森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 54

「誠さんもすげぇおしゃべり(笑)」
「そうだなぁ、でも嬉しいんじゃね?」
「嬉しいのかなぁ。お爺ちゃんも誠さんと話せてからご機嫌だし
 やっぱり誠さんもなのかなぁ。」
「そうかもなぁ、でもあの誠さんの静かなところはやっぱりお爺ちゃんに似ているかも。」
「頑固なところは弓弦が引き受けたんだ(笑)」
「そんなこと言う。」
「でもさ、弓弦が妹と知る前から誠さんと弓弦って男と女って感じに
 仲が良かったよなぁ。俺すげぇ不安だった。」
「あそこに勤めて5年でしょ?」
「あぁ。」
「誠さんがお兄ちゃんって知ったのは3年目に入るか入らないぐらいだった。」
「弓弦はただの先輩としか思ってはなかっただろうが
 俺の目からしたら、全然信頼信用した男と女に見えてたんだぞ?」
「そうなの?でも、一理あるかも。誠さんと居ると誰よりも安心できた。
 釣りに行っても、二人で夕飯食べに行っても。
 買い物とかいつも一緒だったし、お店にいてさ何気なしに座るとしても
 誠さんの横を選んでたかな。」
「だろ?弓弦がそんな安心している奴なんてそうそういないだろうしな。」
「まださ、誠さんには血のつながったお兄ちゃんなんだよって
 白状してない状態での沖縄だったでしょ?」
「・・・。」
「貧血で倒れた時にさ、みんな駆け寄るんだけど駆け寄った後声をかけるんだけど
 誠さんは割り込んできたのかな?そばに来ると抱きかかえて部屋に連れてきてくれたんだ。
 抱きかかえられたところまでは覚えているんだけど
 部屋に連れていかれソファに降ろされてさ、声かけられるまで
 気を失ってたんだよね。」
「おまえさぁ、誠さんに一番迷惑かけてねぇか?(笑)」
「そうかも(笑)でさ、いろいろとお説教くらわされてさ。」
「当たり前だろ?」
「でもさ、あたしが躓いて誠さんの胸に抱きついちゃって(笑)」
「重かっただろうなぁ(笑)」
「あのね?」
「すまんすまん(笑)」
「その時にさぁ、すごい力で抱きしめられてさ
 お前がこの世の中で一番好きなことは本当さ。
 どんな女よりもお前が俺の一番近いところにいる。
 弓弦が一番な。だけど、俺は恋愛感情というものがわからん。
 西村さんの行動がいまいちわからん。って言いながら。
 あたしどうしていいかわからなくて。でも拒否できなくって。
 誠さんにあのまま押し倒されてたらきっと男と女になってたのかも。」
「弓弦、お前正直すぎて俺どう答えたらいいんだ?」
「そのままさ。隠すことなんてないもん。
 だけどさ、誠さんにはお兄さんなんだよって話してないから
 どうしようもないでしょ?」
「あぁ」
「だけど誠さんはそういう男女関係には持ち込まない人なんだぁって。
 ある意味紳士だよね。気持ちが一つでないとそういう関係は無意味って
 そう思っているらしいよ。」
「不思議な人だな。でもお前愛されてるんだなぁ。誠さん、お前を心底愛してるんだぞ。」
「わかってる、そうでないとあたしに対する態度があんなんじゃないもん。」
「でも、やっぱりきちんとその時に話をしないといけないなぁって思っちゃったんだ。
 わかってる分誠さんにはきちんと話をしないとともっちゃったんだ。
 で、プロポーズ受けたこともあるしきちんとって。
 それがチャリティーコンサートの前の晩だったの。」
「俺のプロポーズ・・・・・嬉しかったなぁ。
 すげぇ嬉しくって、朝一番で社長に行っちゃったんだもんなぁ(笑)」
「なんだか子供みたい(笑)」
「そういうなよ。弓弦がyesって返事をくれるまで何年かかってるって思うんだ?」
「3年?4年?」
「でもさ、あたしなんでyesって言っちゃったんだろう・・・・。」
「おいおい、そこなやむところか?」
「なんだか気が付いたこの何日かでさいろんなことがあってなんだか頭の中が(笑)」
「まぁ、仕方がないけどね。」
「でも本当に、生きているってことがこんなにうれしいってこと考えたことなかった。」
「これからが大変になるなぁ。」
「秋山君や男爵が動くとなると、デビュー早々忙しい弓弦になるんだな。」
「でもさ、そろそろ外の空気が吸いたい。」
「ここに缶詰めだもんな。」
「ねぇ、本当にあの離れ・・・・・。」
「なんだ?あの離れ?」
「とりあえずここから一番近いところだから、弓弦のためにはあの離れがいいんだもんな。」
「ありがとう。きちんと動けるようになったらきちんと引っ越しを考えよう。」
「なんで、ゆっくり考えたらいいじゃん。」
「あそこやたらと広いから、だれかれ集まってきて居すわられそうでさ。」
「あんまりそういうことは考えなくともいいんじゃないか?」
「そうかなぁ。」
「男爵のあの顔。聞くだけ聞いて納得したらそそくさと帰って行っちゃったね。」
「そりゃなぁ(笑)なんたって弓弦をすべての人から奪っちゃったしなぁ。」
「記者会見が怖いかも(笑)」


男爵が帰り二人の時間が流れる病室。
口数も少なくなったかと思って西村は弓弦の方を見るとうとうとと
PCの画面をそのままに寝はじめていた。

「弓弦?疲れたんだろ?」
「あ。ごめん、寝ちゃった。」
「少し横になったら?PCはそのまま横に置いて。」
「ん・・・・でも・・・・。」
「本調子じゃないんだからさ、無理すんなって。
 眠いときは寝る、OK?」
「わかった(笑)少し休むね。」
「俺も眠るから。回診の時間までは誰も来ないだろうし、
 少しの間、休もう。」

そう話をしているうちに、弓弦は眠りに落ちて行った。
西村は弓弦のベッドの横に行き、眠っている弓弦の手を握り横顔を見ている。
手を握った時に弓弦は少し気が付いたが、西村の方を見て笑うと
またそのまま眠りについた。安心しきった顔で。
その弓弦の顔を見ると、西村も安心したのかそのまま眠りに落ちて
ふと気が付くと一時間を少し回ったところだった。

まだ寝ている横顔を見ながら起こさないように握っていた手を離す。

弓弦はこのまま眠らせておこうと、静かにそこを離れた。
時計を見るとまだ回診の時間まで1時間と少しあるようだったから
まだ大丈夫と思い、病室を出る西村。

病室を出て看護師たちに冗談を言われながらも、エレベーターの横にある
少し広い場所の椅子に座り、自販機で買ったコーヒーを片手にぼーっとしていた。
すると、何度も開くエレベーターのドアから久しぶりの声がした。

「よぉ。」
「ん?」
「おいおい、俺の顔忘れた?」




「大川・・・・君と渉じゃん、どうしたんだ?」
「お見舞いっす、お見舞い。」
「かしこまって、俺も圭一郎でいいっすよ。」
「二人仲がいいなぁ。今日は?」
「様子伺いだけど・・・・・弓弦は?」
「あぁ、疲れたのかまだ本調子じゃないから寝てるよ。」
「そっかぁ。起きているときに来ないと意味ないか?」
「起こそうか?どうせ回診が始まるし起こさないといけないんだ。」
「いやいやいいよ。また来るし。」
「西村さん。」
「二人とも(笑)まさでいいよまさで。」
「まささん。あのさ・・・…やっぱやめとく。」
「なんだ?」
「圭一郎さ、弓弦とデートしたいってさっきまでごねてたんだよな。」
「へぇ。弓弦モテモテじゃん(笑)」
「でもさぁ、弓弦はやっぱり西村さんなんだよな。」
「なんで?」
「渉から聞いたもん。西村さんのプロポーズに返事したって。」
「それか・・・・すまないな。返事もらっちゃったから弓弦は・・・・。」
「デートの申し込みしてもさ、マスコミのいい餌食じゃんって思ったら
 あきらめついちゃった。」
「まだ公表してないし、いいんじゃね?」
「でも次の記者会見では喋っちゃうんだろ?」
「そうだなぁ。でも記者会見は警察の意向で伸びたんだけどさ。」
「それでも数日。外出もできないんだろうし、あきらめるわ。」
「圭一郎はあきらめが早いな(笑)」
「だって誘惑したらまささん困るんでしょう?」
「誘惑しても弓弦は惑わないと思うけどな。」
「渉・・・お前そこまで言うか?」
「二人本当に息があってるな、よしもとででも稼げるよきっと。」
「それよりも、まささんは大丈夫なんですか?」
「俺はな、様子見で来週でも退院だ。」
「まささん退院だと弓弦一人かぁ。」
「なんだ?(笑)」
「なんでもないっす(笑)」
「あぁ、これ。まささんとちゃんと二人分入ってるから
 先生とか看護師さんたちがいなくなってから食ってくださいよ。」
「なになに?おぉ、いい匂い。」
「ほら、うちの会社のさ秘書さんたちがさひかりちゃんと弓弦のこと気にしててさ
 その中の一人がさ、いつもお菓子作ってくれるんっすよ。
 それが美味い事。で、今日さ作ってきてて俺らもごちになったんですけど
 その時にさ4ピース余ったから、他のやつらが手を付ける前に
 取り置きしたんだ。で、会議が終わって時間が取れたんで持ってきたんだ。」
「ありがとう。美味しそうなアップルパイだな。4つあるから起きるの待って
 一緒に食べながら話しようよ。どうせ、もう起きなきゃいけない時間だし。」
「渉。時間あるし、会ってから帰るか?」
「いや、わざわざは。圭一郎も気ぃ利かせろよ(笑)」
「いいんだって(笑)そんなに気を使わなくったって。
 そんな仲じゃないだろ?俺ら。」
「でもさ、けが人だし病院だし寝てるってことはそう言う体調って
 ことなんじゃん。無理は少しでもさせないほうが
 弓弦にとってはいいんだと思うけど。」
「でもなぁ。弓弦起きた時に来てたって知ったら俺すごく怒られやしないか?」
「そんなこと言う弓弦じゃないと思うけど、きちんと説明をしてくれれば。」
「また来るよ。また起きているときになんか持ってくるから。」
「埋め合わせは弓弦の手料理でってそう伝えておいてよ。」
「了解(笑)」
「また今度ゆっくりした時に来るさ。」
「ありがとう、退院したら`mask´でも。あそこには弓弦の兄が待ってるからさ。」
「そうなの?」
「詳しい話はその時にでも。」
「わかった、んじゃね。まささんも無理しないように。」
「ありがとう」

そういってまたエレベーターに乗り込んで帰っていった二人。
本当は弓弦に会いに来たんだろうになと思いながら、西村も病室に戻った。
手には圭一郎と渉が差し入れで持ってきてくれたアップルパイを手に。
まだ弓弦は眠っている。さえない顔色のままだけれど具数理とまだ眠っている。
部屋の隅のテーブルにそのパイの入った箱を置き、TVをつけ弓弦のそばに座った。
そしてまた手を握り横顔を見ると目が覚めたのか眉間にしわを寄せて
表情を変える。

「おはよう、弓弦。」
「おはようだなんて、どうしたの?そんなご機嫌な顔をして。」
「嫌さ、お前疲れてたんだよな。2時間余りよく寝てた。」
「そんなに?」
「あぁ、それも幸せそうな顔をしてさ。」
「んじゃもう回診の時間?」
「もうそろそろかな。」
「終わったらまたゆっくりと屋上にでも連れてってよ。」
「そうだな。」
「でもこのいい匂いなに?」
「わかる?」
「わかる、とってもおなかがすくにおい。」
「弓弦が寝ている間にさ、渉と圭一郎が来たんだ。」
「起こしてくれたらよかったのに、会いたかったなぁ。」
「そう思ってさ、俺も起こすっていうのに次起きているときに来るって言って
 帰っていったんだ。その渉と圭一郎のお土産。」
「それ?」
「なんだかわかるか?」
「箱からしたらケーキでしょ?」
「あたり!M'scompanyの秘書さんの一人のお手製だって。ほら。」
「あ!おいしそう!アップルパイだ!うーん今食べたい(笑)」
「回診が終わったら食べよう、先生たち結構うるさそうだから。
 冷蔵庫に入れてて、回診が終わってから二人で食べよう。」
「でも4ピースも入ってるよ?」
「多分弓弦が起きてたら4人で食べるつもりだったんじゃないのか?多分な。」
「悪いことしたなぁ。ぐっすりと寝着いちゃったもんな。」
「次会うときに元気な顔をして迎えたら彼らは嬉しいんじゃないのか?
 それまでにはもうちょっと元気にならないとな。」
「そうだね。でもなぁ、会いたかったなぁ。」
「まぁ後でメールでも入れたらいいじゃん、アドレス知ってるんだろ?」
「そうだなぁ、後でメールしてみる。夜でも時間があれば会えるしね。」
「そうそう。さ、回診が始まる。」



しばらくすると回診が始まり、先生がやってきた。



「どうですか?具合は。」
「俺の方は全然大丈夫です。」
「あたしも今日はお昼の後ゆっくり休めたので今の時点大丈夫です。」
「西村さんは良好そうですが、原田さんはまだまだですねぇ。」
「そう思いますか?」
「無理はしないでくださいね。別に回診だからと言って起きて待ってることはないんですよ?」
「先生、弓弦はまだ本調子ではなさそうですね。」
「あれだけの怪我です。まだまだこれから自分のちからで治癒していくところなので
 もう少し体力が戻らなければ日常生活も少しきついかと思いますよ。」
「そうですよねぇ。」
「なぜですか?」
「いえ、まぁ顔色があまりすぐれない日が続くから。」
「そう焦っても何も始まりませんよ(笑)ゆっくりと構えて。」
「そうですね、そうですもんね。」
「弓弦、もう一眠りしよう。俺も眠いし。」
「あたし眠くないけど?」
「目をつぶれば否応なしに寝れるさ。」
「そうですよ、無理せず明日のことをその次の日のことを
 そしてその先のことを考えて体を休めてください。」
「では、後で。」




先生と看護師との会話の中、体温と血圧を測り触診での診察などを済ませ
弓弦たちの部屋を出て行った。

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