『四つ目屋忠兵衛大福帳』

作者招家猫助

現、主の名前は六代目・四つ目屋忠兵衛。150年続く老舗だ!
媚薬、長命丸や帆柱丸。 張形、春画・・・珍品秘伝薬を商う老舗である。 
来店客の多くは夕暮れに身を隠すように店を訪れ、夜間で閉まっているはずの木戸も、事情を知ってか木戸番も見て見ぬふり。お店は昼夜繁盛を見せていた。
顧客には、武家の奥方、…

現、主の名前は六代目・四つ目屋忠兵衛。150年続く老舗だ!

媚薬、長命丸や帆柱丸。 張形、春画・・・珍品秘伝薬を商う老舗である。 

来店客の多くは夕暮れに身を隠すように店を訪れ、夜間で閉まっているはずの木戸も、事情を知ってか木戸番も見て見ぬふり。お店は昼夜繁盛を見せていた。

顧客には、武家の奥方、商家の女中、老若男女・・・特に御贔屓筋は吉原などの遊郭やそこに通う客。 最大顧客は江戸城大奥の御中臈達。 金子に糸目を付けずに『四つ目道具』を買い漁っていた。

荷を担いでは江戸城の中、大奥近くまで上がって直接商売が許されている。 持ち込む荷物を調べられる事も無い。 その信用と秘密を共用する関係から、御女中から頂く御駄賃や諸国の名産菓子など商売以上の旨味があり、幕府閣僚との癒着による顔の広さは他の商売仲間の羨望の的である。

そんな中・・・六代目・忠兵衛が突然隠居を宣言し、商売を放り投げて熱海に隠遁すると宣言する。

幕府直轄の教学機関・昌平坂学問所で教鞭を取っていた忠兵衛の娘・お遥が急遽呼び戻される。

有無を言わさず跡目を継ぐことになったが・・・

お遥には実家の家業に偏見があった。