桐野アオ
完結おめでとうございます。中山さんの文章と言葉選びが大好きで、丁寧で美しい描写に目を凝らすようにしてじっくり読んでおりました。
主人公の葉魚ちゃんは鋭くて、物事を深く考えるかたなので、読んでいると私も一緒になって考えてしまうことがよくありました。優しい雰囲気の言葉のなかに、ときどき、心情を的確に言い表す鋭い視点がまぎれていて、美しいばかりではない人の心を一瞬だけ、さらっと思い出させてくれるこの作品が本当に好きです。喜怒哀楽にぴったりと当てはまることのない、名前のない瞬間的な感情が言語化されていて、その文章を読んだ時、自分にも思い当たる部分があると、忘れていた感覚的な記憶が掘り出されてしまう、そんな繊細な表現の数々にいつまでも浸っていたいと思いました。
作品の後半では、思ったように笑えていないのではと不安に思って、外から見た自分を気にしている葉魚ちゃんや、たったひとつの大きな印象だけで片付けられてしまう出来事など、目に映るものが全てではないけれどそれに引きずられてしまうことについて考えさせられました。
ままならないことばかりだけれど、みんなに優しい世界が待っているといいなと思いました。
本当にお疲れさまでした。