森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 201

「おはようございます。」

そういって翔太たちと顔を合わせると、すっとはなの手からフランス語のテキストが。
誠も翔太も巻き添えにする奴が一人増えたということが嬉しいのかにやにやとしている。
石橋は驚いた顔をしたが、これがないと困るんだという話を翔太がするために
とりあえずスケジュールの確認をし、それからはなのミニ講義を受け始めた。
そんな誠とはなと翔太と石橋の面白おかしいフランス語講座は、2時間を過ぎる。
はなは弓弦がまだ来ないことを気にしながらも少しづつ誠が短い会話を単語つなげて話すことに
テキストを変えなければと思いながら翔太の一生懸命な春音の正確さにもびっくりしている。
はなが教えるとおりに発音し単語を覚え意味を覚えそれを繰り返す。
誠と翔太は間にいる弓弦を介して似ている部分があるという事だろうか、単語からはいり
意味を覚え、変化を覚えそして単語どうしをつなげて話し言葉にする。
ちょっとしたことなのだろうか、素直に覚える翔太。
同じように覚えたものを繰り返し口にだしなめらかな言葉にしていく誠。
もともと英語を話せる誠にはきっと言語が違っても平気なのかもしれない。
問題は石橋かもと感じているのかはなは石橋の横でゆっくりと教えている。
それを横目に誠も翔太もテキストを進めて行った。
まだそんな中、弓弦は来なかった。きっと事務所でいろんな物事を一つづつ方して言っているのだろう。
いるときだけでもこの3人の面倒を二人で分け合って何とかしたい残りの時間。
はなはふとJanisに会える気持ちが勝るのか、ふと気づくとにやにやと微笑んでいた。
それを横目で見ながら石橋をからかうように覚えの早い翔太は
誠に問いかけるふりをして石橋をからかっている。
誠も覚えの早い翔太が何となく追いつかれたりするのかもと、先へ進むようにテキストを進めた。
そんなこんなで部屋の時計は12時を指す手前まで針が動いている。
はなは何もないそぶりで誠に対してまたは翔太が声をかけると翔太に、石橋が詰まっているときは
石橋のそばでフランス語のテキストの進み具合を見ていた。
そんな時間の流れの中で弓弦が遅いことを気にしていた。
自分もお昼を過ぎると仕事へ行かなければいけないし、
弓弦も一緒に行くものだとそう思っていたため気になっていたのだ。
しかしはなのほうにはメールで打ち合わせが長引いているので遅くなるとそう来ていた。
誠や翔太にそれを伝えれば余計な気を使わずまだかまだかと気にしなくてよかったのだけれど
せっかく真面目にテキストと向き合っているのに水を差してはいけないと黙っていたのだった。
来日まであと4日。少しでもいいからと頑張る翔太。
その日も誠は出勤する前まで。翔太は石橋が切り上げるまで。
そしてその2人を弓弦は時間の合間に相手をしている。
翔太が退院しての一週間、
毎日がテキストとはなとしか原田家にいる人だけしかいない時間が過ぎて行った。
その一週間、翔太と石橋が頑張っているために達哉や雄一郎たちの出入り多々あったが
それを毎日邪魔すると悪いと思う反面自分たちも勉強を少しはしていないとまずいと
そう思ったのかはなからテキストをもらい勉強する横で自分たちも軽く目をとおし
片言でもできればと。
また多くキーパー達も忙しく動いていたが時間が空くとともにキーパーも一緒にともに勉強をしていた。
さまざまな年齢が入り混じり短時間のうちにそれぞれが一言二言と話せる言葉が増えて行った。
Janisが来日すると決まってからは誠も秋元にしごかれていたためか
翔太たちよりも早くに片言ではあるが
弓弦が意地悪に話しかけても少しは返事ができるようになったし、
まじめな話を秋本が話しかけてもたどたどしいが返事はできた。
翔太も単語を返すぐらいにはなってきたがいまいち不安そうな顔をする。
そんなみんなの様子を見ながらもはなはJanisが来日する日が待ち遠しくてたまらない様子。
誠はそんな浮かれたはなの気持ちを、ほほえましく見ていた。まるで弓弦だなと・・・・。
一方弓弦は来日後の事でいろんなことが押し詰ってしまいバタバタしていた。

一方秋元はそんな様子を見ながらはなを助け、誠たち3人とにぎやかにフランス語を教えていく。
夜になると石橋には新しいテキストを渡して宿題とし、
誠と翔太は出勤するのではなと二人キーパー達の話し相手となった。
それもテキストを片手に片言でいいから話ができたらとそう頑張るキーパー達なので
覚えも早く、年が比較的若いキーパーは少しの会話だと大丈夫になってきた。
そんなみんなを見ているとはなは嬉しくてたまらない様子。
原田が帰ってくると少し騒がしめのキーパー達と真面目な顔をした
いつもとは違う柔らかい表情をした秋本。
周りを見るとキーパーと秋本しかいなかった。月城はどうしたのかと尋ねると部屋にいるという事。
部屋ではなは招待客のリストを見ていた。もう出しているはずなのに、まだリストを見ている。

「はなさん。まだ起きているのかね?」
「あ、お帰りなさいおじい様。今リストを拝見させていただいてたの。」
「それかの。・・・・弓弦が言ってた招待客と私の方と秋本が
 この方だけはという人をピックアップしたのじゃが
 果たしてそれでいいのかと思ってはいるのだが。
 しかしもう招待状は出したし、ホテルのほうの広間もすべて準備は秋本がやってくれた。
 助かったよ。はなさんも久しぶりじゃからきっと泣きべそになるのかの(笑)」
「やだ、おじい様ったら(笑)
 でも弓弦ちゃんと一緒でタオル用意しておかなきゃいけないかしら(笑)」
「そうじゃの(笑)あ、それと迎えじゃが秋本と3人で向かおうと思うのじゃが。」
「弓弦ちゃんと西村君は?」
「ぎりぎりまで仕事だそうじゃよ。」
「んじゃ、夕食会のときには会えるのね。」
「そうなると思うが・・・・・。」
「なんだか待ち遠しいなぁ。」
「はなさんも体調が気になる。万全にしないとJanisも心配する。早目に休むように。」
「はい、おじい様。早目に休みますわ。」
「ではの、お休み。はなさん。」
「おやすみなさい。」


リストを見つつも灯りを手元だけにした。
リストにはたくさんの弓弦の知り合いも名を連ねている。
今日も夜遅くに帰ってくるのだろうが、誠にも少し聞いてみたいこともあるのになぁと
そう思いながらもフカフカとしたベッドに沈み込んだ後眠りに落ちて行った。




そしてそのバタバタとした時間が過ぎ、次の日が来る。
朝起きる。キーパー達と誠と一緒にはなと秋元から鍛えられるがそれも楽しい時間。
夜遅くに帰ってくる誠も朝起きるとそれに混じらせられた。
しかし翔太がいてはながいて頼もしいキーパー達もいて愉快な時間の中でフランス語の時間は過ぎていく。
午後から出勤するときはもちろん翔太も一緒なので、マネージャーは定時報告といい会社へ帰って行った。
店に行くと翔太もいっぱしに思い出したことは進んで手を出していった。周りの仲間とともに
一緒に仕事をこなしている様子は、記憶をなくしているとは思えないほどの動きだった。
しかし、やはりまだまだついていけないとわかっている分翔太自身戸惑いを隠せないのだけれど
樹や葵生が丁寧にフォローをしているのがわかる。
誠や弓弦が遠目に見てても、ほほえましい光景だった。
そのあわただしい4日間が過ぎ、Janisが出国し翌日成田に着くと連絡が入った。
明日の午後にはと会える思うとはなは嬉しくてしょうがない。迎えに行きその日の夜はホテルでの晩餐。
そしてその日からしばらくは一緒に過ごせるとそんな喜びははなを動かしていた。


「のぉ、はなさん。」
「どうかしたんですか?おじい様。」
「いやの、やっぱりJanisに久しぶりに会えるのは嬉しいもんじゃの。」
「えぇ。」
「なんせはなさんの顔色がかなりいいもんじゃて。」
「そう見えますか?」
「そう見える、そう見えるよ。」
「まぁ、おじい様ったら。」
「夕食を食べたら明日の準備でもしておかないとのぉ。」
「あ、おじい様。」
「なんじゃの?」
「わたくしちょっと出かけてきます。」
「何か用事でもあるのかの?」
「いえ、上村君にちょっと夕飯を一緒にとお誘いを受けているので。」
「そうなのかの?」
「えぇ、なんだかお断りするのもと思うような感じでお誘いを受けたので。」
「秋元に近くまで送ってもらったらどうじゃの?」
「上村君がもうそろそろ迎えに来てくれると思うので大丈夫です。帰るときにでも電話を入れます。」
「そうかの、あまり遅くはならないようにの。」
「えぇ、わかっておりますわ。」
「気を付けての(笑)」



しばらくするとチャイムが鳴り上村が顔を出した。
出迎えたキーパーが月城を呼ぶと、部屋からまっすぐに玄関に来た月城。
`こんばんわ´の言葉に照れながらも月城のほうをしっかりとみている上村。
少しおしゃれに着替えた月城がヒールを履こうとすると緊張しているのかうまく履けない。
行ってきますとキーパーに行った後なので月城の後ろには誰もおらず、ただ上村が笑って待っている。
すると少し前のめりになった時とっさに上村が月城を支えた。
支えられたのが恥ずかしいのかすぐに離れて`ありがとう´というと、上村と一緒に外へ出ていった。
すぐに車が止めてある。上村の運転してきた車は、まだ新しいような気がしたのだが
助手席のドアを上村が開け座らせると`それでは´と声をかけドアを閉め走り出した。




「すみません、忙しいときに呼び出しちゃって。」
「いいのよ(笑)それよりも今日はどうしたの?」
「ちょっと。ちょっと月城さんとお話がしたくて。」
「上村君、そんなかしこまっておかしいわよ?どうかしたの?」
「それはこれから。とりあえず夕飯を食べましょうよ。」
「えぇ。どこに連れて行ってくれるか楽しみだわ。」
「普通に飯食いですよ。でも、俺の親父もお袋も一緒なんですけどね(笑)」
「え?なぜご一緒なの?あたしこんな格好で来ちゃったけど・・・・大丈夫?」
「全然月城さんらしくっていいんじゃないですか?」
「でも、お友達同士でだといいけど・・・・・。」





すると月城を乗せた車は乗せた場所からそんなに遠く離れていないところで一度止まった。
上村は月城を見つめて一つ一つしゃべり始めた。






「あの、月城さん。」
「どうしたの?上村君そんな思いつめた顔をして。」
「俺、落合さんが真面目に月城さんのことを思っていることを知っています。
 だけど月城さんはまだまだ亡くなったご主人を忘れないで愛していることも知っています。」
「えぇ、みんなからもいろいろとアドバイス受けるけどやっぱりFrancisが・・・・。」
「あの、落合さんが月城さんにこれから先のことを踏まえてのプロポーズに等しいことを
 話したこともわかってて・・・・知ってて・・・・・それでも月城さんにも。」
「上村君?」
「落合さんみたいに人生経験が豊富ではないです。まだまだ人として未熟な俺です。
 だけど、俺自身は月城さんと共にこれから先を歩んでいきたい。
 自分にも正直に素直に生きていきたい。だからきちんと聞いてほしいんです。」
「上村君・・・・・・。」
「まだ誰と共に歩むのかを決めるかは月城さんのこれからの気持ちだろうとわかってはいます。
 けど、俺の事も気にかけてほしいんです。
 俺はおやじにもおふくろにも自分の気持ちは包み隠さず話をしました。
 俺は月城さんが振り向いてくれたら人生を共に歩みたいと。彼女しか俺には見えないと
 そう話をしました。確かに年齢の壁はあるかもしれません。
 だからまずそういった俺が一番だという月城さんにうちの両親は会いたがっているんです。」
「上村君、気持ちは嬉しいわ。でもあなたと私はいくつ違うと思う?」
「俺は今ちょうど30です。月城さんと正直16も違います。だけど共に歩むパートナーと考えたとき
 年齢は関係ないんです。まったく関係はないと。俺はその差は全く気にしていません。」
「でも、16という年の差はご両親が一番気にするところではないかしら?
 だって、どんなご両親でもお孫さんの顔を見たいでしょう?
 私はそれが望めない年齢に入ってきているわ。」
「そうかもしれません。
 でも子供を望んでも望まなくても運命が決めることであって俺の中では気にしてません。」
「でも・・・・・わたくしは・・・・。」
「ご主人の事は忘れないでもいいんです。逆に忘れてはいけないと思うんです。
 彼がいた時間を過ごしたからこそ今の月城さんがいるんだから、忘れないでいいんです。
 それよりも今は俺の事をまっすぐに見てほしいんです。」
「上村君・・・・。」
「これからT’sホテルにおやじたちが待っているので月城さんをお誘いしたんです。
 おやじたちには、月城さんという女性を紹介したい。
 そりゃ有名な月城さんとしては知っているかもしれないけど、きちんと月城さんはこういう人なんだって
 紹介したいんです。それからです、落合さんのプロポーズもあるでしょうが俺もきちんと
 同じスタート地点に立てるようきちんと努力します。
 俺と一緒におやじたちにあってほしいんです。お願いです。今日は夕食だけです。
 一緒に楽しく時間を過ごしてはくれませんか?
 俺は月城さんにプロポーズする前にきちんと月城さんを紹介して
 お付き合いさせていただきたいんです。」
「上村君。そんなに真剣にわたくしの事を思ってくれてありがとう。
 上村君も寛司さんと同じ情熱の塊ね(笑)今はうまく返事ができないけど失礼がないように
 ちゃんとお返事はするわ。すぐに返事はできないけどこれから先の時間の流れの中で
 おのずと答えは出るはずだから。
 それに上村君にまでそんなに思われているわたくしはFrancisに自慢できるぐらいに
 幸せなのね。ありがとう、上村君。」
「いえ、少し時間が遅れてるみたいなのでまっすぐ行きますが・・・・・。」
「えぇ、大丈夫よ。ちゃんと失礼の内容にお会いしないとね。」
「俺的には落合さんとこれで同じスタートラインに立てると信じていますけどね(笑)」
「ん?皆さん同じお友達よ?」
「でも俺その中から一歩でいいから先に行きたいな。落合さんかなりダッシュかけてるから(笑)」
「んふふ(笑)寛司さんもあたしの近くにいるけど
 上村君も周りから見ると寛司さんと同じぐらいそばにいるように見えてるらしいわよ?」
「なんだかそういわれると嬉しいんだけど。さ、おやじたちが待ってるホテルに行かなきゃ。」
「なんだか緊張するわ(笑)」



止めた車をホテルに向かわせた上村。
その中で少し顔を赤らめ話をする月城。
10分もしないうちに目的のホテルに着いた。
エントランスに車を停めるとドアを開けられ二人車から降りる。すると中へ案内されていった。






`konkon´

「失礼します、到着されましたのでお連れしました。」
「どうぞお入りください。お待ちしてました。」

そう声が聞こえドアの中へ通される2人。緊張しているのか上村の後ろに隠れる月城。

「こんばんわ、月城さん。うちの息子の運転は怖かったんじゃないですか?」
「こんばんわ、ようこそ。」
「いえ(笑)こんばんわ、初めましてわたくし月城はなと申します。」
「すみません、お忙しいのにお呼びしてしまいまして。」
「月城さん、おやじとおふくろ。おやじはY大学でおふくろは専業主婦(笑)
 おやじもおふくろも座ろうよ。今日は夕食を一緒にってだけだから。」
「雄、お前まさかお忙しいのに無理に連れてきたんじゃないだろうな?」
「違うよ。」
「ごめんなさいね。この間から月城さんの事を熱心に雄が話すものだから一度お会いしたくって。」
「月城さん。ここ数ヶ月は忙しかったでしょう?
 明日基金のお話もお兄さんが来られてバタバタするでしょうし。」
「えぇ、明日・Janis・reno・・・・お兄様が。でもなぜそれを?」
「まぁ、話は世間で流れている通りぐらいしか私は知らないのですが」
「俺も、帰国したその日の晩さん会には招待されているから俺も行くけど。」
「翔太君のこともあるから5人一緒なのよね?上村君。」
「おやじ、俺もフランス語頑張ってみようかな(笑)」
「頑張ってみるか?教えがいがありそうだな(笑)」
「月城さん・・・は、今は・・・・。」
「今は元いた大学でたまに教鞭をとったりオケの指導で。
 ここの所は原田さんについて協会の手伝いとかですね。」
「お忙しい時間を過ごされているようですね。でも、これから先は?」
「まだ何にも(笑)」
「でも、本当に月城さんってかわいらしいわ。
 こういう方に教えていただけると素直に上達するのでしょうね。」
「いえ、わたくしはその子たちの力を見つけて伸ばしてあげるだけですわ。」
「それがすごい事なんですよ。 
 近頃の先生たちはできる子は抑えてできない子は無理やり引き上げる指導が多いと聞きます。
 引き出して伸ばしてあげるという指導は、実にすばらしい。見抜く力も必要ですから。」
「おふくろはFrancis・renoのファンなんだよな(笑)」
「えぇ、国内であってたコンサートに一度行ったことがあるんですのよ。一遍でファンになりました。」
「ありがとうございます、皆様に愛されてFrancisも幸せです(笑)」

食事をしながらもFrancisの話で時間を過ぎていく。
そんな途中話を折るとと言いながらも上村の父は話題を変えた。

「雄から話を聞かされることで今夜はあなたにお会いできる時間を作っていただき嬉しく思う。
 私も家内も雄の話を聞いていることでひとつわかって理解していおることがある。
 それは月城さん、うちの雄はあなたのことを真剣に思っているという事だ。
 もちろん息子との間でいろんな障害があるだろうが
 その前にあなたがFrancis・renoの事をまだ愛されていること
 十分に分かった。しかしうちの雄はそれも丸ごとひっくるめてあなたに真剣な様子なんです。」
「・・・・はい、でも・・・・。」
「落合さんとかいう雄のいる世界での先輩からもプロポーズされていること真剣に思われていることも
 私たちは雄から聞かされて知っています。」
「・・・・・不安なまま帰国して原田さんにやさしく受け入れられそのお孫さんである弓弦さんに
 数年ぶりに会いいろんな人とお知り合いになれました。一人さみしく悲しい時間ではなく
 たくさんの人に紹介され友達としてこれからのわたくしを助けてくれる友人に恵まれています。
 正直に言いますと落合さんからは数度プロポーズを受けております。
 真剣に自分とこれからの時間を過ごしてほしいと。でも私は返事ができませんでした。
 まだまだ落合さんへの自分の中の思いがプロポーズをお受けするまでではないという事。
 Francisの陰になってしまっていることがとても失礼に思えて返事をしておりません。
 それでも落合さんは情熱的に翻弄させられてしまうぐらいに言葉をかけてくれています。
 上村君からも同じように言葉をかけていただいててわたくしはなんと申してよいのやら。
 一番わたくしがご両親に申し訳なく思うのはたとえどなたかのプロポーズを受けて
 共に生きるパートナーを選ぶとして、もし上村君であれば・・・。
 わたくしのこの年齢がとてもご両親には失礼に思えて。申し訳なく・・・・・。」
 月城さん、そう自分の事を年齢で一線引いてお考えにならないでください。
 うちの息子は、今ここにおられる月城さんを丸ごときっと愛しているんだと思うんです。
 年齢は考えないでいいんじゃないでしょうか?」
「でも上村君の年齢でもっと年が近く若くきれいなお嬢様はたくさんおられます。
 なのに16も年が上のわたくしと共に歩むとなるとご両親のこれまでの愛された息子さんへの愛情が
 違う形になってしまうのではないかと・・・・・・。」
「私は雄があなたを紹介してくれてうれしく思いましたよ。
 今日はとてもうれしい。家内も一緒です。落合さんの事があるとは思いますが
 私たちの息子の事も同じように心にとめていただけないでしょうか?
 息子の雄の真剣な気持ちも十分に分かっておりますし、月城さんの周りの事にきちんと
 心配りしていろんなことをお考えになられていると思いますが何も考えなくて大丈夫です。」
「えぇ、雄は私たちの自慢の息子です。その雄がこの人とと真剣に思うのであれば
 何もいう事はありません。逆にお願いします。真剣に前向きに意思をくみ取っていただきたいわ。」
「な、月城さん。俺の両親はちゃんと月城さんを見てるだろ?だから真剣に俺の事も見てほしいんだ。
 落合さんがライバルでまだまだ月城さんの気持ちが真っ新なら俺の事もきちんと考えてほしいんだ。」
「上村君・・・・・。」
「月城さん、時間も時間だからこれだけは言わせてください。
 私たち夫婦はこの息子の気持ちは本当の気持ちだと思う。友達というスタートラインからでもいい、
 少し真剣に前を向いて考えてほしい。もしこの息子雄一郎と一緒になっていただけるならば
 Francis・renoやあなたのお兄さんJanis・renoは今の月城さんを全身全霊を持って信じ愛し
 全てにおいてバックアップしておられることは知っている。
 わたくしたち夫婦も雄一郎と一緒になってあなたを生涯かけて守りバックアップすることが
 絶対できると思う。雄はそんな息子です。
 少しでも考えることができるのであれば息子の事も気がけてほしい。」
「ありがとう・・・・・本当にありがとうございます。
 そんな皆様に大切にされるわたくしは幸せですね。」
「えぇ、あなたはこれからも亡くなったご主人の思いの通り幸せにならないといけないんですよ。
 そんな月城さんとお知り合いになれた私たちも幸せですよ。」
「もうこんな時間ですよ、あなた。月城さんを送っていかないと。」
「そうだな、雄。ちゃんと送っていけるな?」
「もちろん(笑)」
「今日はあたたかい家族の会話にご一緒させていただきありがとうございます。
 また、ゆっくりと。上村君、ありがとう。なんだか元気になれたわ。」
「いえいえ、どういたしまして。んじゃおやじ、お袋先に帰ってて。
 月城さんをちゃんと送る届けてくるから。」
「わかっているよ。月城さん今日はお会いできてうれしかった。またあなたとお会いしたい。
 いい話となることを私たち夫婦は願っているよ。雄もちゃんと正面から努力することだ。
 月城さんに振り向いてもらえるよう努力すること。」
「わかってるって。んじゃ。行ってくる」
「今日はありがとうございました。また、また今度。本当に元気になれました。
 失礼いたします。お休みなさいませ。」



2時間と少しの間4人での食事とおしゃべりに時の流れは早く過ぎて行った。




「ねぇ、上村君。」
「なんですか?月城さん。」
「いいご両親ね。」
「おやじ?」
「えぇ(笑)」
「おふくろ?」
「えぇ(笑)」
「ちゃんと俺を見てくれているでしょ?」
「えぇ。」
「俺がきちんと真剣に考えててそれが間違っていなければ理解をしてくれる。」
「すごくいいご両親、うらやましいわ。そんなご家族が。」
「月城さん、ちょっと東京タワー行きませんか?」
「これから?」
「ここをちょっと曲がればすぐですから。」


そう言って左折した先にある東京タワーに向かった。









人通りの少なくなった道を2人つかず離れず歩いていく。
エレベーターに乗り込む2人のほかには乗り込む人もおらず、展望台までは静かな空間だった。
展望台までくるとそのフロアには誰もいなかった。
雨が降り始めたのか窓の外には水滴がキラキラとしている。
展望台のフロアにある望遠鏡を覗くと見える風景。
静かにその場所での時間が流れ、その流れを変えるように上村が口を開いた。

コメント

ログインするとコメントが投稿できます

まだコメントがありません