「バニシングツイン・・・」
母親の胎内で双子だった兄弟の片方が、もう一方の栄養となって吸収されてしまう事は良くある事だそうです。
もし、吸収された胎児が、宿主の体内で成長し続けていたら。
それも、怨念を抱きつつ復讐のためだけに生まれようとしていたら・・・
「同期複妊娠」とは？
猫は多くの仔猫を産みますが、その仔猫達は一匹の雄猫が父親とは限りません。
サカリのついた雌猫は、同時期に複数の雄猫と交尾をする事で体内に何匹もの精子を蓄え、雄親の違う仔猫を一度に生むのです。
人間にもそんな例があるのです・・・
幼馴染の希との再会を楽しみに帰郷した五条司は、希の奇行が気になり始める。
希の体内に居る姉の忍が少しずつ成長し、希の性格にも影響が出始めているのだ。
忍も、希と同じく司に恋心を抱いている・・・
二重人格の様に忍に操られて、司の友人たちを次々と殺しだす希・・・
腹部の皮膚を通して、体内の忍の容姿が確認出来るほどになって来た。
希は自分の変化を司に知られるのを恐れ、部屋に閉じこもってしまう。
忍は希の体をサナギの様にして外に出ようとする、その目的は、幼い頃から思慕していた司と結ばれるため。希を犠牲にしてでも想いを遂げようとする。
自らの殺害を懇願する希。
愛する希の頭部を抱き、涙をこらえナイフを突き刺そうとする司。
愛する二人の姿と、自分を殺そうとする司に忍の嫉妬と怒りが爆発。
殻(希)が割れ、忍が羽化し始める。
司に襲いかかろうとする忍。
羽化させまいと最後の力で必死に自分の体内に引きずり込む希。
出ようとする忍、出すまいとする希の死闘。
希は泣き笑いの顔を残して、母の沈んだ泥の湧き立つ灼熱の源泉に飛び込み、怨念の元を自ら断った。