「あと1年で大学も卒業かー」
「ゆい、就職どうする?就活してるでしょ?」
「ううん。今、バイトしてるところで働くつもり」
大学4年になるゆいはキャバクラで働いている。
ゆいがキャバクラで働いている事は誰も知らない。
「ゆい、今日もバイト?」
「うん。何で?」
「最近、うちら遊んでないからなーと思って」
「マキだって就活してるじゃん」
「そうだけどさー。たまには男と遊ぼうよ?男友達さそっとくからさ?」
「あたしはいいよ。バイトのほうが楽しいし」
「そういうもんー?」
親友のマキの誘いを断り、バイト先へ向かった。
ゆいがキャバクラを始めたのは半年前。
新宿、歌舞伎町のパリジェンヌでお茶をしていた。
ゆいはバリスタになりたく、いろいろなところで珈琲を飲んでいた。
そこでスカウトにあった。
「君、今、何処で働いてるの?」
スカウトの男が黒っぽい名刺を出し、声をかけてきた。
「今はカフェで働いている大学生です」
「君、かわいいからキャバクラとかで働いてみない?」
男の名は沢木。
「カフェより稼げるよ?これから僕の知り合いの店で面接してみない?」
今まで何度かキャバクラや風俗の仕事のスカウトにあっていた。
だがしかし、今までは全て断ってきた。
しかし、バリスタになるには金がかかる。その日、面接に行く事にした。
沢木が店に電話を入れ、面接の予定を立ててくれた。
沢木が面接を入れてくれた今日の店は3件。
「今日の面接はカレン、ルナ、マリアだよ。聞いた事ある?」
「あたし、歌舞伎町、今日が初めてだからないよ」
「じゃあ、まず、カレンから行こうね」
カレンは3階建てのビルの最上階。高級キャバクラだった。
1階にフリージア、2階にレインボー、3階にカレン。
沢木がカレンを選んだ理由はオーナー、「恋花」のお薦めだったからだ。
8時にカレンに入った。
まだ8時だというのに、大盛況の店だった。
白を貴重としたVIPルームも満卓だった。
中央のメインルームで面接をした。p-ナーの恋花が面接をしてくれた。
「ゆいちゃんはキャバクラは初めて?」
「はい」
「緊張しないくてもいいんだよ。何か飲んでいってね」
店の雰囲気を知るためにドリンクを1杯頂いた。
「ゆいちゃんの良い返事を待ってるね!」
恋花が気持ちよく見送ってくれた。
「次に行くのはルナだよ。スナックみたいな店だから」
ー気楽にいけーという意味だろう。1件目で緊張したからだ。
ルナは本当にスナックのような店だった。
安っぽい感じの店で、先に面接したカレンとは正反対だった。
客の入りも3割程度。活気づいていない。
この店でもドリンクを頂いた。
キャストが焼酎の水割りを作ってくれた。
しかし、この水割りが驚異的に濃かった。
「ゆいちゃん、是非一緒に働きましょう!!」
店長の岩瀬が言ってきた。
「最後に行くのはマリアだよ」
沢木についていった。
「マリアのNo、1は18歳の桜ちゃんっていって若いからこそ頑張れる店だよ!」
9時にマリアに入った。
ダークブラウンで間接照明の薄暗い店だった。
桜という若い少女が忙しそうに店内を小走りしている。
若干18歳の少女がNo、1になれる店だったら私でも・・・と思った。
マリアの店長、村田が店の説明をしてくれた。
「うちの店のNo、1はあの桜ちゃん!!入店して半年でNo、1になったんだよ!!まだ18歳なのにすごい子だよ!!」
なんだか比較されているみたいで嫌だった。
3店舗の面接を終え、2件で飲んだのでほろ酔いになりマリアの印象は覚えていない。
「じゃあ、また明日、パリジェンヌで会おうね!!」
「はーい」
9時45分の電車に乗り、明日の午後6時にパリジェンヌで会うことを約束して別れた。
ーどこの店が良いんだろう・・・-
うつらうつらしながら帰っていった。
次の日、学校を終え、パリジェンヌに向かった。
5時45分。パリジェンヌに入った。沢木の姿ははい。
スタッフに席に通してもらい、珈琲を頼んだ。
6時丁度、沢木が来た。
「昨日の店、何処が良かった?」
「マリアだけは嫌」
「何で?」
「なんか、店長ムカつくから」
「じゃあ、他の店は?」
「カレンが良かったかな」
1件目の豪華絢爛の店に惹かれた。
「花恋さんも良い人だったし」
「じゃあ、カレンにする?」
「うん!」
「じゃあ、早速、アポとるね!」
そう言って沢木はカレンに電話をして、ゆいの入店の話しをした。
花恋は喜んで受け入れてくれた。
こうしてゆいはカレンで働く事にした。
「あゆみ」という名前で・・・
あゆみがキャバクラを始めて半年たった。
あゆみは今日も学校終わりに出勤。
カレンには20人ほどのキャストがいる。
あゆみは20人いるキャストの中で真ん中くらいの地位に居る。
キャリアは半年。高級キャバクラ