日の夜。夕食が終わりゆっくりしている西村は
ふと時計を見上げまだ時間があるとおもい、車いすに移り弓弦の部屋に行った。
なんとなく槙村と一緒に来た昼間の弓弦の様子で少し気になっていたのだ。
昼間と変わりない寝姿に真白い顔をした弓弦。なかなか血色は戻ってこない様子。
そばに行くとありありとわかる血色のなさ。
担当医が西村がいることに気づき部屋に入ってきた。
 
「こんばんわ、西村さん。」
「あぁ、こんばんわ。」
「西村さんがそばにいるのに、彼女は気が付きませんね。」
「ですね、でもゆっくりでいいんです。急いで気が付いて
 体調が悪くなるのはごめんですし。」
「でも、見てください。頭の上の機器の画面。
 脈拍が正常なところまで上がってきています。
 血圧もまだ低いですが低血圧の人ぐらいまでには戻っています。
 本当はもう意識が戻ってもいいんですがね。」
「俺は生きて帰ってきてくれただけでいい。
 見つけたときに、やっと会えたと言葉を発したんですから
 俺は、意識の戻るのを信じています。」
「そうですね。そうだったですね。」
「それに先生気づいてましたか?」
「何を?」
「こうやって手を握ると、返事をするように少し指が動くんです。」
「あぁ、それは僕も気づきました。動けないだけで何か言いたげに
 指が少しだけ動くんですよね。」

西村は弓弦の横に行って担当医の前で左手をだし、握りしめる。
すると西村がびっくりして手をひっこめた。
西村が何気に握った左手。西村がベッドから引っ張り出し、握るとすぐに手が動く。
西村が「え?」と思い手を離すと、みんなが見ている前で弓弦の左手が
何かを探すように一瞬動いたのだ。
担当医もその弓弦の手の動きを見て、意識が戻ると思い
他の先生たちや看護師たちを集めた。

「緊急だ!原田さんの手の動きが強く見える。ほかの先生方を呼んで!」
「西村さん、そこにいてください。手が動く、握り返す
 西村さんの声で原田さんにしっかりと呼びかけてください。
 呼び続けてください。」
「弓弦、おい。弓弦、聞こえているのか?」
「先生!早く!数値が!数値が動いているの!脈拍が上がっている。」
「弓弦、おい!弓弦!聞こえているのか?俺だ、正弘だ!」

すると握り返す力が強くなる。西村の手をつかむとがたがたと震えるが
一生懸命にその握った手を握りしめる。
 
「弓弦?」

するとすっと力が手から抜けてガクッと落ちる。
西村はびっくりしてつかみ直し、強く握る。

「弓弦、どうした。弓弦!」
「西村さんちょっと離れて。」

車いすごと後ろにひざられ、弓弦の周りを担当医や看護師や
関係者が弓弦を囲む。周りにある機材の画面をチェック。
脈拍の数値がいったん消える。
スーッと一本の線になったのが、コトン・・・・・コトン・・・・・と脈を打ち始めた。
心拍数が戻った。少し早く打っているようにも見えるが
きちんと戻ってきた。

もう一度西村に手を握らせ声をかけさせる。

声をかけられると、弓弦の顔がゆがむ。
きついのか痛みがつらいのか、つらそうな顔。






「弓弦?」





握り返す左手。弓弦の目が開く。そして西村の顔を見る。少し痛みに歪んだ顔だ。



「弓弦、起きた?」









「に・・・・・し・・・む・・・・・ら・・・・さん?」
「あぁ、俺だよ。気が付いたか?」
「西村さん・・・・・・会えた。・・・・・・・・あたし死ぬかと思った。」
「泣くなよ。お前が泣くと俺も泣いちまうじゃねぇか。」
「良かったですね、気が付かれた。
 原田さん、かなりな出血でしたね。でもよく耐えられました。」
「生きて帰れと言われたんです。」
「まだゆっくりといいよ。明日朝から検査をしよう。」
「あたし・・・・・。」
「弓弦、俺が抱き起したのを覚えているか?」
「えぇ。鉄橋の下の公園で、やっと会えてうれしかった。」
「そのあとに気を失って、病院に運ばれたが今の今まで
 意識がなかった。こんなに不安にさせて。」
「ごめんね。」
「弓弦、今日は一緒に居よう。ねぇ、先生。一緒に居たいんだけど。」
「そうですね、西村さん。ここに来ますか?」
「えぇ、ここに。俺のベッドをここに?」
「そうですね、原田さんは動けませんしまだ明日にならなければ
 ここの部屋から移動できるかどうかわかりませんし。
 とりあえず、西村さんのベッドをこちらに移動させましょうか。」
「ありがとうございます。荷物はそのままでもいいですか?」
「もちろん、貴重品はこちらに自分でお持ちくださいね。」
「ちょっと行ってくる。」





西村はうれしくてうれしくて叫んで周りたいぐらいに喜んでいた。
自分の体もまだ痛々しいし、多分に痛いはず。なのにそれよりも
弓弦の意識が戻り話ができたことがうれしくて急いで荷物を取りに行った。





ベッドを運んでもらい、その後ろを西村が車いすで着いていく。
弓弦の横に置かれ手の届くようにおかれた。



「お休みなさい」
「ありがとう、お休みなさい。」


そう言って二人以外はその部屋を出て行った。





「弓弦。」
「なに?」
「痛いか?」
「ちょっとね。でも、痛むことよりも横にいてくれることがうれしくて
 痛いことを忘れてしまう。」
「なぁ、弓弦。本当に俺と一緒になってくれるのか?
 弓弦、優しいからその優しさだけで返事をしたんじゃないのか?」
「違うわ。絶対違う。そうでないと、助けての電話はあなたにかけない。」
「そっか。」
「ねぇ、手をつないで。」
「ん?」
「手をつなぎたい。」
「眠たいか?」
「まだ、眠くはないけど。」
「消灯は21時だ。今はまだ20時だから明るいが時間が来ると容赦なく消される。
 だけど、俺もうれしさのあまり眠くないんだよなぁ。」
「あたしが意識取り戻したのまだ誰にも知らせてないの?」
「あぁ。まだ誰にも。」
「今晩だけは静かに一緒に居たい気分なんだけど。」
「んじゃ、明日の朝にしよう。看護師さんたちにも担当医の人にも
 黙っててもらおう。今日は俺も静かに二人で居たいから。」

少しすると看護師と担当医が部屋に来た。
やはり原田の意識が戻ったことをすぐに知らせるように
警察からも言われていますが、どうしますかと。
あまりそうせっつかれても気が進まないんだけどと。

「西村さん、原田さん。一応川上社長からも小林様からも
 相原さんや槙村さんという方からも、原田さんの意識が戻ったら
 すぐに連絡をと言われていますがどうしますか?」
「どうしますかって、今の時間はえっと・・・・。」
「もうすぐ21時です消灯の時間なので面会時間は過ぎますが
 原田さんのお身内だけはとは思うんですけど。」
「いや、明日にしてください。そうしないと大変なことになる。
 すぐに今言われた名前の人たちはつながっているので
 一人に連絡するとみんなに連絡が回る。」
「そうだなぁ。ここに二人部屋を同じにしてもらってると余計に来るかもな。
 先生、こいつの争奪戦はまだ籍を入れてないので続いているんですよ。
 困ったことに(笑)」
「争奪戦ですか。それはそれは(笑)
 とりあえず、明日の朝に連絡を入れますか。
 自分で連絡を取りますか?それとも・・・・・・。」
「俺が一人ひとり電話かけます。ここでかけても構わないでしょ?」
「電磁波の影響を受ける機材はさっきすべて排除しましたから
 携帯掛けられてもかまいません。しかし周りの部屋もあるので・・・・・・・・・・。
 あぁ、そうだ。明日は朝から原田さんの検査が入ります。
 なのでその検査中はご自分の部屋に戻るでしょうから
 そちらでかけていただけると助かりますが。」
「そうですね。んじゃ、それまでは静かにさせていただきます。」
「検査が終わり状況次第では二人部屋に移ることとなります。」
「わかりました。では、でもそれまで待てるかなぁ。」
「なんだか誰もいなくなった時点で電話しまくりそうな感じだね。」

そう冗談を交えて笑いあう原田と並んだ西村の幸せな顔を
看護師たちはうらやましそうに見ながらその部屋を後にした。
ただ、今はいいかもしれないが意識が戻ったばかりの弓弦なのだから
何か少しでもおかしいと気付くところがあればすぐに呼んで下さいとのこと。
西村は、笑顔でわかりましたと返事をし弓弦を眺めていた。
まだきついのか、目を閉じている弓弦。つなぐ手はしっかりと握りしめられ
西村も弓弦がそばで息をしていることに嬉しさをかみしめ横顔を見つめていた。

「なぁ、弓弦。」
「なに?どうかしたの?」
「体は?痛くないか?」
「痛い。痛いんだけど、でも生きて戻ってきた証。うれしい痛みよ。」
「でも、お前自分の体知ってるか?」
「何を?」
「お前の左胸。ろっ骨が折れてて肺に刺さってたって。」
「蹴り上げられたからだ。」
「右足首の骨折。人工骨を入れないとダメだって。」
「突き飛ばされたとき、多分ぶつけたんだ。」
「左側の肩甲骨、真っ二つに割れててプレートを入れてつなげてある。」
「まるでロボット(笑)」
「右の鎖骨もぽっきりと」
「折れているんだ。だから動けなかったんだ。」
「弓弦?覚えているのか?連れ去られてからの事。」
「えぇ、気を失っている時間以外は。すべてとはいかないけど覚えている。」
「犯人たちもか?」
「みんな顔を見せてはいなかった。車の中でも隠れ家でも。
 で、外も見れなくて自分がどこにいるかはわからなかったけど」
「覚えていることを警察にすべて話せるだけ話せるか?」
「えぇ、検査が終わって体調を見てなんでしょう?」
「そう。なんだか弓弦が心配で。」
「心配し過ぎよ。」
「槙村君から聞いた。槙村君の知り合いの心療内科に連れて行きたいと。」
「余計なことを・・・・。」
「なぁ、弓弦。この際、なんでも全部はけ。
 俺は何も驚かない。俺の妻になるんだ、何にも驚かない。」
「すべてってすべては話せないかもしれない。だけど、
 このままではだめだって自分でもわかっているのよ。
 わかっているからそのことにだけは少し時間を頂戴。」
「わかった。弓弦、眠たいか?」
「えぇ、痛み止めを使われているのね。少し眠くなってきた。」
「んじゃ、寝よう。このまま手を握っていてもいい?」








「・・・・・・・zzz。」





明日の朝一番での弓弦の検査。大丈夫だろうか。
意識が戻ったのは、何かしら異変があって最後の意識だったのかと
西村は心配でして寝れなかった。
黙って弓弦の方に体を向けて、青白い弓弦の横顔を見ていた。
弓弦の寝息だけが部屋に響く。
夜中に見回りの看護師が来る。寝つけないと起きている西村に
いびきをかいていないかとか、妙に動いていないか
おかしい動きがあれば、呼んで下さいねと言い離れた。
25時をまわった。`mask´の閉店時間だ。
西村は、弓弦が寝着いて大丈夫なことを確認し、携帯を持ち部屋の外に出る。
廊下には誰もいないのを確認し、部屋のドアを開け放ったままで。
弓弦の姿を見れる位置に車いすで移動。









 `tururururururu.turururururururu.´

 `tururururururu.turururururururu.´

「はい、誠です。」
「誠さん?夜分にすまない、西村です。」
「あぁ、どうしたんですか?こんな夜中に。」
「明日弓弦に会えますか?」
「会えますかって……????」
「誠さんや皆さんに早くって思って。朝一で検査が入りますからその前がいい。」
「もしかして弓弦が、意識が・・・・・・」
「えぇ、20時前でした。今はまた薬で眠りについていますが
 しっかりと会話ができます。大丈夫みたいです。」
「ほんとに?本当にですか?」
「誠さん、そこには誰がいますか?オーナーや皆さんいるんですか?」
「あぁ、みんないるさ。ちょっと待って。

  《おい!おい!今連絡だ!連絡が入った!
   弓弦が気が付いた!意識が戻ったそうだ!》
  《本当っすか?誰から電話?》
  《西村さんからだ。》
  《変わって!誠さん代わって!》
 
 貴志です!西村さん本当に?弓弦さん意識戻ったって。」
「あぁ、本当。今は寝ている。まだ体中の痛みがすごいらしいが
 鎮痛薬の投与で寝ている。」
「西村さん、連絡ありがとう。やったーーーー!」
「すまない、うちの連中は弓弦信仰が厚いから。」
「いや誰だって嬉しいさ。誠さん、これからゆっくり休んで。
 で、明日朝一検査の前に。」
「あぁ、これからひかりのうちに帰るからひかりたちにも伝えないと。」
「あぁ、お願いする。お願いしたい。んじゃ。」

そう誠に連絡を入れたら西村も安心したのか眠気が襲い始めた。
このまま寝てしまうとまずいなと思い自分のベッドに入り
また弓弦の手を握りしめて眠りについた。

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