「これで私達、夫婦だね」
たどたどしい日本語で話すレイラ。
レイラはハワイ人だ。
今日、日本の役所に婚姻届を出した。
レイラは日本に来て半年。日本語は上手くない。
「死ぬまで一緒にいような」
レイラは死ぬまでこの言葉を忘れないと誓った。
結婚した相手の名は信吾。
幸せな家庭を築いていこうと決めた。
結婚した頃は幸せだった。レイラは日本に馴染もうと必死だった。
信吾の母に気に入られようと日本の料理も勉強した。
しかし、信吾の母は「外国人」に偏見を持っていた。
沢山の嫌がらせをした。
「こんな不味い料理食べられたものたものじゃない!!」
ハワイ人の舌と日本人の舌は違うのだった。
それでもレイラは日本の料理を作れるように努力をした。
しかし、義母はレイラを受け入れようとしなかった。
そんなある日、レイラが煙草を吸っているところを義母が見た。
「煙草なんて吸って!!だから外国の女は何を考えているかわからない!!」
ハワイでは女が煙草を吸うのは不思議ではなかった。
しかし、レイラが吸っていたのは普通の煙草ではなく、マリファナだった。
ハワイではマリファナは普通だった。
レイラは日本でマリファナを吸ってはいけないことを知らなかった。
ハワイアンカフェの店長から買っていた。
信吾もレイラが吸っていたのは煙草だと思っていた。
ある日、ガサ入れが入った。
その日もいつものようにマリファナを吸っていたところを現行犯で捕まった。
「何!?私、何も悪い事していない!!」
この時までレイラはマリファナが違法だと知らなかった。
レイラは広島に護送された。
信吾は広島まで面会に行った。
「レイラ、大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
「いつごろ出てこれるか?」
「わからない…」
「出てきても一緒だからな」
「うん」
レイラは10年の刑期を終え、東京に帰ってきた。
「お世話になりました」
「もう、同じ過ちはおかしたらだめですよ」
「はい」
「ただいま…」
家に帰っても誰も迎えは来なかった。
奥の部屋に行ってみる。
やせ細った信吾が布団の上に横たわっていた。
信吾は死に際に言った。
「死ぬまで一緒だからな」
そういい残し息を引き取った。