作品コメント
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- 涼音
深い
たった20ページなのに、読み終えた今、すごく余韻に浸っています。
本来なら、誰しも親から愛をもらえるのに、玲にはそれがなかった。ゆえに、彼女の性格は歪んでいく。
けれど、玲は本当はただ寂しいだけなのではないか、と思いました。愛を求める方法を知らないだけなのではないかと。
そして、玲が嫌いな風鈴を持って彼女を待ち続ける圭の心も歪んでいると思いました。でも、そうでもしなければ圭と玲の世界は壊れてしまう気がします。
彼らの未来が気になりますが、世間的にはバッドでも、2人にとってはハッピーエンドであってほしいと思いました。 - 杏花
黒く、深く。
はっと息を呑むような、深く底が見えない闇。
玲を憎んでいる圭は彼女が嫌がる風鈴をつけて彼女を待つ。
自分の日常を掻き乱す彼女が傷付けばいいと思う圭が持つのは、彼自身を浸蝕しそうな程ぐにゃりと歪んだ感情。
玲の弱さと圭の脆さ。
二人が脆弱を纏うと、風鈴が揺れて。
風鈴の音が遠く耳を衝くような胸のざわめきが、読み終えた後にどっと押し寄せてきました。
一言では言い表せない深さを持った魅力ある作品です。
素敵な作品をありがとうございました。 - 藤崎りく
濃く、深い。
淡々としているようでいて、その内に秘められた激しいほどに強い圭の想い。
コンプレックスゆえか激しくきつい性格をした玲の弱さと脆さ。
短いページの中でこんなにも表現できるものなのだと脱帽しました。
圭の心の内は決して綺麗なものではないけれど、だからこそその愛の深さが重く響いて。
その後の二人にありがちなハッピーエンドは想像できないけど、こじれた糸がほどけるようにまっすぐに繋がる時がきてほしいと願わずにいられませんでした。 - 繭結理央
女優と演出家
風鈴の音って風流を押しつけるから嫌いだ……とは、読み手であるわたしの個人的な嗜好。しかしながら、鳴ったなら鳴ったで季節を想起してしまうのだから、わたしにとっては実に厄介なアイテム。
つまり、小道具はひとつだけあればいいのだろう。たったのひとつで、如何様にでも人の感情をコントロールできるのだろう。思い通りに演出できるのだろう。
惹かれているからこその演出だし、季節に左右される機会だが、圭のやり口は遠回りで、エグい。風鈴を飄々とぶら下げ、玲に嫌わせつつ、虎視眈々と想起の準備を狙うのだから。それこそ、美しい花にはすでに棘があるんだから、痛んでやっと五分五分だとでもいわんばかりに(強気に)好機を活かす。
高飛車な女優を自分好みのステージへ誘導する、圭とは、巧みな舞台演出家。
中には玲に同情する読者がおられるのかも知れない。だが、圭の“エグさ”も含めた上での観劇でなければ、もしや、ふたりの永い永い物語は結実を迎えられないのかも知れない。ならば、影の演出家たる著者の演出に、我々にはもはや、観客然と座っているしか術はなかろうか。 - めぐり飛空
愛が深いほど…
秋の夜長にしっとりと読ませてくれる純文学。
短い話の中に確立された世界が作り上げられていました。
読み進めるほどに深くなっていく憎しみ。
でもそれは深ければ、深いほど…。
精神的にも文学的にも大人な感じが漂うこの作品。
個人的には凄く好きです。
素敵なお話をありがとうございました。 - 慧
…びっくりしました!
短いのにすごく内容が濃く、ドキドキしました。
主人公の圭の心の声は
毒々しくて憎しみに
あふれているけど
それが最後のオチにつながり
構成がうまいので
流れがとてもスムーズで
読みやすかったです!
圭にも怜にも
救いのない物語は
きっとこのまま続いていくのかな、と切なく思いました。
素晴らしい作品、ありがとうございました。