「3つの夜」から選ぶ秋の短編小説企画 結果発表および作品集
黄昏、真夜中、夜明けーー。
「3つの夜」から選ぶ秋の短編小説企画に、たくさんのご応募ありがとうございました。
以下のとおり、優秀賞と佳作に選出された作品を発表いたします。
またページ後半には、編集部が気になった作品を、作品集としてピックアップさせていただきました。
ますます夜が深まったこの晩秋に、受賞作と作品集をどうぞお楽しみください。
優秀賞
黄昏たそがれ
真夜中まよなか
優秀賞
「浮気せんといてな」
Call me.
結羽里
●編集部コメント
LINEの誤爆をきっかけに、眠れない夜に通話するようになった高校生二人の恋のはじまりを予感させるとても可愛らしい物語。通話を通してお互いの距離が縮まって、お互いに安心感が生まれてくる様子は、ほのぼのと優しい気持ちになりました。ラストになってやっと自身の恋心に気づきはじめる香織と、恋の形となり動き出しそうな予感にキュン!二人の続きがとっても気になる学園ラブでした。
夜明けよあけ
優秀賞
抱きしめて、頭撫でて。『文佳、大丈夫だよ』って言って
夜が明けたらキスをしよう
桃園すず
●編集部コメント
高校時代からの両片想いをこじらせてしまった男女が、とある出来事をきっかけにその関係性が夜明けを迎えたお話。特別にドラマティックな出来事ではないものの、それまでの名前の仕掛けやケチャップライスの件がうまく作用していて、二人の世界をずっと覗き見してきたような感覚になり、ラストはほっこり幸せな気持ちになれました。作品やキャラクター達の輪郭を描く材料の散りばめ方がお上手だと思います。ぜひこの二人のその後も、優しいご飯の描写とあわせて読んでみたいです。
佳作
黄昏佳作
真夜中佳作
夜明け佳作
黄昏たそがれ
薄暗くなった夕方。夕暮れ。
あるいは盛りの時期が過ぎて終わりに近づくこと。
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桐島は、あたしとは全然ちがう生物。
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今日、あの人がこの田舎町へ帰ってくる。
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〝表白の秋〟があったって、いいんじゃない?
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黄昏時、君と私は限りある時間をゆっくり歩いた
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ほんとうに言いたいことは、なにひとつ言えないまま
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とある時しか現れぬ人魚に、忍者は
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ぜんぶなくなったあとのはなし。
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透明な夕焼けに照らされて、異世界転移のゲートが開く。
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今夜は元婚約者と友人のめでたい結婚式なので、盛大に祝ってあげましょう
真夜中まよなか
夜が最も更けた時分。深夜。
それは日暮れからも夜明けからも、最も遠く離れた夜。
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「オマエだけ」鬼の戯言に付き合う午前零時
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君がここにいてくれれば、それでいい。それだけ
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真夜中の水族館に現れる人ならざる少女の正体は
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「たまには、あたしの相談を聞いてもらっちゃくれないかな」
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限られた者しか辿り着けない、紅茶の店があるという。
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姿は見えずとも月はそこにある
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俺様系幼馴染は私の事が好きだったようです
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僕は「明日」が怖い。
夜明けよあけ
夜が明けようとする頃。明け方。
または新しく何かが始まること。
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何万光年なんか待ってあげないんだから
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手軽に、気軽に愛を届けます(客が)
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元彼と同じ香り、だけど違う声。
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“――……貴方の瞳に、私を映して”
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夜明けには、もう会えない君へ。
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君のことが好きだった。君と、君と過ごした全ての時間を愛してた。
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どこまでも淡白な君とは交われない。そんなことずっと前からわかってた。
●編集部コメント
主人公の赤根は入社4年目となり業務負担が増す中、面倒見がよかった先輩との距離もできてしまい燻る日々。唯一の癒やしが、黄昏時に占い師・メーデーさんに愚痴を聞いてもらうことだったが、その正体は意外な人物で……?
赤根の成長ストーリーを主軸に、終盤に盛り上がるキュンのバランスがとても心地よいオフィスラブでした。限られた文字数の中で、読者を飽きさせない展開は素晴らしいです。赤根とメーデーさんの掛け合いはコミカルで小気味よく、全体的にも軽やかで、まさに仕事終わりの癒やしになるような読後感でした。いろんな黄昏が隠れているのも必見です。