ちょっとづつ主人公の素性が知れてくる章なのだが、大して個人的なことはわからず、普遍的な根無し草であるということしかわからない。そうして再び町の様子がクローズアップされて来るが、やっぱり退屈な街でしかないことを思い知らされる。
ところで、私の中では「俺」のイメージは大谷翔平選手である、何となく。体格がいいという描写があるし。ひたすら空を見上げ、見上げ続け、走りこんで素振りをし、なすすべもなくなったところで寝転んで空を見上げる大谷翔平さん。何となく、詩的ではないか(そうでもないか)。
今日からは、書いていて気になった文に赤線を引きながら映しているのだが、結構この辺りはユニークな表現が多くて、ちょっと最初のかしこまった作風とは違う感じがしてくる。作者がノリにノッて、若しくは苦心して書いた跡が伺われる。何となく、変調を感じるのである。多分、楽しんでいる方のような気がする。読んでいて、最初よりしっくりくるから。
この作品では最後の方までセリフがあまりない。セリフではなくて、説明で読ませてくる。しかも、その中に登場人物の感情の動きはほとんど存在しない。何とも言えない不思議な作品である。