森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 50

「お爺ちゃん。その入ったばかりのあたしの面倒を見てくれたのが誠さんだった。
 それは言ったよね。」
「あぁ、お前は難しい顔をして話をしたなぁ。
 女のくせにって周りはなかなか認めてくれないのに
 誠さんって人だけは自分に優しいんだって。」
「弓弦はそのころから気性が激しかったよな。
 あれいつだったっけ?先輩になじられたのが気に食わなくって
 俺が止めるのを振り切って、殴りかかって行って
 お互いに血だらけになってみんなで止めたが止めたやつらもけがをして。
 あれ結局お前が、やつをアッパーくらわせて気絶させたんだよな。」
「あはは。そんなことまではっきり覚えてるんだ。
 あれは無我夢中で。両親や今までのことを言われて頭に来て
 その上に誠さんに甘やかされてって言われて切れちゃったんだ。
 でもさ、オーナーから怒られた。お前は女なんだから
 あんなことをしてはいけない。あれが店の外ならお前は豚箱行きだぞって。」
「無茶ばかりしてきてたんだなぁ。弓弦。」
「でも、そんなことがあって弓弦は一目置かれるようになったある日
 弓弦がコンクールで優勝した時にスタンダードの部で優勝した
 貴志が入ってきたんだよな。で、弓弦は覚えてなかったんだろうが
 貴志はすぐ気が付いたんだと。で、弓弦が先輩なわけだろ?
 で、あのけんかの後だから弓弦信仰が始まったころでさ
 弓弦の下につきたいとオーナーに直談判して弓弦の下についたんだ。」
「そうだったんだ、しらなかった。」
「そういう環境にいてさ、俺つらかったなぁ。
 弓弦が兄弟とも何とも知らない時期だろ?
 貴志が聞くんだ《原田さんと相原さんとはどんな関係?》って
 それ答えるのが苦痛でさ。一度《男と女だ》ってつい言っちゃったんだ。
 するとさ、殴られた。ライバルだって、殴られた。」
「あははははは。誠さんも兄弟って知るまではその争奪戦の中の一人に紛れてたんだ。」 
「そうともいうな。でもさ、弓弦を女として見てても
 愛しているとかの感情が全然わかなくてさ、俺は欠陥人間かって
 思ったさ。でもさ、兄弟なんだって話されたときは
 自分のどこかでそう感じてたのかもしれないって。
 かわいくて離したくないと思っても愛しい感情がおこらないのはなぜだって
 それからしばらくしても一度殴られたんだぜ?
 いつだったか、弓弦と俺と出入りの業者と話をしているときか。
 冗談交じりでいろんなことを笑いながら話してて
 業者が弓弦とkissしたんだ。軽くな。
 その時に俺もふざけて弓弦の頬にkissしたんだ。」
「あぁ、覚えてる。女同士でkissしてそれに俺も俺もって冗談ではしゃぎながら
 誠さんふざけたんだよね。」
「そのときさ、弓弦と離れて自分のブースで準備していたら貴志が来てさ
 《真面目に聞いていいですか?
  弓弦さんと誠さん、本当に男と女の関係じゃないんですか?
  そうでないと弓弦さんあんな眼差しであんなに近くで
  あんなに微笑みませんよね?》
 って、聞くんだ。俺さ、ふざけれなくってさ貴志に言ったんだ。
 そうだったらどうするんだって。
 したら、こうするんだって3発食らっちまったさ(笑)」
「貴志も男には手を出すんだなぁ。あたしには何にも言わないくせに。」
「俺も怖くなってきた。貴志君に会いたくないなぁ・・・・。」
「でも、決まったことだもん貴志だって決まったことには
 何も言わないさ。お見舞いに一発はくらわされるだろうが(笑)」
「でもさ、貴志からライバル視されても俺と弓弦の間は変わらなかった。
 俺は弓弦と居ると安らげたし安心できた。
 弓弦も俺の前では自然な態度で過ごせてたよな。」
「あぁ、誠さんと居ると自分が自分で居られる気がして
 仕事でも仕事でなくてもなんとなく一緒に居たなぁ。」
「あははははは。そういう自然な関係だったんだって。
 またしばらくしてさ貴志が恨めしそうに言うんだ。

 《なんで誠さんと一緒に居るとき弓弦さんはあんな顔をして笑ってるんですか》

 って。貴志にうらやましいだろう?そういう関係さって
 そう言ったらまたまた殴られた(笑)
 あいつ俺を弓弦を挟んでライバル視してその上3回も殴った。」
「でも、その頃にはあたし誠さんと兄弟だってそうお爺ちゃんから聞いてから
 誠さんの隣にいることがすごく安心できてたんだよ。
 この人が兄さんなんだって思ったら、本当にすごく居心地がよかった。」
「誠とと弓弦は本当に仲がいいな。わしは弓弦に話をしてよかったとそう思った。
 誠、弓弦とこれからも仲のいい兄弟でいてくれな。」
「大手を振ってお兄ちゃんって言える。それが一番うれしい。」
「きっと貴志はびっくりするんだろうなぁ。俺と弓弦が兄弟だって知ったら。」
「貴志だけじゃないさ、俊哉だって健だってみんなみんな
 びっくりするどころじゃないさ。」
「お前たちはきっと兄弟とわからないでも、男と女の関係とは別に
 他のものがうらやむぐらいに仲が良かったんだろうなぁ。
 孝太郎も恵美子さんも由起子さんもみんなそう導いてきたんじゃろうなぁ。」
「そうだね、お爺ちゃん。誠さんがさみしくかなしまないように
 美恵子さんがお父さんと一緒にあたしの所に導いてくれたんだろうし
 あたしがさみしく悲しい思いで過ごさないようにお父さんとお母さんが
 誠さんの所にまであたしを導いた。そうなんだよね。」
「俺は誠さんと弓弦の間に割り込んだわけか。」
「兄弟だもの、割り込んでも無理よ?」
「俺は一緒になっても放置されそうだな(笑)」
「誠。これからもずっと弓弦を頼むぞ。兄として。」
「お爺ちゃん。誠さんが事実上お爺ちゃんの孫なんだし
 あたしと同じお爺ちゃんの孫としてきちんとしようよ。」
「誠、お前の戸籍は今どうなっておるんじゃ?」
「産みの母との戸籍は切られていますが
 一度目の養子縁組で両親となった相原家の子供となっています。
 相原家の両親はもうすでに亡くなって、戸籍だけ自分だけが残っている状態で。」
「籍を抜くとかの問題もないのじゃな。うちの弁護士に聞いてみよう。
 弓弦が嫁に出る前に、きちんと原田孝太郎の長男として
 弓弦の兄となってほしいんでな。
 お前の父孝太郎の意志でもある。誠、いいかの?」
「現実どんなことがあっても弓弦の兄には変わりないし、
 原田さんの孫だということは変わらないのに。」
「いや、弓弦と同じわしの孫だからこそわしが生きているうちに
 孝太郎と美恵子さん、由起子さんの意志を守ってあげたいのじゃよ。」
「誠さん。お爺ちゃんの言う通りさ。誠さんが言いたいことはわかる。
 わかるけど、やっぱりお父さんたちの意思は尊重してあげたいよ。
 あたしときちんと兄弟の手続きをとろうよ。
 お爺ちゃんの所の顧問弁護士さんが全部やってくれる。」
「弓弦。お前は本当にそれでいいのか?いきなりお兄ちゃんができるんだぞ?」

「そのお兄ちゃんが誠さんだ。何を嫌がる嫌悪する理由があるものか。
 血のつながりがなくとも、もし兄弟になれるのなら喜んでだよ。」
「俺は・・・・。いいのか?いろいろと面倒を起こしたり
 豚箱にはいったり。前科者だぞ。家に傷がつくんじゃないのか?」
「そんなことは過去じゃ、わしはお前が帰ってきてくれることを
 心底願うばかりじゃ。お前もこのままでは一人もんじゃ。
 弓弦もわしが死ねば山本の家族しか家族はいなくなる。
 血のつながった兄弟が何も知らないまま離れておるのは不自然じゃろう。
 きちんと、家族に戻ろうじゃないか。のぉそう思わんかね西村君。」
「私もそう思いますよ。家族は家族でいないとおかしい。」
「まだ俺の中で整理が付きません。だから少し待ってください。
 すごくうれしい話なんですが、うれしいんですが。」
「誠さん、迷うことないさ。ただあたしのお兄ちゃんになるだけの話。
 お願いだ、誠さん。あたしを一人にしないで。
 亡くなったお父さんたちができない事を、誠さんの手でやってほしい。
 西村さんの所に嫁に行くときお爺ちゃんと誠さんの手から
 嫁ぎたい。お願い。そう考えこまないで。」
「弓弦、泣くなよ。別に拒否するわけじゃない。自分を整理してくるだけだ。」
「わしはすぐにでもうごける。誠、いつでもうちに来るがいい。
 いつでもわしは待っておる、お前に形見もわけねばいけない。
 弓弦と同じくわしの孫じゃ。なんなりと言いたいことは言わないとな。」
「ありがとうございます。」
「叔父貴。恨まれてなくてよかったな(笑)
 でも私が話した通りの好青年だったろ?孝太郎さんそっくりだ。」
「あぁ、孝太郎に似ている。」
「お爺ちゃん。待ってて良かったね、話せてよかったね。」
「あぁ、弓弦。お前はわしの天使じゃな。
 それが嫁に行くのはさみしいが家族が増えることはうれしい事じゃ。」
「お爺ちゃん。嫁に行っても離れないから大丈夫さ。」
「俺は仕事、店の開店準備があるのでそろそろ。」
「誠さん、あたし早く治るように努力する。早く店に戻れるように
 頑張るからってみんなによろしく伝えて。」
「あぁ、わかっているさ。弓弦はお見舞いで泣きべそしてたっ(笑)」
「駄目じゃん!そんなこと言ってると何も知らない貴志から殴られるって。」
「あはははははは。お前たちの店は、みんなが家族なんだな。」
「伯父ぃ。みんな仲良しさ。誠さんが一番上で長男。
 あたしが次で長女。で、弟たちがたくさん。それがあの店さ。」
「誠さん。まだ弓弦との婚約は言わないでくださいね。
 今度の記者会見での発表なんですから。」
「わかってるって。んじゃ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい、兄さん。」

何事か揉め事でも起きてしまうような感触があった対面も、物腰の柔らかな誠の前では
単純に仲直りのような雰囲気だけしかなかったが山本はどこかでもめるのではないかと
誠がふつふつと心の奥底に持つ何かをぶつけるのではないかと
そう心配していたのだが、この場では何事もなかったこと少し不安に思ってしまった。
こんなに早くに話をさせてよかったものか、弓弦が間にいたからこそ
話ができたんではないかとも思った。
誠が仕事のために病室を後にしたあと、弓弦と原田と山本と西村で
また他愛もない話で盛り上がっている。
また15時の回診が始まると、原田は弓弦に誠のことは任せておきなさいと言い、
また、記者会見は恥ずかしいことにならないように西村君も頑張るのだから
弓弦も一緒に頑張らないとなと声をかけ、記者会見での西村と弓弦の婚約発表も
認めて話をしていた。

「弓弦。また来る、また遊びに来るよ。
 西村君、頑張ってな。緊張するだろうが私も同席する。
 私と君の所の社長と、誰だっけな。怪我をした彼は。」
「あぁ、翔太ですか。M’company社さんの所のアイドルグループで
 union martinという5人組がいるのですがその中の一人です。
 だから、彼も一緒だし多分社長も。弓弦の担当医と俺と。
 で、警察の方々と結構大人数ですが。」
「わしがいなくとも大人数だな。」
「でも弓弦は原田さんの孫です。連盟の会長の孫なんですから
 原田さんがいないと、弓弦が困る(笑)」
「そうじゃな。日時が決まったら連絡をお願いする。」
「えぇ、また電話します。」
「じゃぁな、弓弦。また来るよ。」
「お爺ちゃん。今日はありがとうね。」
「あぁ、たまにはうちにも来ればいい。ばぁさんが待ってるぞ。」
「次は二人で行きます。絶対に、退院したら二人で。
 お爺ちゃん、おばあちゃんと待っててよ。」
「あぁ、わかっておる。行くか、山本君。」
「また、来てください。その前に記者会見がんばります。
 横で見ててください、恥ずかしくないように頑張りますから。」
「あぁ、期待しておるよ、西村君。」

そういうと病室を出て行った。どれぐらいの時間ここにいたのだろうか。
かなり長い時間、いろんな話をしていたのだけれど、そんなことも忘れて
西村と弓弦は仲良く喧嘩しながら話をしていた。
夕飯の時になると、弓弦の食事内容が変更されている。

「ねぇ、おばさん。あたしの夕飯って・・・・・。」
「夕飯からはおかゆではなくって普通に戻してくれって
 隣の人が(笑)隣の人が言われてましたので。」
「まじで?西村さん、さっき外に出たのはそれ?」
「大丈夫って。お前のその元気なら大丈夫って。
 大丈夫ならきっと点滴が外れるぞ?」
「頑張るかなぁ・・・・。」
「食べれないときはご飯はお茶づけしたらいいさ。
 鮭もあるし、みそ汁も薄めにしてもらっている。
 いわゆる猫まんまだな。」
「あたし猫じゃないんだけどぉ?」
「気まぐれなところは猫じゃん。大丈夫、箸はもてるだろ?」
「どうかなぁ。」
「箸を使えるようになることもリハビリなんだから、頑張ってみなよ。」
「まぁ、おなかはすごくすいている。かなりおなかが騒いでいる。」
「弓弦の大食いは誠さんからも聞いているし、
 それだけじゃ足りないはずなんだけどさ、とりあえず食べること。」
「いただきます。」
「さぁ俺も、弓弦よりも早く食べ終わらないとな。いただきます。」

その夜はまた二人だけの夜となった。
でも、二人だけの夜を迎えたがこれまででも幸せな夜が訪れた。
誠の事、記者会見の事、そして婚約発表の事、結婚の事。
弓弦のおじいさんに会えきちんと挨拶に行くことを拒否されなかったこと。
不安な夜が一転して幸せな夜になったのだ。

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